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【鉄道会社のインバウンド戦略】西武鉄道が仕掛ける
アニメや浮世絵などを活用した視覚的プロモーション

川越市とインバウンド対応において協力体制を築いている西武鉄道株式会社のインバウンド戦略について、鉄道本部 運輸部 スマイル&スマイル室 新規旅客創造担当の栗崎様に、お話を伺ってきました。(前回記事『立地、観光資源に恵まれた「KOEDO川越」の3つのインバウンド戦略 』参照)

今後、通勤・通学のお客様の減少が予想されるなか、定期外のお客様をどう増やすかという課題において、インバウンドは重要なポイント

インバウンド対応を始めた理由、きっかけは?

 今後、沿線の人口が下がっていくことが予想されます。ですので、これからは通勤・通学のお客様だけではなく、ジュニア・シニア層のお客様や訪日外国人のお客様などにもより多く利用してもらう必要があります。そこで、インバウンドもしっかりプロモーションしようということになりました。大きな機運となったのが、2020年東京五輪の開催が決定したことです。

 インバウンドで考えた時に、当社沿線の二大観光地といえば、「秩父」と「川越」。そこで、自治体様と連携して「観光地」のプロモーションを行っています。自治体様には商店街や神社などの町の方との間に入ってもらうなどの調整をしてもらっています。お互いにできることをやりながら補完しあうような関係を築いているところです。

鉄道本部 運輸部 スマイル&スマイル室 新規旅客創造担当の栗崎様

台湾の人気キャラクター「LAIMO」とコラボ。チケットの売れ行きは大幅増。

これまでに行った具体的なインバウンド施策は?

 台湾の人気キャラクター「LAIMO(ライモ)」とのコラボレーション企画を行いました。LAIMOや台湾各地の名物・名所を描いたラッピング電車を運行し、企画券「西武川越パス」を購入いただいたお客様に、川越の観光案内所で関連グッズをプレゼントするキャンペーンを行いました。「西武川越パス」の売れ行きも前年比で大きく伸びました。

台湾の人気キャラクター「LAIMO(ライモ)」を描いたラッピング電車

 その他には、YouTuber(ユーチューバー)に動画で「秩父」「川越」を紹介してもらう試みも行っています。ただ、それだけでは、動画を見て「面白かった」で終わってしまいます。興味を持っていただいたユーザーが「秩父」「川越」と検索した際に、さらに「秩父」「川越」を理解してもらえるように、ブロガーなどのインフルエンサーの方を招聘し、実際に観光をして記事を書いてもらい、Web上のコンテンツを増やす努力も同時に行っています。

 また、沿線に花の綺麗な名所が多いので、花のプロモーションにも力を入れています。春の秩父の芝桜だけではなく、夏の高麗の曼珠沙華などの時期にもたくさんの観光客で賑わっています。面白いのは、清瀬の向日葵で、これまでインバウンド向けに情報発信を全く行ってこなかったのですが、昨年度から外国人の方が多く訪れる傾向があるので調査したところ、電車内の日本人向け中づりポスターを見て、気軽に行ける距離なので訪れたという意見が多くありました。FITも増えてきて、日本にリピートしてくださってる方々が、現地で情報を独自で収集し、これまで注目されていなかった場所に訪れるなどの傾向が現れ始めています。

約2万4千平方メートルもの広大な向日葵畑(清瀬市)

沿線にある制作プロダクションと共同でアニメ制作。
アニメや浮世絵などを活用した視覚的なプロモーション。

その他に面白いインバウンド事例はございますか?

 当社沿線には、アニメの制作会社が多くあります。その沿線にある制作会社と一緒になって、秩父を紹介するアニメを制作し、アニメによるプロモーションも行っています。今年3月にWebで公開した30分のオリジナルアニメ『ちちぶでぶちち』は、アンパンマンやルパン三世の制作を行っている「株式会社トムス・エンタテインメント」様が制作しました。

『ちちぶでぶちち』公式サイト:https://www.seiburailway.jp/railways/buchichi/

 このアニメは、英語、フランス語、中国語(繁体字)などの多言語字幕を作成し、アニメをフックに、「西武鉄道って何?」「秩父ってどこにあるの?」などを理解してもらえるように構成しております。7月フランスで開催された「japanexpo2018」においても、『ちちぶでぶちち』を活用して視覚的にプロモーションを行いました。

 その他には、浮世絵をモチーフにした、車内や駅ホームでのマナー向上を呼びかけることが狙いのポスター「迷惑図絵」が訪日外国人の間で話題になっています。外国人の方にもわかりやすく、興味を持っていただくというコンセプトをもとに、文字で説明しなくても、インパクトのある浮世絵で迷惑をかけている人とかけられている人がわかりやすい構図になっています。季節ごとにシリーズ化していて、現在はシリーズ第7弾まできています。台湾の語学学校が出版している日本語テキストに掲載したいという問合せや、イギリスのヴィクトリア&アルバート博物館にポスターを展示したいという問合せがあるなど、大きな反響が生まれています。

マナーポスター「迷惑図絵」:https://www.seiburailway.jp/fan/manner/

インバウンドを中心とした定期外のお客様を増やしていくには、これまでとは視点を変えた施策が必要。

今後の展開について

 我々鉄道会社は、基本は東京に訪れた方がどうすれば「秩父」や「川越」に行ってもらえるかを考えます。ただ、逆の見方をしてみると、日本の最大の観光地は「東京」です。ですので、沿線に泊まっていただいて、観光地「東京」に行ってもらう。例えば1週間沿線に宿泊された方が毎日観光に行った場合、行きと帰りで合計14回利用することになります。欧米のバックパッカーの方などは1か月くらい滞在される方もいらっしゃいますので、その方たちを沿線利用に引き込むような、視点を変えた施策を打つ必要があります。

 冒頭に述べましたように、今後は沿線の人口が減少していくことが予想されます。定期外のお客様をどう増やすかが大きな課題であり、その中でもインバウンドは、これからの最重要ポイントだと考えています。

INBOUND PLUS 編集部

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