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【インバウンド×旅行会社】
老舗旅行会社、日本旅行の取り組み

今回は、1905年創業で100年以上の歴史を誇る総合旅行会社であり、1961年よりインバウンド誘致とその満足度向上に取り組む日本旅行様にお話を伺いました。意外と海外では日本が知られていないという現状や、東京オリンピック後を見据えたインバウンドや観光のビジョンについてお話しいただきました。

日本旅行の事業とミッション

訪日旅行営業部のミッションを教えてください

 当社では前回1964年の東京オリンピックから、訪日旅行を中心に国際交流の取り扱いを本格的に開始しました。そこから現在に至るまでインバウンドに取り組んできた当営業部では、海外の旅行会社から直接送客を受けるBtoBのインバウンドを中心に取り扱っています。旅行の内容はガイドが案内する観光ツアーから、インセンティブ、訪日修学旅行や個人旅行まで幅広く扱っています。

ここ5〜10年FITが急増していますが、やはり団体ではなく個人に注力していくのですか

 団体は引き続き事業の柱として注力していきますが、一方増加している個人旅行は、お客様のニーズが多様化しており手配が非常に難しく、利益を生み出しづらい分野です。一例ですが、お客様が数名の少人数でも、数十・数百名様の規模であっても、私たちは人数に関わらず、同じ思いや時間を要し旅行の企画・手配を行います。個人旅行の取り扱いは大きくなり、内容は多様化していく一方ですので、対応にあたる業務フローの改善余地はまだあると考えます。日本旅行では、当社が持つ宿泊在庫を、インターネットを通じて海外の旅行会社が利用いただけるシステムを提供しています。この分野には15年以上前から取り組んでおり、当社のスタッフが予約端末を操作するのと同じ感覚で海外の旅行会社が旅行を手配できます。またOTAにも宿泊在庫を流通させています。そうした取り組みを通じ、個人旅行における売り上げは増加しており、今後も引き続きオンライン化に注力していきます。

事業者向けのサービスは何か行っていますか

 訪日旅行者を対象とした着地型ツアーや交通・食事・体験等の旅行商材を販売するシステム「Miyabi!」をリリースしています。サプライヤー様が自ら、提供したい旅行商材(オプショナルツアー等)を自由に登録でき、さらに在庫管理も可能です。このシステムを活用することにより、世界中の旅行会社やOTA、約1500社を通じた旅行商材の販売が可能になります。このプラットフォームを活かし、海外向けに日本の旅行商材を広く発信・周知できるよう、本システムの営業活動を行なっています。

オリンピック後を見据えて

訪日旅行営業部として今年1番力を入れていることはなんですか

 ここ5〜10年、インバウンドがかつてないほど盛り上がっています。ただし、2020年東京オリンピックは「通過点」です。日本は世界で人気の旅行先に思えますが、海外のメジャーな旅行会社ですら「日本は販売しづらい国」という印象を受けます。オリンピックでは、日本に興味がない人たちも日本の風景を見ることになるので、これでようやく日本がメジャーな旅行先になっていくと思います。オリンピック後の落ち込みが心配されていますが、これからが「本番」だと思っていますし、オリンピックは、あくまで「通過点」として、「先を見据える一年」にしたいです。
 2008年リーマンショック、2011年東日本大震災を受け、インバウンドに対する機運が下火になりかけていたところ、2013年に東京オリンピック開催都市決定を受け、インバウンド市場は再び上昇に転じていきました。そこは大きな潮目となりました。

一度下がった潮目がもう一度盛り上がった要因はなんだと思われますか

 欧米から見ると日本は遠く、一生に一度行けば良い国といわれてきました。またかつては日本だけを目的にしたツアーが少ない時代でした。今では日本単独を目的地とした観光客が増えたこと、中国をはじめとする近隣アジア諸国の経済力が向上したこと、ビザの発給要件の緩和などが盛り上がりにプラスに働きました。そこから、日本に興味を持っていただき「リピーター」が確実に増えていることも大きな要因でしょう。

今後の課題と展望

日本のインバウンドの大きな窓口として、日本旅行が感じている課題はどういったものがありますか

 日本がメジャーな旅行先になりつつある一方、まだまだ日本のことを全く分かっていない海外の旅行会社が沢山あります。我々が馴染みのない地域の旅行プランを簡単には思いつかないように、海外からみると日本もそうなのではないでしょうか。世界中のお客様に対し、海外の旅行会社がより日本を紹介・販売しやすくするために、先ほどの訪日旅行者向け旅行商材WEB販売システムや、日本の観光産業全般の課題、例えば言語対応の問題をともに解決できるようなサイトなど訪日用システムの拡充も図っていきます。

編集後記:
オリンピックを契機にますます盛り上がると予想される訪日旅行。その最前線で日本にお客様を迎える日本旅行様にある、オリンピックを「通過点」と考えるビジョンに触れ、2020年以降も当然続いていく「旅行」を通じ触れ合う日本での体験を更に満足度の高いものにするという強い意志を感じました。
(INBOUNDPLUS編集部 新國光太郎)

取材・写真:世良田一輝
編集:新國光太郎

緒方葉子氏

株式会社日本旅行 執行役員 グローバルソリューション営業本部 訪日旅行営業部長

INBOUND PLUS 編集部

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