9月20日日本政府観光局(JNTO)が2023年8月の訪日外客数に関する資料を発表しました。
(https://www.jnto.go.jp/statistics/data/20230920_monthly.pdf) 資料によると8月の訪日外客数の推計値は2019年同月比85.6%の2,156,900人となり、新型コロナが拡大後初めて回復率が8割を超えました。8月の前年対比では1,169%となっており、インバウンドが急激に回復の道を辿っていることが見てとれます。
国別で見てみると韓国、中国、台湾、香港の順に多く、日本の周辺国の訪日数が増加しています。特に韓国、台湾、香港、タイ、アメリカなどは既に2019年数値を上回っております。中国観光客に関しては、8月10日に中国政府が団体旅行の規制解除を発表したことで、最も大きな回復が期待されておりました。しかし7月時点では2019年対比29.8%であったのに対して8月では36.4%となっており他国と比較してまだコロナ前水準には程遠い現状です。規制が解除されてすぐに旅行のプランや手配が完了しなかったという時間的問題と処理水の問題が多少なりとも影響していることが予想されます。
全体としては訪日外客数はいずれ2019年水準まで、そして2019年以上に拡大していくことが予想されるほど上昇傾向にあります。そのため、より多くのインバウンド客を獲得することが重要になってきます。特にインバウンド観光客は日本人顧客に比べて、一回に食事に使うお金も多いことが考えられるため単価も高くなり、売上増加も期待できるでしょう。
本記事ではインバウンド客をより多く獲得するために、「観光客が飲食店に何を求めているのか」について実際の事例を通じて紹介していきます。
まず、1つ目は「日本でしか経験できない食事体験」です。
和食の伝統や文化、空気感、日本特有の食材や調理法などが肌感覚で経験できる場所だと思います。
その例として紹介させていただくのは「京町しずく」
(https://kyomachi.dkdining.com/kyoto/) です。同店ではホームページの写真にあるように、しだれ桜や提灯、壁には花が描かれており、一面に京都を感じることができる内装になっています。また、メニューも旬の食材を活用した創作料理、湯葉、しゃぶしゃぶなど日本文化を堪能することのできるお店となっています。
日本人にとっては普通に感じるようなことでも実は外国人観光客にとっては新しい文化だということもたくさんあります。例えば居酒屋という業態は日本では浸透していますが、欧米の外国人にとって食事はレストラン、お酒はバーで、と食事とお酒が切り離されていることが多いため珍しい業態です。
その他にも以前当メディアでご紹介させていただいた「だし文化」
(http://inboundplus.jp/wp/feature/98525/) や「昔の価値を残したリノベーション」
(http://inboundplus.jp/wp/feature/98080/) など日本文化や日本特有の何かを飲食店と掛け合わせることでよりインバウンド客へ日本ならではの体験を提供することにつながります。
2つ目は「サービス」です。
笑顔やホスピタリティが高い接客やメニューの多言語対応化、料理写真の記載、決済システムの導入、ベジタリアンメニューの導入など、インバウンド観光客が不自由なく料理を楽しめるような仕組みが重要です。
それに加えて、体験型でユニークなサービスがあると観光客も楽しめるのではないでしょうか。
ユニークなサービス例として「寿司と天ぷらとわたくし」
(https://www.instagram.com/p/CQuziVEAm5S/?img_index=1) では来店後に100円のガチャガチャを引き、景品として必ず100円以上の握り寿司やおでん、飲み物などの無料券が当たります。何が出るのかわからないワクワク感が味わえるのと同時に、日本のガチャガチャ文化を学ぶことができる、外国人でも楽しむことができる面白いサービスです。
3つ目は「エンタメ」です。
オリジナルな食材や値段での競争が難しい飲食業界において、エンタメは他店舗との差別化において食事体験の価値を向上させるための大きい要素です。
エンタメの例として紹介させていただくのは「めん馬鹿 Menbaka Fire Ramen Kyoto」
(http://fireramen.com/menbaka/index_jp.html) です。同店は名前の通りファイアーラーメンという独自のパフォーマンスを提供しています。300度まで熱したネギ油をラーメン豪快にかけることで、ラーメンが大きな火柱をあげます。実際に見た方がイメージしやすいと思うので、実際に外国人観光客によって投稿されているファイアーラーメンの動画のURLを載せます。
「ファイアーラーメンの様子」
https://www.tiktok.com/@theroycelee/video/7180545786286017793?q=fire%20ramen&t=1696906148159
とてもインパクトがあり、視覚的にも映えるアトラクションのようなエンタメ要素はSNSなどで発信してもらえることも多く、お店の認知度も上がりそうです。パフォーマンスだけでなく、英語のメモによる注意書きやベジタリアン対応、撮影は熱くて危ないためスタッフが代わりに行ってくれるなど、サービス面でもおもてなし精神を重視しています。また、同店のファイアーラーメンの価格は2000円と一般的なラーメンに比べると高いように思えますが、ファイアーラーメンのパフォーマンスによって付加価値を創出しています。観光客は少し高いお金を払ってでも、限定的な体験を求めていることがうかがえます。
本記事ではインバウンド客を増加させるために求められている要素として、
1.日本でしか経験できない食事体験
2.サービス
3.エンタメ
の三つについて事例を合わせて紹介させていただきました。共通して言えるのはモノ消費ではなくコト消費の視点が重要だということです。せっかく日本に来たのだから多少多くのお金を払ってでも、日本だけの食事、サービス、エンタメを体験してみたいと考える観光客が多いのかもしれません。
今後も日本はインバウンド市場が伸びていくため、いかにしてこのチャンスを自店のメリットとして獲得できるかが重要です。本記事が少しでもインバウンド対策のヒントになれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。