飲食業の皆さまに役立つ、
最新トレンド・ニュースを発信するサイト

【スポーツ庁×地方×インバウンド】スポーツで地方の魅力を世界に発信!
官民一体となったスポーツツーリズムの取り組みとは

スポーツ庁は、「スポーツによる地域活性化」に取り組んでいます。18年3月に「スポーツツーリズム需要拡大戦略」を発表し、新規重点テーマとして「アウトドアスポーツツーリズム」と「武道ツーリズム」を設定しました。今回はこの2つのテーマを中心に日本の観光市場のこれからについてスポーツ庁参事官地域振興担当増井参事官にお話を伺いました。


スポーツ庁参事官(地域振興担当) 増井国光様

日本の豊富な自然・伝統×スポーツで地域活性化促進

アウトドアスポーツツーリズムとはどのような取り組みでしょうか?

 アウトドアスポーツツーリズムとは、日本の自然資源とスポーツが融合した観光を楽しむツーリズムスタイルです。恵まれた自然環境と四季は日本の魅力のひとつです。この自然を活かしてトレッキングやマラソン、サイクリング等のアクティビティで、地方のインバウンド需要拡大に大きく寄与している分野です。例えば徳島県三好市では外国人宿泊数が10年で34倍に増加した実績があります。川という資源を使って、世界選手権等のイベントを開催し「ウォータースポーツのまち」として認知を広げています。このような地方部の豊富な自然を活かし地方への観光客誘致をはかっており、各地で盛り上がりを見せています。


写真提供:徳島県三好市

各地で成功例があがっていますが、アウトドアスポーツツーリズムの分野における現在の課題は何ですか?

 スノーリゾートに課題があります。日本ではバブルの頃をピークにスノースポーツは低下気味になっています。一方、近年海外で日本のパウダースノーが注目されていて、オーストラリアやヨーロッパ等から観光客が増加しており、スノースポーツコンテンツを磨いていこうという取り組みが広がっています。しかし、施設が古いことやその他インバウンドの受入体制が追いついてないことが現在の課題となっています。この課題について観光庁・スポーツ庁が主体となってこれから活性化を進めていこうとしています。


写真提供:長野県観光機構

もう一つの重点テーマである武道ツーリズムの広がりは?

 武道ツーリズムはまだまだこれから拡大していきたい分野です。ポテンシャルの高さは理解しているのですが、どのように体験商品にしていくかというところが手探り状態です。スポーツツーリズムに関する海外へのマーケティング調査を行ったところ、武道が日本で観たいスポーツとして最も注目されていることがわかりました。19年9月には官民の各種団体・組織の連携強化を図ることで「武道ツーリズム」の推進を加速させるために、武道ツーリズム研究会を立ち上げました。受入体制やコンテンツ整備、プロモーション等を検討しています。自治体で実験的に地元の外国人の方に体験してもらう等して少しずつ進めている分野です。


写真提供:宮崎県

 その他スポーツツーリズムに関するセミナーを全国4カ所で開催しています。昨年は東京でゴルフと自転車をテーマに2回セミナーを開催しました。自治体職員の方、スポーツツーリズムに興味のある企業にご参加いただき、先進事例やスポーツ庁の取り組みについて共有し、スポーツツーリズムの推進を図りました。

官民一体となったスポーツツーリズム促進への取り組み

自治体等への取り組みはどのようなことをされているのですか?

 地方公共団体、スポーツ団体、民間企業(観光産業、スポーツ産業等)が一体となり地域活性化に取り組む組織である「地域スポーツコミッション」等が行うスポーツ合宿、キャンプ誘致、過期・通年型のスポーツアクティビティ創出等の活動に対し支援しています。またスポーツ文化ツーリズムシンポジウムを開催し、優れた取り組みと今後有望な取り組み発掘のためアワードを行う等、各業界・各地域で一体となって活性化を行っています。

これらの取り組みで実際に地方への訪日外国人は増えていますか?

 全国的には増えています。しかし、まだまだ地域の魅力をどのように広めていくか課題が残っている部分もあります。瀬戸内しまなみ海道で行われている「サイクリングしまなみ」は世界七大サイクリング大会と言われていますが、現在外国人の参加は全体の1割に留まっています。徐々にトレッキングや、川下り等地方の自然を活かしたアクティビティをやっていきたいという自治体の動きは活発になってきているので、来年度からはスポーツコミッションの設立時の支援も行い、より各自治体が地域の魅力を発信できるよう支援していきます。


写真提供:今治市

各自治体と協力して日本のスポーツツーリズムを盛り上げる

今後の展望を教えてください

 訪日外国人はこれからも順調に増えていくと思います。今後予想される訪日外国人6000万人は、世界ではフランスやタイといったトップクラスの観光大国と並ぶことになります。それらの国は都市だけに限らず地方も含めどこにいっても外国人がいる状態です。つまりこれから日本でももっと観光需要が地方へ広がっていくと思っています。スポーツツーリズムにおける地方のポテンシャルは高いです。各地域の強みを活かし、何を観光商品として売り出していくのかが大切で、各自治体と協力して、我々はPRに力を入れて取り組んでいきます。地域と協力して日本全体の活性化につなげていきたいです。

【編集後記】
 今後さらにインバウンド需要は増えると予想されています。各地域の魅力をどのように活かすか、スポーツ庁を中心に各自治体の今後の取り組みに注目です。(INBOUNDPLUS編集部 吉田奈緒)

取材・写真:大島千佳
編集:吉田奈緒

スポーツ庁参事官(地域振興担当) 増井国光様

INBOUND PLUS 編集部

この執筆者の記事一覧