内閣府の発表によると、働く意思はあるが働いていない人・もっと働きたい人の数は約530万人に上り、働き方や価値観の変化がうかがえます。
本記事では、これらの労働人口がなぜ働いていないのかの現状や、人手不足の飲食店に置いてどのようにこれらの労働人口から人材を確保すればよいのかのアイデアについて紹介します。
もっと働きたい人や働きたいが仕事をしていない人口は530万人。環境整備が課題
令和5年10月の内閣府月例経済報告によると、労働力の増加余地として働くことができる人口は約530万人に上るとされています。
この530万人は、以下のような人の数を合計した人口です。
① 仕事時間の増加を希望しており、実際に増やせる人…男性:116万人、女性:149万人
② 仕事を探している人(完全失業状態)…男性:107万人、女性:77万人
③ 働く希望があり実際に働けるが、今は求職活動をしていない人…男性:29万人、女性54万人
①に関して政府は、「年収の壁」対策や副業・兼業等の後押しが重要であると捉えています。
また、②のような人が仕事につけない理由としては、「希望する種類・内容の仕事がない」「技術や技能が条件要項に満たない」「勤務時間・休日・賃金・給料が希望とあわない」などが理由です。
さらに、③のような人が求職活動をしない理由には、「自分にあう仕事がなさそう」「出産・育児・介護・看護のため」などが挙げられています。
②③の人においてはマッチングやリスキリング支援、柔軟な働き方の促進が重要であると捉えられており、これらの働く意思のある人々が力を発揮するための環境整備が課題だと結論付けられています。
参考:https://www5.cao.go.jp/keizai3/getsurei/2023/10kaigi.pdf
飲食業界は回復傾向も、人手不足は依然深刻
高齢化が進む日本において労働人口は減少の一途を辿っており、上記のような「働きたい人口」が活躍できる環境を如何に整備するかは重要な課題です。
特に新型コロナウイルス感染拡大以降の飲食業界の人手不足は深刻で、人材確保は喫緊の課題であるといえるでしょう。
業務のDXのようにITを活用した業務改善は有効な手段ですが、調理や接客が業務の大半を占める飲食店では人手の確保が必要です。
飲食店での人材確保のためのアイデア
ここでは、働く意思のある労働人口を活用して飲食店の人手不足を解消するためのアイデアについて考察してみましょう。
飲食店が人手不足に陥りやすい理由としては、一般的に以下のようなものが挙げられます。
- 賃金が低い
- 労働時間が長く仕事量が多い
- 休みや休憩時間を取りにくい
- 責任感を要求される
まず、「賃金が低い」という意見に対しては、賃金を上げるのが最もシンプルな方法です。
ただし、単純に賃金を上げるだけでは人件費が経営を圧迫することは明らかであるため、確保した人材を有効活用して売上増加を図ったり、DXによって事務作業を自動化して生産性向上を狙ったりするなどの取り組みが必要でしょう。
「労働時間が長く仕事量が多い」という意見に対しては、労働条件の見直しが必要です。
働く意思のある人の中には「働く時間を増やしたい」という人もいれば、「育児・介護で短時間しか働けない」という人もいるため、柔軟な働き方を許容できる環境が整備できれば人材確保に繋がるでしょう。
また、接客から調理まで幅広い業務を担当させるだけではなく、仕込み・調理・片付けなど分業化を促進したり、担当する時間を明確に区切ったりするなどの仕組み作りも有効だと考えられます。
「休みや休憩時間を取りにくい」という点は、シフト作成の精度向上によって改善が見込めるでしょう。
従来の経験則や直感などによるシフト管理では、急な来店集中による業務負荷の増加や、反対に余剰人員が出てしまうなどのリスクがあります。
DXにより来店客数や売上見込みの予測精度を向上させ、それらと連携した精度の高いシフトを作成することで、休日や休憩時間をしっかり確保できるでしょう。
最後に「責任感を要求される」という点については、労働条件や雇用条件の見直しに加え、スタッフの意識改革が必要です。
『大学生アルバイトの本音 求めすぎに要注意』の記事でも触れていますが、学生アルバイトからは「求められすぎている」というネガティブな意見があがっています。
責任の所在を明らかにし、スタッフ全員が働きやすい風土醸成も重要なポイントです。
上記のアイデアは1例ですが、眠っている労働人口を掘り起こすための効果的な施策を実施すれば、深刻な人手不足解消の糸口となるでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。