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インバウンド客向けの高価格帯メニューや二重価格が話題に。国内外の事例を紹介

日本国内の消費低迷が続くなか好調なインバウンド需要に対し、外国人観光客向けの高価格帯メニューや二重価格などを導入する飲食店が登場し、話題になっています。

本記事では、インバウンド客向けの高価格帯メニューや二重価格について、国内外の事例や導入検討時の注意点などを紹介します。

地元客離れのリスク懸念も。インバウンド客向けの高価格帯メニューとは?

インバウンド客向けの高価格帯メニューは、1杯1万円の海鮮丼や1杯3,000円のラーメンなど、外国人観光客向けに開発されたメニューのこと。

豪華な食材を惜しみなく使った魅力的なメニューとはいえ、日本人には手を出しにくい価格であることから「インバウン丼」などとも呼ばれます。

こうした高価格帯のメニューは、外国人をターゲットに収益を上げたい店側と、日本ならではの食材を使ったおいしい料理を食べたいインバウンド客側とのニーズの合致から生まれたもの。

したがって、付加価値の高い商品を価値に見合った価格設定で提供しているだけなので、決してぼったくりをしているわけではありません。

 

一方、日本人客から「インバウンド客だけを見て価格を上げた」と捉えられれば、地元客離れのリスクが懸念されます。

逆に、あまり価値に差がない安価な商品があれば、インバウンド客もそちらを選択するため、高価格帯メニューを開発した意味がありません。

 

インバウンド客向けの高価格帯メニューを開発するときは、価格に見合った魅力的な付加価値が必須であるといえるでしょう。

 

例えば、2024年2月にオープンした豊洲の千客万来では、1杯数千円〜1万円ほどの海鮮丼が販売されています。

日本人としてはなかなか手を出しにくい価格ですが、円安の影響もあってか、「このクオリティでこの価格はリーズナブル」とインバウンド客からは好評のようです。

 

参考:豊洲 千客万来がオープン!江戸のグルメや景観で日本の文化を体験できるスポットが登場

 

また、福島県喜多方では、1杯3,000円の喜多方ラーメンを販売開始。

近年外国人から人気のラーメンにプレミア感をプラスしたメニューで、主にインバウンド客からの注文を期待しています。

 

こうした動きは飲食店だけでなく観光ツアーなどにも広がっており、今後も新たなメニュー・ツアーの開発・販売が続くと予想されます。

 

参考:インバウンド向けプレミアムコースやプレミアムツアーで高価格帯メニュー開発

 

不公平だと感じさせない仕組みが大切。二重価格とは?

二重価格とは、同じ商品・サービスであっても、客の属性によって価格が違うシステムのことです。

公共交通機関や食べ放題店のシニア料金・子ども料金などが代表的ですが、これをインバウンド客向けにも適用する動きがあります。

 

例えば、渋谷の海鮮食べ放題の店では、「日本人あるいは国内在住の外国人は割引」というシステムでサービスを提供。

結果的に外国人観光客は、日本人よりもいくらか高いコストを払って同じメニューを注文することになります。

 

理由としては、外国人観光客について

・言語対応などで接客コストが発生する

・食べ放題のシステムに慣れておらず、食べ残しなどが多く発生する

という点から、少し割高になると説明しています。

 

このシステムの課題は、身分証やパスポートを確認する手間と、日本人・外国人の混合グループが来店した場合にどうするか、という点。

 

これに対して、実際にこのシステムを導入している渋谷の海鮮食べ放題の店は、掲示している条件こそ「日本人あるいは国内在住の外国人は割引」としているものの、「日本語を話せるか」を判断軸にしているのが実態のようです。

 

なお、地元住民を優遇するシステムは海外にも多くの事例があります。

例えばハワイのダイヤモンドヘッドの入場料金は5ドルですが、ハワイ在住者は無料。

エジプトのギザのピラミッドはエリア入場料として約1,800円が必要ですが、現地の人は200円ほどで入場できます。

 

このように多数の事例があることから、価格差に気をつければ、比較的受け入れてもらいやすいのが二重価格システムのメリットだといえるでしょう。

インバウンド対策は目的に合わせて導入の検討を

本記事では、インバウンド客向けの高価格帯メニューと二重価格について紹介しましたが、これらはインバウンド対策の目的に合わせて適切なものを選択する必要があります。

 

まず、現時点であまりインバウンド集客ができておらず、今後外国人観光客の集客を強化したいという場合は、高付加価値+高価格メニューの開発が有効である可能性があります。

自店の強みとインバウンド客のニーズを分析し、多少価格設定が高くなってでもプレミアムな商品を開発して適切にプロモーションできれば、インバウンド集客に繋がるかもしれません。

 

一方、すでに外国人観光客が多く来店しており、地元客との両立を課題としている場合は、二重価格化を検討してみるとよいでしょう。

特に「外国人観光客が多すぎて困っている」「外国人観光客対策を実施したいが費用が捻出できない」というケースでは、二重価格化が有効かもしれません。

その際、外国人観光客が不公平感を持たないように、価格差は適切に設定する必要があります。

また、価格を上げた分は、インバウンド客の満足度向上のための投資に充てるなどの工夫も必要でしょう。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

INBOUND PLUS 編集部

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