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伝統の味を未来へ。トリゼンダイニング株式会社が贈る、博多の誇りを世界に広げるおもてなし

博多の郷土料理を世界に -トリゼンダイニング株式会社-

こだわり抜いた『味』と『おもてなし』で未来を創造する

福岡に本社があるトリゼンダイニング株式会社は、養鶏から卸、加工、販売までを一手に手掛るトリゼンフーズ株式会社のホールディングスへの移行に伴い、外食事業の新設分社として2019年10月に設立。銘柄鶏「華味鳥(はなみどり)」を使用した複数の飲食店ブランドを展開し、国内外で29店舗を展開(2023年2月現在)、その他に通信販売事業の運営をされています。

日々変化していく社会や飲食業界の中で、企業はどのような取り組みをされているのでしょうか?トリゼンダイニング株式会社管理部、松田部長にお話をうかがいました。

事業領域を絞り込んだことで強化されたお客様視点

―自社ブランドの華味鳥を使用した店舗展開をされています。運営についてこだわりや工夫はされてますか?

(松田部長)独自の飼育方法と徹底した管理の下、元気に育てられた自社養鶏の『華味鳥』は博多の郷土料理の水炊きに欠かせない自慢の鶏肉です。
養鶏からお客様の口に入るまで一貫した品質管理をするというのが一つの大きなこだわりとなっています。そして今までBtoBとBtoCが一緒だった母体から分社してBtoCに事業範囲を絞ったことで、皆がお客様のことに更に集中できるようになりました。商売の基本はお客様にありますから、皆の力を分散させずにお客様へと向かわせることが出来たという意味で事業の分社化には大きな意義がありました。
私達は企業理念で「五方よし」を掲げています。「自社」「お客様」「社会」に加え、「取引先」「従業員」の五方すべての人と、物心両面で豊かさを分かち合う企業になる、というのが我々の企業理念です。

人材不足という社会的課題との向き合い方

―人材不足という社会的課題との向き合い方や事業において困難だと思われることはありますか?

(松田部長)一番はコロナの影響もありますが人手不足が深刻です。水炊きを扱う当社ならではの悩みになりますが、一番忙しい冬に人が足りないのです。お店の接客では着物を着たり、おもてなしの作法があるので教育も必要になってきます。ですからアルバイトの方が気軽に入社できる環境作りによる人員確保とともに、接客品質を向上させていく教育が常に求められます。これが現場の悩みですね。

―人材不足への解決策や、従業員の教育面で工夫されていることはありますか?

(松田部長)教育期間を短く且つ接客のクオリティーを維持したいという点で、動画を取り入れいつでも接客のイメージを身に付けていただけるよう取り組んでいます。今までのようには人が集まりません。女性には着物を着ていただくので派手なネイルや髪色、そして過度なアクセサリーは控えていただかなくてはなりません。だからといってネイルもダメ、茶髪もダメと言っていては採用の入口が狭くなってしまいます。お店側もアルバイト側も身だしなみについて共通の目安はあるものの、そこを我々も固定概念に囚われずに採用の幅を広げていきたいと考えています。
毎年毎年、新卒や若手が入り社員になって良い上下関係が作れる、本質的にそれが大切であり、良好な社風作り、コミュニケーションを強化する方向へと舵を切っていきたいと思っています。

当社は社員の男女比は6:4で女性社員が4割です。役職としては女将が責任ある立場になりますが、女性には結婚や出産という人生の大切な契機もあります。もちろん産休育休後に女将として復帰されるケースもありますが、お店の営業が夜の時間帯になるので中々復職を決断できない方もいらっしゃいます。
そのような時にはご本人の希望を聞いて、違うセクションや、日給制度にして短時間勤務にしたり、特に産後に関しては身体に無理がないように徐々に慣らしていただいたり、復職後も働きやすいように柔軟に対応しています。

問題解決のキーマン 仲居さんとの良好なコミュニケーション

―会社には沢山の従業員の方がいらっしゃいますが、どのようにコミュニケーションを図っておられますか?

