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18年続く「社員に伝わる」社長メッセージ 25段階選べる辛さでアプリ会員8万人 ー桝元ー

— 株式会社 桝元 —

辛さをテーマにしたメニューが特徴的なラーメン店「元祖辛麺屋 桝元」で知られる株式会社 桝元。「元祖辛麺屋 桝元」は、宮崎県延岡市を拠点に「辛いッ!だけど旨いッ!」をコンセプトに、辛麺のチェーン店を国内外に63店舗展開(2023年7月現在)。売上は2022年度40億を達成FC店含む)し、大きな成長を遂げています。
事業への想いや従業員との関わりについて、同社代表取締役の長曽我部 隆幸様にお話を伺いました。

今回の取材で同社の取り組みには5つのポイントがありました。
この5つのポイントの詳細はインタビューの模様をご覧いただければと思います。


1.辛さの追求だけではなく、家族連れや女性にも食べられるようメニュー開発
・呑んだ後の「締めラーメン」からいつでも「リピートしたくなるラーメン」として家族連れや女性客も気軽に食べられるように辛さの追求だけではなくトマトや豆乳を使用したメニュー考案に注力
・注文時、お客様からの細かなニーズに応えるため、25段階という幅の広さで辛さをわかりやすく数字で区分

2.地元の延岡市だけではなく宮崎県民に愛される店になるようブランディングの強化
・宣伝として郷土芸能「ひょっとこ踊り」音源を使用したTVコマーシャル配信
・公式アプリで店舗情報の発信、ポイントによるリピーターへの還元や定期的なクーポン配信で集客アップを実現(アプリ登録者数約8万人)

3.社長から社員へのメッセージを18年間、一日も休まず配信
・定期的な会議や毎朝の朝礼で理念唱和を行う
・お客様に再来店いただくための心掛けや社員へのメッセージを社長が社内メールで毎朝配信。メッセージ配信は18年継続中
・日本を代表するビジネスリーダーである松下幸之助氏や稲盛和夫氏のビジネス書を役員会議で積極的に活用

4.数字を追いかけることを徹底するため毎日の売上を日報での報告を強化
・数字への意識を高める目的として全店舗が売上日報を提出。粗利益や人件費、販促など優秀店舗の数字を毎朝のメッセージとともに配信し全社員に共有
・報奨制度を取入れ優秀店舗は年2回行う全社会議で表彰し、社員の意欲向上につなげる

5.会社説明会では、キャリアアップできる環境やサポートを強調
・会社説明会では飲食事業だけでなく、他事業分野も含めてキャリアアップできる環境やサポートがあることを説明し、信頼につなげる
・部長やマネージャー、店長職への女性登用、新規採用を積極的に推進
・昼勤務と夜勤務の7時間2交代制を行い、残業ゼロや休日出勤ゼロの短時間労働を推奨


「辛麺」の始まりは居酒屋メニューのひとつ

――宮崎ラーメンといえばといえば辛麺とイメージする方も多いと思いますが、どのような経緯で辛麺が誕生したのでしょうか?

(長曽我部代表)
1999年創業の桝元ですが、最初は知人が運営していた会社でした。当時私はナイトクラブを経営していました。現在の「元祖辛麺屋 桝元」を代表する辛麺は知人が経営していた「居酒屋 桝元」のメニューのひとつでした。居酒屋時代、注文されるメニューのほとんどが辛麺だったと聞いています。2005年頃に辛麺に絞ったラーメン業態を始めました。当時は、健康志向が高まりつつあり、繁華街などでよくある「呑んだ後の締めラーメン」からいつでも「リピートしたくなるラーメン」として検討をしました。家族連れや女性客にも気軽に食べていただけるように、辛さの追求だけではなく味付けをマイルドにし、トマトや豆乳を使用したメニュー考案にも注力しました。

伝統芸能のBGMでブランディング強化

――地元地域の方に愛されている「元祖辛麺屋 桝元」ですが、周知してもらうためにどのようなブランディングをされましたか?

(長曽我部代表)
地元である延岡市だけではなく、宮崎県民にも辛麺を食べていただきたいと宣伝に力を入れました。宮崎県を代表する「日向ひょっとこ夏祭り」のなかで開催される郷土芸能「ひょっとこ踊り」音源の使用許可をいただきテレビコマーシャルを放映しました。同時に店内のBGMとしても「ひょっとこ踊り」音源を流しました。昔から聴きなれた音楽の効果が絶大で、宮崎県民の方々はもちろん全国の方々にも周知いただけるきっかけとなりました。

また、現在は公式アプリを使用した情報発信も行っています。ポイントによるリピーターへの還元や定期的なクーポン配信で集客アップにも役立てています。アプリではポイントの管理ができ、店舗からのメッセージも配信できるため、お客様と店舗をしっかりと結びつけてくれます。そして若者のテレビ離れの現状からみても集客効果は大きいと考えます。(公式アプリ登録者数は約8万人)
しかし、アプリをインストールしていただく事が難しい世代や、ポイント消化の際にレジ対応に時間がかかるなど改善点も見受けられるので更なる改善が必要です。

18年間、毎朝欠かさず全社員にメッセージを配信

――HPに記載されている「日々是新」(ヒビ コレ アラタ)は貴社そして、ホールディングスの社是になっています。会社の方針を社内に浸透させる取り組みはされていますか?

