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稲盛氏のフィロソフィ経営を実践! 人手不足でも離職率9.3%を維持する経営のポイントとは!?-JBイレブン -

― 株式会社JBイレブン―

愛知・岐阜・三重の、東海地方を中心にラーメン専門店「一刻魁堂」や麻婆豆腐と炒飯の専門店「ロンフーダイニング」などのブランド(直営84店舗、FC5店舗 2023年4月末日時点)を運営し、2006年には上場も果たしている株式会社JBイレブン(代表取締役:新美 司)。自社工場で食材の段階から携わることで品質と価格の安定を実現されています。また、「株式会社グルメ杵屋」や「元気寿司株式会社」と提携することで、多彩な店舗展開とグループ企業としての強みを発揮されています。

同社の子会社「JBシンフォニー株式会社」代表取締役社長:新美 恭様(以下JBS新美社長)に企業の想いや飲食店が抱える問題についてお話を伺いました。

今回の取材で同社の取り組みには5つのポイントがありました。
この5つのポイントの詳細はインタビューの模様をご覧いただければと思います。


1.経営の神様と称される、稲盛和夫氏のフィロソフィ経営を取り入れ真に強い会社作り

・「すばらしい人生をおくるために」「経営のこころ」「京セラでは一人ひとりが経営者」「日々の仕事を進めるにあたって」の四章から構成された「京セラフィロソフィ手帳」。破綻したJALを再建した「JALフィロソフィ」と「アメーバ経営」。これらを実践し経営の神様と称された稲盛和夫氏の経営哲学を取り入れ、真に強い会社を本気で目指している

2.理念を浸透させる為のフィロソフィ大賞、サンクスカード等具体的制度を導入

・フィロソフィを体現した従業員の取り組みを表彰するフィロソフィ大賞制度
・「利他の心」を重視し従業員が相互に助け合い、感謝をすることを促進するサンクスカードの導入(感謝した数、感謝された数に応じて自社店舗の食事券を進呈)
※利他の心:自分の損得勘定ではなく、「人によかれ」と他人のために尽力する心

3.各自の努力や成果を数字に基づき公平に評価し報酬で還元する制度

・フィロソフィに基づいた行動や業績評価を3つの指標を重視し評価
①店舗の損益計算書評価
②人間力 フィロソフィシート、サンクス制度などで数値化
③組織の中で働く力(報連相、チームワーク)

4.担当する客席を明確にし接客力を向上させるレストラン店舗のステーション制

・企業理念にも書かれている、”おいしさと楽しさを創造する”ために、客席の担当区分を明確にすることで、お客様のお食事の進み具合、会話、お食事や飲み物の好みなどに応じて柔軟な対応を可能にするステーション制を導入。この実践には従業員の高い接客意識とスキルが必要とされる。この仕組みを導入し理念の実践に努めている

5.高校生アルバイトの意見から生まれた成功事例もある改善提案制度

・現場で働く全てのスタッフ(アルバイト含む)からの意見や提案を募集し、提案された内容は費用対効果などを考慮した上で、改善提案審査会が審査し、担当部署または子会社が実行
・現場視点と皆の自発性を促進し、「一人ひとりが経営者」意識を醸成


 

一人ひとりの成長と幸せを実現させたい

 -御社は昭和46年に創業されておりますが、創業のきっかけはどのように新美代表(代表取締役社長)から聞かれていますでしょうか?

(JBS新美社長)
JBイレブンは昭和46年に、愛知県知多郡東浦町にある小さな飲食店「サッポロラーメン11番」から始まりました。10年後に「株式会社十一番」を設立し、平成6年に私の父、新美 司が祖父母から経営バトンを受け継いで代表取締役に就任しました。父の就任後、新たな発展を期すという意味を込め「株式会社JBイレブン」と現社名に変更しました。父は様々な困難を乗り越え、多くの方に支えられて平成18年には株式上場を果たしました。
令和3年に創業50周年を迎え、また新たな50年を築き上げるために、企業理念を再度制定しました。一人ひとりの成長と幸せを実現させたい想いから現在の企業理念を「おいしさと楽しさを創造し、笑顔あふれる社会づくりに貢献すると同時に、全社員・パートナーの物心両面の幸せを追求する」としております。

