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コロナ前の離職率は5%! ビジョンへの共感がES(従業員満足度)に直結-ワンダーテーブル-

- 株式会社ワンダーテーブル-

株式会社ワンダーテーブルは、アジアを中心に8つのエリアで約130店舗のレストランを展開しています。同社は世界最高峰の熟成肉ステーキ店「ピーター・ルーガー・ステーキハウス」やブラジルのシュラスコ料理専門店「バルバッコア」といった海外の優れたブランドと提携し、高い専門性と品質を追求したブランド戦略を展開しています。これにより、国内では約120億円の実績を上げ企業の成長を遂げています。

また過去に、農林水産省主催の「第17回優良外食産業表彰事業大臣賞」や2014年度「外食アワード外食事業部門」も受賞しています。
ビジョンや従業員の育成について、代表取締役会長の秋元 巳智雄様にお話を伺いました。

今回の取材で同社の取り組みには5つのポイントがありました。
この5つのポイントの詳細はインタビューの模様をご覧いただければと思います。


1. ビジョンを「豊かな食卓を広げ、大切な人との絆を深めてもらう。」と掲げの3つの視点で構成し、社内で共感、定着を図る
・ビジョンを「目的」、「未来イメージ」、「価値観」で構成し、社内に浸透させるためビジョンカードの配布やビジョン勉強会、トップランチ、ウィークリーメッセージを配信

2.従業員のモチベーションを高めるワンダーテーブルフォーラムの開催
・全店舗から優れた店舗を選出し、最優秀店舗を表彰するフォーラムを開催
・サーバー(接客係)のスキル向上やサービス技術のレベルアップを目指し、サービスコンクールでベストサーバーを選出

3.コロナ前の離職率は5%!採用アップにビジョンに共感するアルバイトスタッフを社員登用  
・ビジョンに共感するアルバイトスタッフに就職相談の場を設け、積極的に社員に登用
・社内外を問わずリファラル制度を導入、紹介者と採用者の両者に報奨金を支給

4.  研修プログラム「ワンダーテーブルカレッジ」と店舗力向上を図る「ホップステップジャンププログラム」を実施
・「ワンダーテーブルカレッジ」では独自のガイドブックに基づき、階層や役職に応じた適切な内容の研修を提供
・店舗力を引き上げることを目的とし、段階を踏んで店舗の成長を図る「ホップステップジャンププログラム」の実施

5.ホスピタリティの種を持っている人材を重視
・求める人材としてホスピタリティの種(心からのおもてなしを行うために必要な心構え)
を「感謝」「親切」「好奇心」「飲食が好き」という要素に分け、これらの頭文字を組み合わせた「かしこい人」という言葉で表現


ビジョン経営、社内への浸透

――ビジョンにはどのような「想い」が込められていますか?

(秋元会長)
当社は元々海運業として設立されましたが、1994年に飲食部門を立ち上げ、2000年に現在のワンダーテーブルという社名に変更しました。この時から、当社は理念を重視し、MVV(ミッション・ビジョン・バリューズ)を掲げました。現在はビジョンに進化し、私たちの目指す「なりたい姿」を示しています。現在のビジョンは、「豊かな食卓を広げ、大切な人との絆を深めてもらう。」と掲げ「目的」、「未来イメージ」、「価値観」で構成しています。
「目的」とは、世界中の様々なシーンで豊かな食卓を広げ、より多くのお客様が大切な人との絆を深めてもらうことで、Well-Being(幸福)な社会づくりに貢献することです。

「未来イメージ」では、社員が自分の夢に向かって挑戦できる会社であり、また、アッパーミドル層の心を掴む魅力を持った会社を目指しています。また、「価値観」では、何が正しいかを最優先に考えて判断し、当事者意識を持って決断すること、そして目的を達成するためには常に創造し続けて向上していくことを重視しています。さらに、自分とは異なった意見も相手の立場になって受け止めること、プライベートはもちろん、仕事でも常に楽しむ気持ちを忘れないことで高い志や自分の夢を持ち、自身の成長につなげます。

ビジョンを社内に浸透させるための取り組みは、ビジョンを明記した名刺サイズのカードを作成し、海外のスタッフを含む約3000人に配布しています。これを勤務中に携帯していただいています。また、ディスカッション形式の「ビジョン勉強会」を年に4回実施し、ビジョンを深く理解する機会を提供しています。さらに、私が加わる「トップランチ」があります。これは役職毎に10人単位で様々な意見交換やビジョン共有の場として合計30回ほど開催しています。

更に、当社では社内のアプリケーションツールを活用し、週に一度、経営幹部からビジョンに関するテーマを選び、ウィークリーメッセージとして配信しています。このメッセージには、テーマに関連した情報も含まれています。例えば、テーマが「創造し磨き続ける」であれば「ある店舗のメインメニューが改良されてさらに美味しくなっている」という様な内容です。このメッセージは会議や店舗の朝礼などでも取り上げられ、従業員たちがディスカッションを行います。私たちはこれを「ビジョントーク」と呼び、議論する機会を積極的に増やしています。これらの取り組みにより社内全体でビジョンを理解し、共感できる環境を作っています。

ワンダーテーブルフォーラムの取り組み

――社風づくりや従業員のモチベーションを高める工夫、取り組みはありますか?

