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【インバウンド×ムスリム】
日本でのムスリムインバウンドのパイオニア、ミヤコ国際ツーリスト

 観光客の多様化にともなって今急増しているムスリムインバウンド。文化や宗教の違いから、本において十分に対応することの難しさも語られますが、ムスリム観光客に特化したツアープランで観光客から高い支持を集めるミヤコ国際ツーリストさんに、その支持の要因やこれからのムスリムインバウンド対応に向けての課題や展望を伺いました。

ムスリム対応のきっかけは1通のメール

最初からムスリムに特化したツアーを行っておられたのでしょうか

 きっかけがありました。2011年の10月に、あるマレーシアの旅行者から、ムスリム専用の団体ツアーに対応できますか、という英語のメールが届いたのです。当時中国の観光客向けには事業を行っていたのですが、ムスリムの専門家もいなかったので、京都大学の大学院生を通じて教授と連絡をとり、ハラールとは何か、などのレクチャーを受けるところから手探りでムスリム対応にむけた挑戦がはじまりました。それがたまたま日本では他社がやっていないら試みだったので、NHKの番組で取り上げられました。それがNHK WORLDでも放映され、世界中から反響がありました。それから、ムスリムに対応したツアーの対応を多く手がけるようになりました。

主にどのようなツアーを行っていますか

 ムスリム観光客向けには、他社と共同で行う1DAYツアーと、自社で作るムスリムフレンドリーツアーがあります。ムスリムフレンドリーつあーは、モデルプランは有りますがほとんどオーダーメイドのプランに対応しています。
 人数は多い頃は300人のツアーもありましたが、今は主に15名から30名程の規模を扱っています。窓口は主にメールで、海外向けのネット広告などはあまり打っていませんが、それでも利用者がいらっしゃいます。売り上げの比率としては、国内の一般観光客向けツアーが全体の8割を占めていて、こうしたムスリムの方向けのツアーは残り20%のうちの90%程度です。

対応の難しさを乗り越えてアピールしたい

ムスリムの旅行者対応で特に難しい点はどこですか

 一番は食事です。昔に比べて、ハラールフードのデリバリーやハラールお弁当のようなものも増えたのですが、長期間のツアーなのでどうしても飽きが来ることがあります。そうしたときのバリエーションがあまり多くはないので、そこをいかに飽きさせないかということを試行錯誤しながら改善するということが一番難しいです。ハラール対応の食事ということで言えば、京都の懐石料理店である美濃吉さんとのプライベートな縁があって、そこからムスリム旅行者向けの対応をお願いしたところ、今では美濃吉さんでムスリムフレンドリーのメニューを普通にオーダーすることもできるようになりました。
 ムスリムの方は数も多く世界中にいらっしゃいますが、日本からのイメージはまだどこか遠くのものという印象があると感じています。もちろん日本に観光に来られる方も多いのですが、大変敬虔な方が多いため、厳格にハラール認証などの対応を取ろうとすると極めて難しいことが多いです。たとえば、アルコールを出している店舗にはハラール認証はおりませんから、生ビールを出しているお店などは無理、その他にもいろいろな条件を重ねていくと、飲食店がなくなってしまうということもあります。そこで、ハラール認証ほどの厳格さはないものの、No Pork No Alcoholといった最低限の基本は満たしており、ムスリムの方にも食べられるものを提供している店舗などが、ムスリムフレンドリーと呼ばれています。私たちが心がけているのは、こうしたこのお店はハラールではないけれどもムスリムフレンドリーですよといった情報をきめ細かく正確に伝えることです。ムスリムフレンドリーでも構わないというお客様や国もあれば、厳格な戒律に基づいてハラールでなければならないという方もいらっしゃいます。そこの伝達を少しでも怠ると、国際問題に発展するケースもありますので、正確な情報開示を心がけています。そうしたムスリム対応の難しさや繊細さから、ほかの旅行会社からツアーの一部の対応が難しい部分を請け負うこともあります。

ムスリムの方に日本をアピールする際に大事なことは何ですか

 やはり積極的なプロモーションはとても大事で、海外のテレビ局で取り上げられるとそれを見てきてくださったという方が多くいらっしゃいます。海外で日本や当社の露出をどれだけ多くできるかということや、日本の中でも関東や関西ではなく地方にも目を向けてもらいたい、観光客に行ってもらいたいという思いを持ってプロモーションしています。たとえばマレーシアの有名タレントの方に日本を旅してもらう番組が現地で大人気ですし、そうしたところで地方の良さをPRしています。

増えるムスリムの観光客、その課題と展望

ムスリムの観光客の伸びはいかがですか

 とても伸びています。去年は若干鈍ったとはいえ12%の伸び率でしたし、その前年は30%程度伸びています。とはいえ多くの人口を抱える東南アジアなどはまだ来られていない方も多いと思いますし、これからも旅行客数は伸びていくと思います。しかし旅行業者としては、私たちの啓発活動もあり、日本のハラールフードの情報に様々なメディアを通じて簡単にアクセスできるようになってきていることや、礼拝所の設置が進んでいることもあって個人で旅行を手配される方が増えているいう印象があります。

これからの課題や展望をおしえてください

 展望は、マレーシアやインドネシアといった日本をアピールしやすい国以外にもどんどんアピールしていきたいと思っています。それから、中東にも力を入れはじめていますので、今後中東からのお客様への対応を強化したいです。課題はお客様の細かい要望にどこまで対応できるのか、ということです。観光客の多様化とともに、ニーズや要望も細かなものになってきているので、たとえばアラビア語が話せる通訳を増やすといったことで出来るだけ多くの要望に対応できる体勢を整えることが今後の目標です。

編集後記
 膨大な人口ボリュームをもつムスリムの方々は、日本とは習慣や価値観が違うことも多く、その対応には独特の難しさがあると感じました。一方で、日本に来て日本を楽しんでいただきたいという根本は、どこの国の人であろうとも持ち続けていきたいと強く思いました。

取材・写真・編集:新國光太郎

INBOUND PLUS 編集部

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