(長曽我部代表)
定期的な会議や毎朝の朝礼で理念唱和する取り組みを全店で行なっています。
また、2006年1月1日から毎朝、私は全社員に向けて、お客様に再来店していただけるような心掛けやメッセージをメールで配信しています。全てのメッセージの文末に「日々是新たな気持ちを忘れずに、一人ひとりのお客様への感謝の気持ちを決して忘れずに、全てのお客様に『またきたい』と思っていただける営業を全店の全スタッフにてしっかり行って欲しいと思います。」という言葉で締めくくっています。

朝のメッセージ配信はこの18年間、一度も休んだことはありません。おそらく、社員からはしつこいと感じられていることでしょうが、繰り返し配信することで、理念の共感や浸透につなげたいと思っています。月初めのメールでは、昨年の売上を大幅に超えた店舗や、店舗目標を達成した店舗の発表や会議報告も行います。
よく人から18年も続けていることに驚かれますが、私としては何も特別な事ではなく、お客様のこと、従業員のこと、取引でお世話になっている人への想いがたくさんあるのでそれを毎日コツコツ投函しているだけです。それが18年経つと当たり前と思われなくなるだけなのかもしれません。ここまできたらやめられないという想いもありますが、伝えていくことは今後も続けたいと思います。

社是の言葉は、経営の神様と称される松下幸之助氏の著書「道をひらく」に出てきます。日本を代表するビジネスリーダーである松下幸之助氏や稲盛和夫氏のビジネス書は、事業運営において非常に多くの学びが得られます。役員会議でも活用し、メンバー同士で読み合わせを行っています。

数字を追う意識を高める

――従業員のモチベーションや定着率を高める取り組みや制度はありますか?

(長曽我部代表)
モチベーション向上のため、全社員に数字に敏感な意識を持ってもらう取り組みを行っています。毎日各店舗から日報を提出してもらい、粗利益や人件費、販促などのデータを報告してもらっています。これらのデータは私がチェックし、毎朝のメールで全店舗の情報を共有しています。これにより社員の数字への意識が日々高まっています。
また、この取り組みに対して報奨制度を導入し、目標達成した店舗に対しては賞賛のメッセージを発信しています。さらに、年に2回実施する全社ミーティングでは成績優秀な店舗を表彰し、表彰状と報奨金を授与しています。これらの取り組みや制度が社員のモチベーション向上に寄与していることを期待しています。

働く女性を応援し、採用枠を増やす

―― 会社の採用アップに向け、何か工夫されていることはありますか?

(長曽我部代表)
当社は飲食事業だけでなく、店舗開発やアプリ開発、エネルギー事業などさまざまな分野で多彩なポジションが用意されています。自分が配属された場所でずっと同じポジションでいる必要はありません。新しいことに挑戦することで自己成長の機会が広がります。
採用時の会社説明会では、自分が成長できるポジションへキャリアアップできる環境やサポートの強化についても求職者にお伝えしています。
さらに働く女性を応援し、積極的に女性の採用を進めています。現在は部長職1名、マネージャー職1名、店長職4名など女性が活躍しています。日々お客様やスタッフ、仕事に対して女性特有の細やかな気配りに感謝しています。
嬉しいエピソードとして、高校生の時にアルバイトで入ってくれた地元同級生の女性4人組が22年経った今も活躍してくれていることです。産休後もまた戻ってくれて、頑張る姿を見ることは励みにもなります。

働く環境として、当社は昼勤務と夜勤務の2交代制を行なっています。それぞれが7時間の勤務時間になるので、他の飲食店よりも労働時間が短いのも特徴的です。また、残業をしないことや休日出勤をしないよう推奨しています。このような労働環境も従業員の定着につながっていると考えます。

求職者の方へ

――どのような人材を求められていますか?また、求職者の方に伝えたいことはありますか?

(長曽我部代表)
このような人材に入社してほしいという気持ちよりも、この会社で働いていて良かったと思っていただける社長であり続けたいと思っています。会社に愛着を持っていただくためには、会社のことをよく知っていただくことが重要です。当社は毎年入社式後すぐに3週間ほど新入社員の合宿を行なっています。理念や業務研修だけではなく、寝食を共にすることで仲間を思いやる心やチームワークの重要性を学んでいただいています。その他、全店舗を訪れることで当社を深く理解していただいています。これらの経験を通じて、自身が目指す道に向かって仲間同士が助け合い、会社と共に前進していくことを期待しています。

店舗情報:辛麺屋 桝元 住吉店(代表店舗)宮崎県宮崎市島之内 字境田6347-1

 

写真提供:株式会社 桝元  /  取材、執筆:秋山直子

INBOUND PLUS 編集部

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