近年、職場での熱中症発生件数が急増し、その深刻さが浮き彫りになっています。こうした状況を受け、厚生労働省は労働安全衛生規則を改正し、一定の条件下で企業に熱中症予防の取り組みを義務付けることになりました。これにより、企業はこれまで以上に積極的かつ具体的な対策を講じる必要に迫られます。
本記事では、今回の改正で義務化された内容と、企業が今すぐ取り組むべき具体的な熱中症対策について解説します。
事業者へ課せられた「3つの義務」と罰則のリスク
今回の法改正により、事業者には以下の3つの対策が新たに義務付けられました。
1.「早期発見のための体制整備」
作業者に熱中症の兆候が見られた際に、誰にどのように報告するかという明確なルールを事前に定めておき、そして緊急連絡先や担当者を明確に配置しておくことが求められます。
2.「重篤化防止のための対応手順」の確立
報告を受けた際の応急対応をマニュアル化し、作業中断の判断基準、身体の冷却方法、そして医療機関への搬送フローなどを具体的に明文化しておくことが重要となります。
3.「関係者への周知と教育」の徹底
上記で定めた体制と手順について、資料を配布するだけでなく、全従業員に対して実践的な教育や訓練を繰り返し実施し、緊急時に適切な行動が取れるよう実用的な理解を促すことが不可欠です。
このように、「見つける」「判断する」「対処する」という一連の仕組みを事前に整備し、それを全労働者に徹底することが、今回の義務化の核心をなしています。
今回の義務化の対象となるのは、「WBGT(暑さ指数)が28度以上、または気温が31度以上となる場所で、『連続1時間以上』または『1日4時間超』の作業を行う全ての事業者」です。これらの義務に違反した場合、労働安全衛生法第119条に基づき、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があるという厳しい罰則が設けられました。
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飲食店が今すぐ着手すべき具体的な対策「4つの要点」
では、飲食店事業者は具体的にどのような対策を講じるべきでしょうか。主に以下の4つの要点から対策を進めることが推奨されます。
1.緊急時対応の仕組み構築と徹底
熱中症の兆候を早期に察知し、迅速に対応できるよう、従業員からの報告ルートや応急処置の手順を明確に定め、マニュアル化を推奨します。従業員全員がその内容を理解し、緊急時には迷わず行動に移せるよう、定期的な訓練やシミュレーションを行うことが不可欠です。
2.厨房内の温熱環境改善
飲食店において熱中症リスクが最も高まるのが厨房です。排気設備の性能向上や定期的な清掃はもちろんのこと、熱源となる調理機器の配置見直しや、可能であれば発熱量の少ない新型機器への切り替えも検討する価値があります。加えて、厨房内の温度上昇を抑制するための積極的な対策を講じることが、従業員の負担軽減に直結します。
3.勤務中の水分・休憩管理の徹底
従業員の健康管理には、適切な水分補給と休憩の確保が欠かせません。作業中はこまめな水分・塩分補給を推奨し、そのための飲料の常備を推奨します。また、連続作業時間を考慮し、涼しい場所での定期的な小休憩を義務付けるなど、休憩計画を具体的に定めることが重要です。
4.従業員の健康状態把握と装備の最適化
従業員一人ひとりの体調管理に対する意識を高めることが重要です。朝礼時の体調チェックや、休憩時にお互いの体調を気遣う声かけの習慣を奨励することを推奨します。また、通気性や吸湿速乾性に優れた素材、冷感機能を持つユニフォームの導入を検討することも有効です。
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法改正を契機に、安全で信頼される職場環境の実現へ
熱中症は、正しい予防知識と迅速な初期対応があれば十分に防ぐことのできる労働災害です。従業員の健康と安全を守ることは、単に法令を遵守するだけでなく、安心できる職場環境を構築し、ひいてはお客様からの信頼を獲得することに直結します。今回の法改正は、単なる義務化として捉えるのではなく、各事業所が自らの店舗環境を改めて見直し、従業員が「安心して働ける店」を目指すための絶好の機会と捉えるべきです。この機会に、職場における熱中症対策をさらに強化し、従業員にとってもお客様にとってもより良い環境を提供できる飲食店を目指していくことが今後、必要不可欠になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。