(松田部長)長年勤めてくださるアルバイトや仲居さん達は当社にとって、なくてはならない人達です。この人達とは経営陣も含めて定期的に接点を持つようにしています。仲居さん達は現場にいるからこそお客様の目線になってくれますし問題が早く見つかります。経営陣だけではなく当社の会長は昔からよく各店舗を回って従業員に声かけをしています。会長が一番よくお店に顔を出しているのではないでしょうか。
それで思い出すのが、当社には3世代や親子というご縁で働いてくれている人達がいます。それは単純に待遇がいい悪いではなく、あくまでも私の解釈ではありますが安心して働いてくれているんだろうなと。安心は会長や社長の人柄からきているのだと思います。先ほどの仲居さん達への接点の件も、会長がちゃんと声かけろよって、いつも言ってることなんです。そういうところに皆が安心して自分の子供も働かせようってなるのだろうなと思っています。

インバウンド対策にも活躍してくれる外国人従業員に感謝

―コロナがようやく落ち着き始め今後また海外からの観光客も増えてくるとされていますがインバウンド対策は何かされていますか?

(松田部長)各店舗メニューは多国言語でも表記しています。その他にはこれといってまだ本格的に取り組めていないのが現状です。現在アルバイトも入れて従業員は約500人、それとは別に外国人従業員が80人程全国にいます。留学生の彼らは流暢に英語が話せるので、語学力の面、言葉を聞く力においても非常に助けられています。
店内での日本人と外国人の交流については、話せる話せないという会話スキルに関わらず、仕事だから身振り手振り交えて体当たりでお互いのコミュニケーションに臨んでいます。業務中は多忙ですのでそうなっても仕方ないことですが、後でゆっくり話をしたり、いろんな事を試しながらコミュニケーションを取ってくれています。お互いが遠慮し過ぎず、話しやすい雰囲気作りはとても大切にしていますし、皆も協力的だと感じています。

挑戦に対し全力でバックアップの環境を用意する

―トリゼンダイニングさんの強みは何ですか?

(松田部長)挑戦しやすい環境だと思います。個人的にも、会社的にも、事業としてもです。
一つの例として、当社にアルバイトとして入社した方がその後社員になり、店長になって、その店が繁盛店になり、福岡のエリアマネージャーとなり、最終的には飲食事業部全体の部長になりました。その方は去年の春に退職され、当社のFC(フランチャイズ)店をオープンさせました。コロナ真っ只中、そのお店が驚くべきほど流行っています。とても喜ばしいことです。その方は若くもあったしスピード出世でもあったけれど、アルバイトの時からずっと自分の店を持ちたいと言い続けていた方なのです。そのお店がとても流行っているということは一緒に働く仲間達にとって非常にいい目標になると思っています。
自分の店を持ちたいと夢を持つ人に、いかにして店を持ってもらうか、独立してもらうか、もちろん本人の努力は必要ですが、そこへの投資を当社は喜んでします。社長自身も常に挑戦していこうというメッセージはしっかりと出しています。

博多の郷土料理をもっと地元の人に

―『未来につなぐ』という観点で、今後の事業をどのようにして次世代に繋いでいきたいとお考えですか?

(松田部長)博多の郷土料理、食文化として水炊きは美味しいと国内外の人に思っていただけるようなおもてなしをしています。今後はいかにもっと若い世代に水炊きを浸透させていくか、という課題はあります。それはサービスの提供方法なのか、新たな事業開発なのか。ここは今後に繋げていく為にしっかりと思案しています。
そしてコロナ禍で浮き彫りになった事として、来店されるお客様の属性は旅行客や団体客がほとんどでしたので(博多店に限って)、コロナになった途端にパタッと来店が途絶えてしまいました。
そうなってみて初めて自分達の業態は地元の日常使いとするところではまだ弱い業態なのだと感じました。「華味鳥」という業態に頼り切っていた面ではこれから業態開発が必要で、もっと地元の方、そして若い方達にも水炊きを愛していただくため為に、会社として今できることをしていこうと思っています。

店舗情報(代表店):水たき料亭 博多華味鳥 中洲本店  福岡市博多区中洲5-4-24 トリゼンビル1F〜5F

 

【取材後記】
飲食業界全体が抱える人材不足はどの企業にとっても深刻です。個人の事情で働き方が選べるようになった今、企業側にも柔軟な対応が求められています。今回の対話では人材不足という課題に対し、時代に合わせ採用基準や教育制度、復職後も働きやすい環境を整えていく取り組み、その大切さを学ばせていただきました。また自身の意欲次第で自店を持つ夢にチャレンジできる環境があることも従業員にとって心強いのではないでしょうか。

 

写真提供:トリゼンダイニング株式会社 / 取材・執筆:秋山直子

INBOUND PLUS 編集部

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