飲食業の皆さまに役立つ、
最新トレンド・ニュースを発信するサイト

【インバウンド×民泊】
健全で安心な民泊サービスを

 今回は、民泊の正しい始め方についての普及啓発活動や、民泊事業者のアドバイスなどを行なっている一般社団法人日本民泊協会を取材しました。民泊を営業する上で守るべきことや、利益を出すための方法も伺いました。

一般社団法人日本民泊協会とは

この協会の設立目的を教えてください

 2013年頃に自身で民泊を営んでいた際に、英語ができなかったのでどんなゲストが来るのか不安になったことがありました。そこで事前にゲストの審査をしたかったのです。その頃民泊という言葉こそなかったものの、B&Bをやっている仲間がいて、ホスト同士で嫌なゲスト情報を共有しようというのが発端でした。ところが生業として民泊を行うのであれば旅館業法における許可が必要だと厚労省が明確にしたことで、しっかりと旅館業営業許可を取得しようということになりました。しかし、無許可で営業するホストの方も多かったので、ゲストのことを審査する前に先ずはホスト側の襟を正し、しっかりと法令を遵守する健全なホストのみの団体を作ろうという思いで設立されたのがこの協会です。

民泊業界をどのように改革していきますか

 設立当時は民泊という言葉が出始め、露骨にお金儲けに走ったり、写真とあまりにも異なる部屋を提供しているホストも現れました。さらに法的な許可が必要だと明確化されたにもかかわらず、無許可で営業するようなホストも多く、法律違反を犯しているのにも関わらず、グレーゾーンだという間違った解釈をするホストが増えました。その中には、近隣住人の方へ迷惑が掛らない様、しっかりと配属し、ホスピタリティーなサービスを提供しているホストの方も多かったということもあり、益々法律違反をしているという認識が薄れていった方が増えた様に感じます。
 当時日本民泊協会では、全国各地でイベントを開催し、正しい民泊の始め方等について啓発活動いたしましたが、賛同者は少なく、逆に許認可を取得することに対して反対派が多かった様に思います。しかし、2018年6月に住宅宿泊事業法が施行され、同時に旅館業法違反の罰則が強化された事により風向きが変わり、無許可民泊は違法だという認識が高まり、当協会の活動に賛同して頂ける方も増えてまいりました。

無許可民泊との差別化をはかる取り組みについて教えてください

 当協会では、しっかりと許認可を取得したホストの方のみを日本民泊協会(JAPA)会員として認定し、JAPAマークを付与することで、全国のどの自治体よりも早く、無許可民泊との差別化を図りました。
 また、当協会がゲストの方や近隣住人の方からの苦苦情等をお受けし、会員の方に注意や指導を行える体制を整える事で、ホストの方のモラルやサービスの向上に繋がり、今後は、業界全体のイメージや社会的地位の向上にも繋がると考えております。

民泊事業者向けのサービス

これから民泊を始めたい方や、すでに始めている方に向けてのサービスはありますか

 空き家問題にも取り組まれているハウスメーカー様をはじめとする企業や団体と共同で、全国各地で民泊セミナーや個別相談会などを開催し、正しい民泊の始め方や、トラブル対処法などの相談などを行っております。相談者には、60歳以上の方も多く、お金儲けというよりは、空き家対策や、老後の新たなライフスタイルとして民泊をお考えの方が多く、相談者は年々増えてきております。
 また、民泊を始めるに当たっては、万が一の事故に備えて損害保険に加入されることをお勧めいたします。当協会では、会員様に保険サービスを提供しており、ご入会頂ければ、登録施設内は同時に保険が適用されますし、補償内容は国内トップクラスですので安心です。(引受会社:三井住友海上火災保険株式会社)

民泊事業者が収益を上げるためのアドバイスなどもしてますか

 はい、例えば大阪では、ホテルも含めた宿泊施設の増加で価格破壊が起きており、民泊事業から撤退される方も少なくありません。収容人数やコンセプトなど、とにかくホテルとの差別化を図るようアドバイスをしています。また、民泊業界も価格競争からサービス競争に移行しておりますので、サービスの充実やクオリティーが重要性をお伝えしています。

地方の民泊への指導もされていますか

 はい、地方の民泊でもアドバイスしております。地方や郊外では、都市部に比べると利益を出すことは難しいと言えるかもしれません。ただ、それよりも運営代行業者や清掃業者を見つけることが困難なため、業務は全てご自身で行う必要があるので、集客や清掃など、専門知識が必要な作業はホテル旅館に比べると劣っているケースも多く見られます。ホテルのように小まめな料金設定や、清掃技術をしっかりと勉強し見習う事が大事であると言う事をお伝えしております。
 また、都市部で営業する民泊に比べて、交通の便が良くないケースが多いので、何かサービスに特徴を持たせたり、お部屋にコンセプトを持たせないと利益を上げることは難しいと言えるかもしれません。しかし、女性専用民泊や、乳幼児が泊まれる民泊、ムスリム対応民泊など、自由にコンセプトやサービスを作り上げる事も可能ですので、その辺りが民泊の魅力でもあり、ホテルと差別化する為のポイントでもあります。
 しかし、忘れてはならないのが、民泊は、ビジネスとして利益を追求するだけのものではなく、外国人との文化交流や新たなライフスタイルとして始められる方が非常に多いと言うことです。その様な方には、いかにトラブルを無くし、安心して運営していただく為のお手伝いをしていきたいと考えております。

民泊の平均的な稼働率、収益はどれくらいでしょうか

 エリアやお部屋の作り込み、設備等によって大きく異なります。今注目されているのは質の良い高級な民泊です。たとえば京都にある一泊30万円の民泊は、コンシェルジュを設置したり、並ばずに観光できるスポットがあるなどのサービスを充実させており、なかなか予約が取れないほど人気の民泊も存在します。そういった民泊は、月に数日でも稼働すれば利益が出ます。また、マンション一棟丸ごとで民泊をされる方も増えていますが、最上階だけVIPルームにするなど、高単価でお部屋を提供する方が増えています。一方で、業務を外部に委託しているのにも関わらず、安い料金で提供されているホストの方は、利益を出すのに苦労されています。清掃業者、リネン業者やサイト掲載料などでほとんどが引かれるためです。民泊をビジネスの観点から申し上げますと、今後はいかに安く提供するかではなく、いかに高く売れるハード作りが出来るかが重要だと考えます。

編集後記
 手軽に安値で泊まれたり、アットホームなサービスが受けられたりすることで数年前から人気の民泊ですが、一方で近隣トラブルやヤミ民泊などのトラブルも多く聞こえてきていました。そうしたトラブルを減らしつつ、民泊業界をもっと盛り上げていこうという活動を取材し、もっと正しく安全な民泊が広がると良いなと感じました。
(INBOUNDPLUS編集部 新國光太郎)

一般社団法人日本民泊協会 事務局長 大植敏生様

INBOUND PLUS 編集部

この執筆者の記事一覧