(秋元会長)
ワンダーテーブルでは、2つのフォーラムが存在しています。一つは全店舗から優れた店舗を5店舗選出し、各店舗がプレゼンテーションを行い、最も優れた店舗を表彰するフォーラムです。そのフォーラムの中では、サービス(接客)のコンクールがあり、サーバーのスキル向上やサービス技術のレベルアップを目指し、ベストサーバーを選出します。また、料理人のモチベーション向上のために料理選手権も行っています。
さらに、正社員向けにフォーラムを定期的に開催しており、業績の報告や振り返り、今期の目標発表などを行っています。また、このフォーラムは優秀な社員を賞賛する場として大規模な会場を借りて開催しています。
人事評価を基に「ベスト支配人賞」や「ベスト本社社員賞」などの様々な表彰を年に一度行ってます。

――人手不足の観点から採用を成功させるために工夫されていることはありますか?

(秋元会長)
他社とは異なる特徴をアピールすることが大事だと考えています。我々はユニークなブランド戦略で世界的な視野を持ち成長している企業であり、当社のビジョンに共感し、入社を希望する人材を採用しています。また、社内ではビジョンに共感するアルバイトスタッフに対して就職相談の場を設け、積極的に社員に登用してきました。特筆すべき特徴は、多くのスタッフが会社を愛する気持ちを持っていることです。このような経緯から、コロナ前の離職率は5%~8%に抑えられていました。

また、新規出店における人材不足に対処するため、社内外を問わずリファラル制度を導入しています。紹介者に10万円、採用者には5万円の報奨金を支給しています。これにより人材獲得の活性化を図っています。

教育、評価制度について

――従業員の育成や評価ではどのようなことを行っていますか?

(秋元会長)
育成に関しても、当社ではさまざまな取り組みを行っています。まず、人事部が主催する「ワンダーテーブルカレッジ(ワンカレ)」という研修プログラムがあります。このプログラムは、当社独自のガイドブックに基づいて実施され、階層や役職に応じた適切な内容の研修を提供しています。ワンカレは主に座学ですが、机上の勉強に留まらず、生産者やワイナリーの見学なども行い、実践的な学びを得る機会も提供しています。コロナ禍以降は密集を避ける配慮をし、デジタルトランスフォーメーション(DX)も進めました。SOP(Standard Operating Procedures=標準作業手順書)を導入し、確実な業務遂行を実現するためにアプリケーションを活用したオペレーションを行っています。SOPもは約500ものコンテンツがあり、効率的に業務の進め方を学ぶことができます。これにより、誰が担当しても一貫した業務遂行が可能となっています。
次に店舗力向上のために、「ホップ・ステップ・ジャンプ プログラム」を実施しています。このプログラムは、店舗全体の力を引き上げることを目的としていますまず、「ホップ」の段階では組織の基盤構築を重視し、基本的な体制を整えます。次に、「ステップ」では、運営力(オペレーション)の強化に取り組みます。これにより、店舗の運営を効率化し、品質向上を図ります。そして、これらの段階がしっかりと定着した後、「ジャンプ」の段階に進みます。この段階は攻撃力(販促力)を向上させます。段階をしっかり踏んで店舗を成長させることにより、多くのお客様からのリピートや売上の大幅な増加を実現しています。

評価については年に2回、上半期と下半期に実施しています。評価項目には詳細な基準が設定されており、これに基づいて個人のパフォーマンスが評価されます。上司や管理者が評価を行い、面談で個人に対してフィードバックをおこないます。具体的には点数によるランク分けされており、会社の求める行動特性への適合度が基本給へ、また、業績や目標達成度が賞与へ反映されます。

求人者の方へ

――どのような人材を求められていますか?また、求職者に何を伝えたいですか?

(秋元会長)
「ホスピタリティ」を重要なキーワードとして位置付けていますスキルや技術、経験は入社後に学ぶことができますので、ホスピタリティの種(心からのおもてなしを行うために必要な心構え)を持っている人材の選考を重視しています。当社ではホスピタリティの種を「感謝」「親切」「好奇心」「飲食が好き」という要素に分け、これらの頭文字を組み合わせた「かしこい人」という言葉で表現しています。ホスピタリティの種を持ち、当社で輝くことができる人材が入社してくれることを楽しみにしています。

店舗情報:ピーター・ルーガー・ステーキハウス 東京(代表店舗) 東京都渋谷区恵比寿4-19-19

 

 写真提供: 株式会社ワンダーテーブル  /  取材、執筆:秋山直子

INBOUND PLUS 編集部

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