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徹底した顧客視点でインバウンドの成果につなげる
東武鉄道の細部にこだわったクリエイティブ

 2017年度の東武グループ全体のインバウンド営業収益は、前年比131%増の約105億円。今年度も、さらなるインバウンドへの取組み強化を図っている東武鉄道株式会社 経営企画本部 インバウンド戦略担当の早野様に、日光における同社の取組みと、クリエイティブを最大限に活用したプロモーションについてお話を伺ってきました。

日光エリアにおける東武グループの取組みについて

①日本最古のリゾートホテル「金谷ホテル」との連携(2016年9月30日)
新型特急リバティの導入(2017年4月21日)
③「東武ワールドスクウェア」駅開業 (2017年夏)
④中禅寺湖機船新客船導入 (2017年夏)

⑤東武日光駅ツーリストインフォメーションセンターリニューアルオープン(2017年3月24日)
⑥東武日光駅「手ぶら観光」カウンター(2017年3月24日)
⑦東武日光駅 日光コンシェルジュの設置(2017年11月10日)

●情報発信について:
①東武グループインバウンドサイト「TOBU JAPAN TRIP
②SNS(Facebook、Instagram、Weibo、Wechat)の強化(フォロワー数 合計35万人以上)
③海外レップ等の活用

●欧米豪への取組みについて:
ロンリープラネット日光版制作
②ミシュラン・グリーンガイドへの出稿
③ディスカバー日光キャンペーン実施

東武グループインバウンドサイト「TOBU JAPAN TRIP」
同社が制作した「ロンリープラネット日光版」

徹底した顧客視点から生まれた成果につながるクリエイティブ

 「私がいる経営企画本部は非常にフラットな環境で、インバウンド戦略担当のスタッフも、一人ひとりが広い裁量を与えられ、とにかくとことん顧客視点に立って、細かい部分まで徹底して業務を行う文化があります。」と実際に制作された販促ツールを並べて語る早野氏。

 実際に制作したツールを見て説明を聞いていると、大手企業がここまでするのかというほど、細かい部分までにこだわる同社の姿勢が見えてきた。今回は、その中の幾つかをご紹介します。

東武鉄道株式会社 経営企画本部 インバウンド戦略担当 早野様

ただ多言語化するのではなく、言語ごとのニーズに合わせてクリエイティブを変える

 制作に関して、特にこだわったポイントを聞いてみた。「写真にこだわったレイアウトデザインは意識しています。フォトジェニックな要素を入れ、外国人の興味を促進し、まずは多くの方に手に取ってもらうこと。また、通常は冊子を多言語化する場合、デザインや構成要素は同じで、ただテキストを多言語化するだけのケースが多いと思いますが、当社は、言語ごとにニーズが違うと考え、同じ冊子でも掲載する写真や訴求ポイントを変えて制作するように心掛けています。」と細かい部分まで徹底している同社。

 下の画像は同社が制作している「NIKKO GUIDE MAP」の一部だが、言語によって、掲載している写真が異なる。

 「私のいる部署は、全員がプランナーというスタンスで一つひとつの仕事に臨んでいます。とにかく良いと思ったことはトライして検証し改善する。顧客視点でPDCAを徹底的に回すことで、結果にも大きく繋がり始めています。」とこだわりぬいたクリエイティブが徐々に結果にも繋がり始めたと語る早野氏。同社のインバウンド収益増に貢献することで、上層部の厚い信頼を得て、インバウンド対応もさらにドライブが掛かってきている。

(左上)NIKKO GUIDE MAP ドイツ語 (右上)NIKKO GUIDE MAP 英語
(左下)NIKKO GUIDE MAP フランス語 (右下)NIKKO GUIDE MAP スペイン語

Wi-Fiをインフラとしてだけではなく、プロモーションとしても活用。アクセスポイントごとに表示するコンテンツを変える。

 さらに同社のこだわりはWi-Fiの活用にも表れている。Wi-Fiはどの自治体や企業もインフラ整備という目的のみで導入されていることが多いが、同社が特急列車内、東武線122駅、バスターミナルなどで提供している「TOBU FREE Wi-Fi」は、Wi-Fiルーターのリダイレクト機能(Wi-Fiを繋げたユーザーに強制的にコンテンツを表示できる機能)を活用し、Wi-Fiのアクセスポイントごとに表示するコンテンツを変えている。

「TOBU FREE Wi-Fi」のロゴ

 「Wi-Fiを繋げる場所によって、お客様が見たい情報も、こちらが見せたい情報も違って当然です。アクセスポイントごとに違うURLを設定し、その場所にあった情報を提供できるように、さらにこだわって考えていきたいと思います。」とWi-Fiを活用したプロモーションについて語る。

2020年夏、「ザ・リッツ・カールトン日光」の開業に向けて

 東武鉄道は、マリオット・インターナショナルと「ザ・リッツ・カールトン」を 2020 年夏に開業することで合意し、契約を締結した。「ザ・リッツ・カールトン」は、日本では大阪、東京、沖縄、京都、ニセコ(予定)に次ぐ出店となる。大きな目的としては「日光のリゾート地としての復権」になる。

2020年夏、開業予定の「ザ・リッツ・カールトン日光」

 さらに早野氏は、これからの東武鉄道の外国人旅行客への考え方をこう語る。「当社は鉄道会社ですが、これからはお客様の貴重な時間を頂いていることを強く意識し、競合は鉄道会社だけではなく、スマホさえも競合と捉え、究極の顧客視点に立ち、ただお客様を目的地に運ぶことだけではなく、お客様の大切な時間に最高の体験をご提供することをミッションに、サービス改善に取り組んで参りたいと思います。」

最後に -インバウンドプラス編集部より-

  今回は、主に東武鉄道のクリエイティブに対するこだわりを伺いました。多言語化やWi-Fi整備はどの企業や自治体も導入整備をしていますが、ここまで細かい部分にまで徹底している事例はあまりありません。東武鉄道はこれからも、国内の企業や自治体にとって、ベンチマークしたい企業ですね。

INBOUND PLUS 編集部

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