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【京都ホテルオークラ】
インバウンド最前線、京都の宿泊業界で勝ち残る秘訣

 みなさん京都でホテルの建設ラッシュが起きているのはご存じでしょうか。国として訪日外国人数4000万人を目指す中で、観光都市京都ではこれから一層増えるであろう訪日外国人の集客に向け宿泊施設の建設が進んでいます。そんな激化するホテル・旅館等の宿泊業界では差別化がより重要になってきています。今回は、京都ホテルオークラの鎌田さんに現在の京都で“勝ち残るための施策”を教えていただきました。

ブランド価値を高めて差別化

訪日外国人が増加傾向にありますが、集客で意識されていることはありますか

 一番は幅広い国から当ホテルにお越しいただけるようにセールスマーケティングを行うことです。インバウンド市場となると国内の事情だけではなく、社会情勢など様々な要因によって市場は目まぐるしく変化します。そういった点で偏った集客は危険ですので、1つの国に絞った集客をするのではなく、幅広い国からお越しいただけるよう意識しています。2000年始めから17年あたりまでは台湾からのお客さまが多かったのですが、最近は特に欧米豪からもお越しいただけるよう力を入れて取り組んでいます。当ホテルでの受け入れ体制も、幅広い国のお客さまに対応できるよう取り組んでいます。

 他には海外現地とのコネクションも大事にしています。国際旅行博覧会へ京都市で出展するほか、海外エージェントとやりとりを密にし、現地の方々に当ホテルの魅力を知ってもらえるようにしています。それぞれの地域で市場の特徴が違うので魅せ方や方法を変えPRしています。

京都では特にホテル旅館の建設ラッシュが続いていますが、他のホテルとの差別化としてはどのようなことに取り組まれていますか

 国内の他の地域との差別化として、ホテル単体でできることは限られているので、京都市と協力して集客に取り組んでいます。例えば先ほどもお話した、国際旅行博覧会へ京都、関西の出展者として出展するなどがあげられます。

 他のホテルとの差別化としては、価格競争にでないことです。京都は、現在知られているように、ホテルの建設ラッシュが進んでいますが、それに合わせて価格を下げてしまうとホテルのブランド自体も下がってしまいます。そうすると、そこから改めてブランド価値を高めるのは大変困難です。そのため、価格競争ではなくサービス等でブランド価値を高める方向性をとっています。

訪日外国人の集客をしつつ、国内の利用者も維持

訪日外国人が増え国内の旅行者数への影響はありますか

 あります。やはり訪日外国人の観光地への過集中が“オーバーツーリズム”としてメディアに取り上げられたことで風評被害が起きています。京都全体で過密状態というわけではないのですが、京都はどこも混んでいるというイメージが広がってしまい、国内のお客さまは減少傾向にあります。また、高齢化の影響もでています。訪日外国人が増えているとはいえ、
国内客は8割を占めていますので影響は大きいといえます。国内のお客様を維持しながら訪日外国人客の集客をするのは簡単ではなく、そこがこれからの課題でもあります。

訪日外国人のリピーターをつくるのは国内よりもさらに難しいと思いますが、どのような取り組みをされているのですか

その通り国内のお客さまと比較すると難しいことは確かです。リピーターも少なくはありませんが、より安定して継続的に利用してもらうためのひとつとして、海外エージェントにアピールし、団体旅行の宿泊先に選んでもらうことに取り組んでいます。当ホテルへは団体旅行の宿泊先として安定してご利用いただき、海外旅行代理店はツアー客に満足してもらい、次の集客に繋がるという好循環を生み出すよう仕組みづくりをしています。

目標はホテル自体の国際化

訪日外国人が増加傾向にある中で、受け入れ体制に変化はありますか

 ひとつは英語教育に力を入れています。ただ母語しか話せない方の利用や英語圏以外のお客さまが増加してきたことから対策はより複雑になってきています。そのため、ホテル自体を国際色豊かにしたいと考えています。幅広いバックグラウンドの方を従業員として迎え入れることで、幅広い国・地域からのお客さまに対応し、それが徐々に広がっていくような循環をつくっていきたいです。現在でも実はさまざまなバックグラウンドの方に働いていただいているのですが、文化の違いから職場になじめないという方も少なくないのが実情です。この現状も踏まえ、今後は今以上にさまざまな方が働きやすい環境づくりに配慮していきたいと考えています。

大イベントに向け日々の取り組みを積み重ねる

20年のオリンピックパラリンピックをはじめとし、今後日本は大きなイベントを控えていますが、何か力を入れて取り組まれていることはありますか

 大きなイベントに関しての予約は、その1年半から2年前には予約が埋まるので、そういった意味では現時点で今年のオリンピックパラリンピックに向けてできることは限られています。今年できることとしては、今から予約してくださるお客さまをきちんと迎え入れ、おもてなしをすることだと思います。

 今後、大阪万博やワールドマスターズゲーム他、何か大きなイベントの開催が決定した際に、多くの方に当ホテルを選んでいただけるよう日頃からこつこつと取り組んでいきたいです。そして、一過性のものではなく、継続的に利用していただくためにもブランドの維持を徹底していく考えです。

【編集後記】
 京都のホテル業界の現状や訪日外国人の集客からリピートにつなげるための取り組み等今回は特に一歩踏み込んだお話が聞けました。ホテル単体でできることは限られていからこそ、他の関係者を巻き込んで行動を起こすことが鍵になってくることがわかるお話でした。また、ホテル館内や働いている方々が本当に素敵な印象でした。京都在住ですが一度は泊まってみたいホテルのひとつです。

INBOUND PLUS 編集部

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