― 千房ホールディングス株式会社 ―
お好み焼き店「千房」で知られる千房ホールディングス株式会社。関西を中心に全国に66店舗を展開しています。さらに、新業態「ぷれじでんと千房」では、お好み焼をステーキや鉄板焼と融合させ、格調高いブランドとして確立しています。今年50周年を迎える同社は長い歴史と地域での信頼を基盤に、多くのお客様から愛されています。その一方で、10年以上にわたり元受刑者の雇用を実施し、元受刑者の更生や再犯防止に向けた取り組みを行っています。
2018年に創業者から社長のバトンを引き継いだ同社の代表取締役社長 中井 貫二様へ事業の想いや従業員の育成についてお話を伺いました。
今回の取材で同社の取り組みには4つのポイントがありました。
この4つのポイントの詳細はインタビューの模様をご覧いただければと思います。
1.アルバイトや現場社員が組織のトップに位置する逆ピラミッド型の組織体系を採用
・ 社長、役員は、現場で働く従業員をサポートする役割。重要な決定事項も合議制を取り入れ採決
2.「オフサイトミーティング」と「リボーン会議」で社内の意見やアイデアを積極的に収集し、組織の改善や成長に反映
・「オフサイトミーティング」にて、社長と副社長を除いたメンバーで率直な意見の交換をし、組織改善を図る
・「リボーン会議」はコロナ禍で千房が新たな展開を図るために行われた会議で社長と役員が一堂に会し、本音をぶつけ合いながら千房の改革案を探る コロナ禍に約10回開催
・「リボーン会議」を通じ、従業員たちが主体的に行動し、自分事と捉えるマインドセットに成功
3.採用には「職親プロジェクト」による元受刑者の社会復帰支援
・「職親プロジェクト」を遂行
元受刑者の社会復帰と再犯防止を支援する取り組みで年間5〜6人の元受刑者を採用
・パート従業員の中から希望者全員を正社員に登用
時間や地域、店舗に限定した正社員として柔軟に労働環境を整え、就労の機会を提供
4.動画によるノウハウの標準化、階層別研修の体系化、評価業務を効率化するツールの導入
・接客やマナー、業務工程を動画を通じて学習
・新人研修は年に3〜4回実施、階層に応じたフォローアップ研修を適宜開催
店長研修は年に2回の実施
・評価は上半期と下半期の2回、タレントマネジメントシステムツールを使用
従業員は自己評価を行い、その後に面談を通じてフィードバックを行う
社内の意見を積極的に取り入れる組織体系
――現在の逆ピラミッド型の組織体系にはどのような背景があるのでしょうか?
(中井社長)
当社は逆ピラミッド型の組織体系を採用しており、アルバイトや現場社員が組織のトップに位置しています。この組織形態は、我々が店舗の営業によって利益を得ていることに基づいています。役員や私は現場で働く従業員をサポートする役割を果たしています。重要な決定事項においても、トップダウンではなく合議制を取り入れ、社内の意見をしっかりと聞きながら採決を行っています。意見を自由に発言しやすい環境や風土を確立するための取り組みは創業者から継承されており、私も皆の声を大切に受け止めることを心がけています。
――社内の意見は具体的にどのように取り入れられていますか?
(中井社長)
従業員の意見を拾うための取り組みとして「オフサイトミーティング」と「リボーン会議」があります。「オフサイトミーティング」は、私が入社当時に行なったミーティングです。私と役員の意見交換の場であり、社長や副社長を除いたメンバーで率直な意見の交換をしました。ポジティブな声だけでなく、組織の改善のための厳しい意見や新しいアイデアについても話し合うことができました。
また、「リボーン会議」は、コロナ禍で千房が新たな展開を図るために新設された会議です。社長と役員が一堂に会し、本音をぶつけ合いながら千房の改革案を探りました。この会議はコロナ禍に10回ほど行い、逆境を乗り越えるために現場の従業員に大きな裁量を与えることの重要性を再確認しました。これらの取り組みにより、社内の意見やアイデアを積極的に収集し、組織の改善や成長に反映させることができました。
――今後のビジョンをお聞かせください。
(中井社長)
今後、何店舗の出店を目指そうとか、売上を何億円達成したいという目標は明確にしていません。当社ビジョンは、世界一従業員が“幸せだ”と思う会社を創ることです。そのため、必要な店舗数や売上目標は状況によって異なります。
過去3年間のコロナの影響で我々は大きく経営バランスを崩しました。人手不足の中で店舗数を増やすことは、サービス品質の低下につながる可能性があります。我々はコロナを機に従業員のマインドセットを行いました。やらされてる感や、指示待ちだった状況も「リボーン会議」を通じて、従業員たちが主体的に行動し、自分事と捉える意識を持つように大きく変わりました。
採用アップに向けた取り組み
――人手不足の観点から採用を成功させるために工夫されていることはありますか?
(中井社長)
採用では「職親プロジェクト」という取り組みを行っています。これは、元受刑者の社会復帰と再犯防止を支援するための取り組みです。刑務所にあるハローワークから当社へ応募してきた方の中から、年間5〜6人の採用を行っています。この取り組みは、刑期を終えた方々が新たな道を歩み出すための力になることを目指し、創業者である父の代から続けています。
また、コロナ禍において従業員の雇用を守るために、パート従業員から希望する方全員を正社員として登用しました。パート従業員は個々の事情により働ける時間に制限がありますので、時間や地域、店舗に限定した正社員として柔軟に労働環境を整え、就労の機会を提供しています。これにより、従業員の雇用を守るだけでなく採用の増加にもつながるのではないかと考えています。
教育、評価制度について
――従業員の育成や評価ではどのようなことを行っていますか?
(中井社長)
OJTを基本としておりますが、接客やマナー、業務工程などについては動画を通じて従業員にノウハウを標準化し学んでいただいています。新人研修は年に3〜4回実施しており、その他にも社員研修や主任研修など、階層に応じたフォローアップ研修も適宜行っています。店長研修に関しては年に2回実施しています。
評価については上半期と下半期の2回、タレントマネジメントシステムツールを使用した評価を行っています。従業員は自己評価を行い、その後に面談を通じてフィードバックを受けます。これによって、昇給や昇格などの判断が行われます。
求人者の方へ
――どのような人材を求められていますか?また、求職者の方に伝えたいことはありますか?
(中井社長)
飲食業であるため「食べることが好き」か、「人が好き」か。まずこの二つがあるかが大事です。私は、働くことは「全人格格闘技」と捉えています。相手の信頼を得るためには、まず自分自身を開き、自分の人格をさらけ出すことが重要です。この「人格」こそが「人間力」なのです。私たちが求める人材は、高い人間力を持つ人です。
面接の短い時間では、「人間力」を完全に見抜くことはできません。人の本質は、一緒に過ごし、共に働いてみないと分からないからです。しかし、初めて会った時に好感を抱かせ、一緒に働きたいと思わせる人は存在します。経験やスキルがなくても当社で働くイメージがしっかりとできているかが大切だと思います。
店舗情報:千房 千日前本店(代表店舗)/ 大阪府大阪市中央区難波千日前11-27道風ビル1F~2F