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飲食店がBtoBへ参入!? 平均勤続年数15年を達成するポイントとは

- テンアライド株式会社 -

テンアライド株式会社は1969年に創業し54年目を迎え、従業員数2,355名(2023年3月31日時点)の規模にまで発展した企業です。多くの方に親しまれてきた天狗、テング酒場、神田屋など10業態98店舗を展開しています。外食事業のほかに、小売事業、EC事業も展開し、1986年には業界初の株式公開、1992年に上場を果たしています。

日本の外食産業を代表する同社が事業にどのような想いを抱き、人材へどのような対策を講じているか、同社代表取締役専務マーケティング本部長の飯田 健太様と広報担当の塩川 朋史様へお話を伺いました。

飯田様への取材で同社の取り組みには5つのポイントがありました。
この5つのポイントの詳細はインタビューの模様をご覧いただければと思います。


1. 上場を目指すため、困難を乗り越えて達成した店舗運営の標準化
・上場を達成し信頼と安定を勝ち取るために、店舗ごとの品質格差を改善するべく仕組みやマニュアルを徹底的に強化
・セントラルキッチンを作るなど新しいチャレンジにいくつも着手し、固い決意と行動で臨んだことで1986年に業界初の株式公開、1992年上場を果たした
※このセントラルキッチンが今では小売事業やEC事業といった新規ビジネスへつながっている
2. コロナ中に企業理念を変更し、BtoBビジネスも加えた食の総合事業へと転換
・広く認知されている天狗ブランドを強みとして、自社商品をスーパーマーケットや他の飲食店へ卸すBtoBモデルへ着手
3. 定期的に社長と全店舗の店長が直接話す店長会議
・理念や経営の現状、今後の事業展開などを社長が直接伝えることで誤解なく正確に意思疎通を図る
・先義後利(お客様視点や人への筋・義理を優先し自己利益はその後についてくるという考え方)とモラルを高く持つこと、この2つを社内では大切な考え方として繰り返し発信している。社会人としてのみならず人として高いモラルを持つことでどこに出ても恥ずかしくない人材になろうという想いを社長自身が皆へ伝達
4. 360°評価制度を導入し上司、部下、同僚が評価
・公平性、健全性のために上からの評価だけではなく360°(上司、部下、同僚)の評価制度(半期に1度)
5.店長の上は社長という超フラットな組織体制
・以前あったエリアマネージャー制を廃止し、エンパワーメント制という、店長の上には社長という組織に変更。中間のフィルターをなくし早期の課題発見と迅速な決断を実践


 【創業からの軌跡・困難であったこと】

(飯田様)
創業当時から目指していた上場に向け、店舗ごとの品質格差をなくすための仕組み構築に着手した時期が当社にとって大きなターニングポイントであったと言えます。当時はまだメジャーではなかったセントラルキッチンを作り、安定した商品を供給するモデルを起案するなど様々な新しい仕組みを導入しました。その過程においては多くの苦労がありましたが、真の安定的経営と信頼を勝ち取るため、仕組み作りに邁進した結果、店舗拡大とともに上場を果たすことができました。

最近の困難といえば、コロナ禍に創業1店舗目である池袋西口店のブランド変更を行ったことが思い浮かびます。当社は酒屋の問屋から事業が始まり、居酒屋側の気持ちや課題をもっと理解しようということがきっかけで飲食業に参入しました。その1店舗目が池袋西口にオープンした「酒蔵 天狗」です。1店舗目には並々ならぬ想いがあるもので、何度もリニューアルを重ねながら時代のニーズに合わせたブランド転換を行ってきました。その試行錯誤とチャレンジの歴史の中でコロナを契機に、1からの創業という意味を込めて神田屋に変更しました。天狗という名前を看板から外すという大きな決断によって我々の変革の意思の強さを示しました。現在ではお客様からも大変ご好評いただいており順調な展開となっております。

