回転すしチェーン大手である、スシロー、くら寿司、かっぱ寿司の直近7カ月の業績数値を比較してみました。
客数、客単価、売上高の順番に見ていきたいと思います。
まずは客単価です。次のグラフをご覧ください。
スシローはSNSの迷惑動画拡散の影響などで苦戦中なのではないかと予想される人も多いかと思います。事実前年同月比でみると3社の中では最も回復率は低くなっています。客数の回復率については2022年11月~2023年5月までの範囲の中ではかっぱ寿司が最も回復しているという数値になっています。全ての月で前年同月を上回っています。もちろん前年や一昨年の落ち込みが激しければ今年の回復率は良い数字に表れやすくなることでしょう。しかし、同じ日本の市場環境下における同業種の比較ですからひとつの目安となるのも事実です。外食産業のみならず小売業をはじめとした各産業も客数減は共通の課題です。人口減少している日本においては客数減少は避けては通れない側面もありますが、客数が伸びている企業がある以上、企業の事業のあり方が成否を握っているとも見てとれます。
1社ずつの最近の対策について見てみましょう。スシローは2022年10月に値上げをしました。1984年の創業以来初の値上げで、店舗の立地によって価格を変動させたのも大きな特徴でした。
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郊外型店舗は、黄皿を110年から120円へ、赤皿を165円から180円、黒皿330円を360円へ値上げしました。準都市型店舗は黄皿が130円、赤皿190円、黒皿370円。都市型は黄皿が150円、赤皿210円、黒皿390円で販売しています。最大で60円の価格差がある立地別価格施策へ舵を切っています。そして5月31日より360円の黒皿を260円に変更しました。黄皿の商品を拡充し黒皿の価格を値下げしたのです。この施策が客数にどう好影響を及ぼせるか、今後注目が集まるところです。
各社の値上げについて、2022年は値上げ派と維持派で大きく分かれました。
スシロー:10月から値上げ
くら寿司:10月から110円皿を115円へ値上げ、220円皿を165円へ値下げ
かっぱ寿司:値上げはせず110円皿の商品を30種類追加し84品へ低価格商品を拡充
このグラフは客単価の前年同月比推移です。3社とも客単価は上昇の傾向にありますが、特にくら寿司の回復が顕著です。
一概に価格だけが全ての業績要因とは言えませんが、価格維持派のかっぱ寿司が客数回復、値上げ・値下げのバランス型のくら寿司が客単価が上昇、値上げのみのスシローが苦戦という様相です。
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既存店の売上高については次のグラフにあるように、かっぱ寿司が最も回復傾向にあり、次いでくら寿司、スシローという順になっています。
直近7カ月の客数・客単価・売上高については前述した通りですが、だからといってこの3つの指標で経営状況が述べられるわけではありません。次のグラフは3社の営業利益高(単位:百万円)の推移です。
スシローが潤沢な営業利益を出しており、他の2社は赤字の推移を辿っています。
様々な品目が値上げされている中、価格を据え置いたかっぱ寿司が支持されているように見てとれますが、そのニーズに対応するだけではなく、原価や物流、広告費、本社経費など総合的な対策の結果が営業利益となって表れます。
都市型店舗と郊外型店舗における分析や利用属性、購買商品の組み合わせ分析など、分析についても以前以上に細分化したものが求められます。これはプラスに捉えれば自社のノウハウを向上させる良いきっかけでもあります。インバウンド対応がどれだけ整備され、集客策も講じることができているかも数字に大きく影響する要素のひとつです。
市場が大きな変化をしている今だからこそ、自社の実力をつけるチャンスと捉えて新たな対策や業務の高度化にチャレンジすることが求められているのではないでしょうか。