外国人観光客が大阪で訪れたいスポットに必ず挙げられる海遊館。今回は、その人気の秘密と新たな課題に関して、海遊館の法木様にお話を伺いました。
訪日観光客の顧客満足度を重視
海遊館が外国人観光客に認知をされたきっかけはなんですか?
現場力の向上と、それに伴う高い顧客満足度です。おもてなしという意味をこめて29言語のパンフレットと、スタッフの接客の質を向上させました。接客の質を具体的に申しますと、挨拶や声かけに加えて、あえて日本語で「こんにちは」「ようこそ」と言うようにトレーニングをしております。29言語のパンフレットを取り揃えた狙いとしては、海遊館についてより深く理解していただくための環境づくりです。
このように現場でのおもてなしのレベルを上げ、お客様にご満足いただいたことで、「海遊館に行ってよかった」という口コミが拡散、認知。その高い満足度が新たな外国人観光客の取り込みにつながりました。海遊館に満足されたお客様が、新しいお客様を呼び込む。より良いサイクルに繋がっていると思います。
外国人観光客が最も惹かれる、海遊館の強みは何ですか?
「海遊館だけではない」ということです。周辺エリアにはサンタマリアという帆船型遊覧船や、ショッピングや食事ができる天保山マーケットプレイスや世界最大級の観覧車があります。さらにはワールドワイドなエンターテイメントであるレゴランドも楽しんでいただける為、特に外国人観光客に向けて、「海遊館は、水族館だけではない」というご案内をするように心がけています。
海外の方でそこまで魚が好きな方は、そう多くはいらっしゃいません。アトラクションなどに乗れない小さなお子様を連れて、「どこか遊べるところがないか」と探された時に、海遊館には水族館だけでなく、遊覧船に、観覧車、レゴランド等色々あります。
こうしたインフォメーションによって、「水族館だけではない、海遊館」として認知していただいています。そういったマルチに対応できる施設が海遊館周辺エリアにはあるとご案内しています。
OTAを活用し、世界へ海遊館を発信
今のインバウンドの活況を、海遊館はどう活用されていますか?
インバウンド需要が右肩上がりに増えている理由である、「Webチケット戦略」を活用しています。最近では、各国にはインターネット上で全てが完結する、OTA(オンライン・トラベル・エージェンシー)が海外にはたくさんあります。基本的には世界中どこでも、海遊館のWebチケットを事前決済で買うことができるインフラが整っています。
さらに、旅行前に購入されたWebチケットはお客様のスマートフォン上に表示されるので、海遊館に来られた際に、わざわざ窓口に並んでチケットを購入する必要がありません。つまり、Webチケット戦略によって、海遊館に来られた時の言語や決済のストレスがなくなるのです。こうしたWebチケット戦略を海遊館では活かしています。
現在、海遊館自体のインバウンド施策に関して課題点やお困りの点はございますか?
現状の課題として、キャパシティがあります。多くの外国観光客の方々に来て頂いて嬉しい限りではありますが、海遊館は水族館であるため、一度にたくさん来ていただくと非常に混雑します。つまり、オーバーツーリズムのような状況が起こり得ます。
そこで、我々がこれからやっていこうとしていることは、タイムマネジメントです。午前中から来場者数が増えていき、夕方にかけて少しずつ減っていくというのが一日の基本的な流れです。日本人と外国人観光客、どちらも午前中に来場される方が増えると、海遊館のキャパシティでは対応できなくなってしまいます。そこで今後は人数が減っていく、夕方の時間を有効活用していきたいと考えています。なるべく午前中に来られる方も夕方に来ていただくことで、1日中お客様が快適に海遊館をお楽しみいただくような環境を作っていきたいです。
具体的にはどういったことをされていくのでしょうか?
例えば、夜の海遊館です。夕方から夜の海遊館では、昼間とはまた違った動物たちの顔を見ることができます。さらには、サンタマリア号のサンセットクルーズもあります。サンセットクルーズを楽しんでから、夕方から海遊館に入って、夜になったら観覧車で夜景を見る。このようにできるだけ夕方から夜にかけて、お客様に来ていただけるようなご案内をしていきます。
今後の展望をお聞かせください。
欧米系の外国人観光客の集客に力を入れていきたいです。具体的には、海遊館を知っていただく趣旨の広告でアピールをしていきます。現在、京都や大阪には多くのラグジュアリー系ホテルがあります。そこに必ず置いてある英字新聞に、海遊館の広告を載せていきます。
2020年の東京オリンピックのために日本に来て、ラグジュアリー系ホテルに宿泊するという方々が富裕層であることは予想できます。そうなるとオリンピックに来られた時に、必ずセットで日本観光をされます。そういったラグジュアリー系の欧米の方々に海遊館を知っていただこうという趣旨で英語の記事を載せ、海遊館にお客様が来ていただける流れを作ります。
<編集後記>
今、国内外の観光客に広く知られている海遊館。インバウンドで起きやすい言語や決済のトラブルに「おもてなし」の気持ちを込め、来館時のストレスを無くしていくことは満足度を上げていくためには重要となります。
更には、あらゆる国の言語や通貨でチケットやパンフレットを手に入れることが出来るというのは、旅行者にとって心強い味方です。こうした観光客の目線に立ち、不安を想像するということはインバウンド対策において必要不可欠な考え方であると思いました。(INBOUNDPLUS編集部 長谷川拳太郎)
取材・写真:大島千佳、法木様(写真提供)
編集:長谷川拳太郎