【ビジョン・事業への想い】

(飯田様)
コロナ禍で外食業界全体が大きな苦労を強いられる中、改めて社員全員で同じベクトルに向かって成長していきたいと思い、企業理念を変更しました。食を通して「驚き」と「感動」を、という理念を掲げ、飲食店だけを経営する企業ではなく食の総合事業へと発展していこうという想いを込めました。これが何を意味するかというと、消費者向けのBtoC事業(飲食店)だけではなく、セントラルキッチンで作った自社メニューをスーパーに卸して自宅でも居酒屋メニューを楽しんでもらったり、他の飲食店に卸すことで競争ではなく共創相手として捉え、収益を新たに作っていくという「事業ドメインの拡大」を意味します。

【社風作りの工夫には何があるか】

 (飯田様)
社長と全店舗の店長が参加して直接話す全国店長会議を定期的に行っています。ここで社長が直接自身の言葉で理念や戦略のことを伝えることで、誤解なく正確に皆へ意思疎通を図ることができます。
また、社員(7名程度)と社長のランチミーティングを順番に行っており、日常の中の小さな悩みやアイデアも拾えるようにしています。 企業理念の中にも書かれている先義後利」という言葉を、商いの心として大切にしている社長自らが語り社内の意識作りを行っています。
それ以外には、店舗ごとのコミュニケーションや成功事例共有のためにエリアごと(約10店舗)に約2週間に1回ほどの頻度で会議をもうけています。現場同士の相談が出来る場として大変有益な場になっています。

【採用を成功させるための工夫にはどのようなことがあるか】

(塩川様)
採用面接は合否のふるいにかけるというようなスタンスではなく、様々な個性や考え方を持った人材をいかに活かし入社後に育てられるか、このような考え方で当社は臨んでいます。そうでなくては人材不足が深刻な飲食業界において課題を解決していくことは難しいのではないでしょうか。会社のためというよりも、まずは働く従業員の幸せや成長のために私たちができることは何かを考え、それを実現できるのは本当に当社なのかを見極めるようにしています。

【社員の定着に向けた工夫】

 (飯田様)
当社の平均勤続年数は15年と居酒屋業界ではトップクラスの年数を誇っています。これは、顧客満足は従業員満足からというポリシーのもと、福利厚生の充実や働き方が多様な選択肢から選べるなど、従業員が安心して仕事に取り組める環境づくりに力を入れてきたことが大きな要因だと考えています。そのほか、評価制度や日々のコミュニケーションといったモチベーション管理にも注力してきました。

評価制度においては、正しい評価を行うことでモチベーションアップに繋げたいとの想いから、360°評価を取り入れています業績などといった成果だけでなく、上司、部下、同僚からも評価を受ける仕組みです。結果に繋がらなくても、そこまでのプロセスや日々の努力がしっかりと反映されます。

コミュニケーションに関しては、特に副店長以下の社員を意識しており、面談を毎月実施しています。日頃の不満や悩みを訊く以外にも本人のキャリアプランや成長意欲を拾い上げ、その後の教育や配置転換の参考にしています。
また、役職が上がったときに負荷がかかりすぎないよう、お店の損益計算の見方やオペレーション、管理職者の心構えなどの研修を行うなど、教育面にも注力しています。

【求職者のみなさまへ伝えたいこと】

 (飯田様)
お客様はもちろんですが“共に働く仲間のために何ができるか”を考え、行動できる人と一緒に働きたいと考えております。これまで培った基盤を活かし、新たなステージへ挑戦していくために必要なのは若い世代のパワーとアイデアです。皆さんの未来に期待しています。

店舗情報:テング酒場渋谷西口桜丘店(代表店舗)東京都渋谷区桜丘町15−15 NKG東京第2ビル 1階

 

写真提供: テンアライド株式会社  /  取材、執筆:佐久間俊一

INBOUND PLUS 編集部

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