キーマンインタビュー
【インバウンド×宿泊】京町家の活用で文化を守る
「紡(つむぎ)」ブランドを支える会社のこだわりと展望
株式会社レ・コネクション 代表取締役 奥田 久雄様/運営事業部部長・レベニューマネージャー 佐塚 遼様
訪日外国人に人気のエリア京都に拠点をおき、一棟貸しの宿泊施設の運営管理をはじめとした、不動産活用のコンサルティングから運営まで一貫して行う株式会社レ・コネクション。同社は2020年3月末までに自社で運営管理する宿泊施設を50棟まで拡大することを目標に、月1棟以上のペースで施設をオープンしています。同社の宿泊施設が外国人に選ばれる理由や建物へのこだわりについて、奥田さん、佐塚さんに伺いました。
町家への宿泊で非日常体験を。所有者側からも高まる活用方法。
事業内容を教えてください。
不動産流通業としてマーケティング・企画と建築施工、宿泊施設の運営管理事業を行なっています。物件へのコンサルから始まり、建物へ着手をし、最終的にはその運営へと事業が流れていきます。宿泊施設以外の企画も行いますが、インバウンド需要の加熱や市場ニーズに合う企画として、宿泊施設の企画になるケースが多いです。コンサルから着手と流れる中で8割程度は宿泊施設への転用でした。町家保存・再生という部分について我々を含め、京都市全体でも力を入れて取り組んでいる部分です。
株式会社レ・コネクション様だからこそ提供できる世界観はありますか。
伝統的な京町家の趣を残しつつも、宿泊施設としての機能性、快適性は必要になります。もともとの町家を再現するだけではなく、利用者にとって設備の充実性・機能性は重要なポイントだと認識しています。その中でもせっかく旅行で京都に来られる訳なので、非日常を感じられるワンランク上の空間づくりを意識しています。
多くの要素がありますが、特に照明の使い方は意識しています。照明一つで高級感ある演出ができ、非日常感を生み出すことができます。また、「紡」を選んでいただくために、OTAサイト(*宿泊予約サイト)で募集する際に写真映えするスポットをどこに置くのかという部分を、企画の段階から念入りに検討しています。
アジア圏旅行者の特性と簡易宿舎のマッチング。
宿泊者の属性と、外国人誘致に関する取り組みについて教えてください。
8割以上が外国の方の利用となっています。なかでも中国・マカオ・香港・台湾等の中華圏の方の利用が5割から6割を占めています。他にはアメリカ・フランス・オーストラリア・カナダの方の利用が多い傾向です。5名程度が一カ所に泊まることが可能な一棟貸しの宿泊施設は、家族で来られるアジア圏の方とのマッチングが高くなるケースが多いと感じます。
今後の課題として海外向けの施策を実施していく必要があります。現在海外向けに行なっていることは、中国人スタッフ協力のもと、Weibo・WeChatを使い、施設や観光地の動画を配信しています。中国は特にインターネットを取り巻く環境が日本とは異なるので、どうアプローチしていくのかが課題だと感じています。どのようなコンテンツが好まれるのかについて、スタッフにヒアリングを行ない、試行錯誤しながら今後も取り組みを継続していく予定です。
簡易宿泊所が乱立する中で、「紡」が選ばれるポイントを教えてください。
仕入から運用まで一貫して事業として行なっていることは、所有者にとってもご宿泊いただくゲストにとっても強い点だと考えます。出口を見据えた企画を立てられるので、現場のニーズを取り入れやすいのも大きな強みの一つです。運営のみを行う他の事業者と比べて、顧客ニーズへの対応力が強いと感じています。所有者や顧客のニーズを上手く取り入れながら事業を行なえることが当社の強みです。
他の簡易宿泊所・地域を巻き込み、京都を盛り上げる。
新しく取り組んでいることはありますか。
一つは施設外玄関帳場(宿泊施設外の受付)の設置です。京都市では小規模な宿泊施設を運営するにあたり、施設外玄関帳場が必要となります(京町家は除く)。2020年4月以降に取り締まりが厳格化(宿泊施設への駆けつけ要件が厳格化)されるので、運営を継続できない施設が出てくることが予想されます。実際に拠点から遠い物件は運営を止めたり、京都から撤退する事業者も出てきています。この流れは2020年3月ごろまでにさらに加速していくのではないかと思われます。
この状況の変化に対応し、当社は施設外玄関帳場の運営を行なっていきます。「紡」だけでなく他の宿泊施設の受付場所としての提供も予定しています。また、一部の場所では受付業務のみだけでなく飲食事業の立ち上げを行い、受付のみならず、飲食やワークショップが開催できるスペース等の機能を加えていきます。様々な方に利用いただける施設の併用で、地域の方とのタッチポイントを増やしたいと考えています。ゆくゆくは地域の方に利用いただけるスペースとしても利用し、コミュニティを醸成し、お互いの理解を深めていければと思います。飲食店と施設外玄関帳場を兼ねた施設は2020年3月上旬に三条木屋町にオープン予定です。
インバウンドに対しての目標を教えてください。
施設外玄関帳場を飲食店等のジャンルが異なる事業と掛け合わせ、京都市全域を利用した分散型ホテルとして「紡」というブランドを押し上げていきます。様々な機能と掛け合わせることで、ゲストの方にも幅広いサービスを提供することが可能となります。限定的な話になるかもしれませんが、過疎化の進む地域の地蔵盆などへ、ゲストが参加できるような関係性を地域と構築し、ご宿泊頂くゲストには「紡」ならではの体験を提供できるようになっていくことが理想です。
【編集後記】
日本の中でも簡易宿泊所営業において厳しいとされる京都で、法を遵守しながら市全域をカバーする運営体制を整えた事業者という点で、京都にとって希少且つ貴重な存在だと感じました。京町家を守り、外国人人気の高い京都の文化を守る地域の番人として今後も活躍していただきたいと強く感じました。