2023年4月1日に労働基準法施行規則の一部が改定され、賃金のデジタル払いが合法化されました。これまでは禁止されていた給与のデジタルマネーでの支払いが認められるようになったことで、新しい賃金支払いの選択肢が広がり、2024年以降はさらに多くの企業や従業員がこの仕組みを利用することが期待されています。
本記事では、賃金のデジタル払いの現状と課題を踏まえながら、今後の展望を紹介します。
賃金デジタル払いとは何か?
給与デジタル払いとは、スマートフォン決済アプリや電子マネーを使用して支払う新しい仕組みです。この方法では企業が指定した資金移動業者を介してデジタルマネーを送金し、従業員がそのデジタルマネーをキャッシュレスで利用したり、場合によっては現金として引き出したりすることが可能です。
給与デジタル払いの利用者が増加している背景には、キャッシュレス決済の普及が挙げられます。経済産業省のデータによると2022年の日本国内のキャッシュレス決済比率は36%を記録し、年々その数値は上昇傾向にあります。特に若い世代を中心にキャッシュレス決済への抵抗感が低く、新しい賃金支払い方法への関心も高まりつつあります。また、企業にとっても従業員の満足度向上や業務効率化が実現できる点がデジタル給与を導入する動機の一つとなっています。
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賃金デジタル払いのメリット
賃金デジタル払いのメリットとして以下の4つが挙げられます。
- 従業員にとっての利便性
- 企業の業務効率化とコスト削減
- キャッシュレス時代における新たな選択肢
- チャージ不要の利便性
賃金のデジタル払いは、従来の現金受け取りや銀行振込のようにATMで現金を引き出す手間や手数料を削減でき、給与を決済アプリで受け取り次第、すぐに利用できるため時間と労力を節約する大きなポイントとなります。また、給与日でも銀行の営業時間を気にせず、24時間いつでも送金や利用が可能な点も多くの従業員にとって利便性の高い仕組みです。
また、賃金のデジタル払いの導入は、銀行振込にかかる手数料が削減できるだけでなく、給与支払いに関連する事務処理を簡素化できるため、務効率化が実現します。さらに、振込にかかるコストが大幅に減少することで、中長期的なコスト削減効果も期待できます。
日本ではキャッシュレス決済の普及率が年々高まっているため、賃金のデジタル払いは従業員がキャッシュレス決済をより円滑に利用できる環境を整えることが可能です。
そして、デジタル給与を導入する最大のメリットであるチャージ不要の利便性は、従業員が給与受け取り後に電子マネーや決済アプリを別途チャージする必要がなく、支給されたデジタルマネーをそのまま利用できため大きな時短につながります。これにより、従業員は資金移動や現金化の作業から解放され、よりシンプルにお金を管理できます。また、企業としてもチャージに関連するコストや管理業務を削減できるため、従業員・企業双方にとってメリットのある仕組みとなります。
賃金デジタル払い導入による課題
賃金のデジタル払いが解禁されることで、データ漏洩や不正アクセスなどのセキュリティリスクが懸念されています。デジタル給与の支払いでは、資金移動業者を介した取引が必要となり、システムへの不正アクセスや個人情報の流出対策が欠かせません。特にスマートフォン決済アプリを利用する場合、利用者の端末でのセキュリティ対策も重要です。
またデジタル払いを導入するには、労働者の同意が必要です。しかし、多くの労働者がデジタル給与に関して知識不足である現状が指摘されており、利用者の中には「銀行振込のほうが安心」と感じる人や、キャッシュレス化に抵抗を持つ人も少なくありません。「利用したくない」と回答した人が40.7%に上るというデータもあり、全ての従業員が簡単に切り替えられるわけではないことが分かります。
さらに、賃金のデジタル払いを導入するには企業の給与システムを改修する必要があります。従来の銀行振込に対応したシステムでは、デジタルマネーへの送金や資金移動業者への対応が困難な場合があり、既存システムに大幅な手直しが必要となることが多いです。
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賃金デジタル払いの今後の展望
日本国内では、2023年4月の労働基準法施行規則の改正によりデジタル給与払いが合法化されましたが、実際の普及率はまだ低く、多くの企業が導入に慎重な姿勢を示しています。現時点で「賃金のデジタル払い」を導入済み、または導入を予定している企業は非常に少なく、9割が「導入予定なし」と回答しています。
一方で、キャッシュレス決済利用の増加傾向や従業員の利便性向上を考慮し、今後ニーズがさらに高まる可能性があります。
デジタル給与が広く普及するためには、利用者の安心感を高めるための法整備が不可欠です。現状、資金移動業者の要件として口座残高の上限を100万円以下とする規定や資金保全基準の範囲が定められていますが、さらなる詳細なガイドラインや規制が求められています。
また、労働者や企業がデジタル給与を理解しやすくするための啓発活動や教育も重要です。社会全体で対応を進めることで、デジタル給与が新しい賃金支払いの選択肢として浸透していくことが期待されています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。