JBイレブングループが何より大切にしている経営の考え方は、京セラと第二電電(現・KDDI)の創業者で、日本航空(JAL)の経営再建にも尽力された稲盛和夫氏の思想に基づき、ハード面とソフト面の両方で経営を実践することです。全社員が持つ「こころの手帳」には、101項目のフィロソフィが記されており、これをもとに実践することで、全員が自分事として日々の業務に取り組めています。

【フィロソフィとは 「人間として何が正しいのか」 「人間は何のために生きるのか」 という根本的な問いに真正面から向かい合い、様々な困難を乗り越える中で生み出された仕事や人生の指針であり、京セラを今日まで発展させた経営哲学です。】―稲盛和夫オフィシャルサイトより抜粋 https://www.kyocera.co.jp/inamori/

重要な要素はスピード・確実性・多様性

-現在の経営方針で特に重視されていることは何でしょうか?

(JBS新美社長)
経営上で重要な要素としてスピードや確実性、そして多様性があると考えています。
現代は常に新しい概念や技術が出てくるため、創業以来のビジネスを見直して捨てるべきもの、やめるべきことを決断することが、スリムな経営にとって非常に重要だと思います。既存のビジネスを見直し、不要な部門や手法を削減する決断も重要です。例えば、不採算店舗の撤退という具体的な決断は、経営をスピードアップし、確実な利益を生み出すために必要な措置です。さらに、多様な経営環境に対応するためには、組織全体で柔軟性を持ち、変革を進めることが求められます。これらの要素を活かし、経営の再建と黒字化を目指す方針です。

-様々な取り組みをされている中で従業員の意見や要望はどのように反映されていますか?

(JBS新美社長)
当社には様々な制度がありますが、中でも改善提案制度があります。この制度では、当社グループで働く全社員・パートナーからの意見や提案を募集しています。提案された内容は、費用対効果などを考慮した上で改善提案審査会が審査し、実現可能であれば担当部署または子会社が実施します。この制度によって、高校生のアルバイトが提案したアイデアが実現され、改善が実現した例もあります。この時のアイデアは「売上減時期において時間帯指定でお子様メニューを頼むとついてくるおもちゃが2個もらえる」という施策を実証し、ファミリー層の来店を促し、売り上げを大幅に増加させたものでした。

品質追求とステーション制度で、更なる付加価値を提供

-御社のホームページに、新美代表取締役のメッセージに「時流を捉え『日本食の中華』にさらなる付加価値を」とあります。この付加価値というのはどういうものなのでしょうか?

(JBS新美社長)
当社の事業はラーメンや炒飯など中華料理をお客様に提供しています。更なる付加価値とは商品・サービスの品質を追求することす。原材料に関しては契約農家さんと直接話し合って品質を決め、できる限り自社工場で製造された製品を店内で丁寧に仕込むことによって、より新鮮で高品質な料理を提供することが挙げられます。また、“ステーション制”という店舗のオペレーションシステムをしており、お客様一人ひとりの状況に合わせた接客を強化していることも付加価値の一つであると思っています。

“ステーション制”とは店舗のフロアサービスにおいて、担当サーバーが担当ステーションに配置され、お客様を担当するシステムです。例えば、入口での出迎えをするサーバーがお客様を出迎え、入口から引き継がれた別の担当サーバーが席まで案内するというように、サーバー間での役割を明確に分担します。このシステム化された動きにより、サーバーは効率的に行動でき、お客様の細かな要望にも迅速に対応することができます。このシステムでお客様にご満足いただける接客を提供しています。

報奨制度の成功で低い離職率を実現

-業界で人材不足が深刻化されていますが御社でも同じ状況を感じられますか?

(JBS新美社長)
現在、人材採用に関しては実はそこまで苦労していません。新型コロナウイルスの影響もあり、かつては離職率が高かった時期がありました。しかし、最近はネパールや中国などの外国人従業員も活躍し、長期間働いてくれる人が増えてきました。現在、当社の離職率は9.3%(※2022年4月〜10月期間実績)です。※宿泊業・飲食サービス業の離職率15.6%(令和3年 厚生労働省)
この低い離職率の背景には、報奨金制度が大きく寄与しています。この制度は、成果を上げた従業員に対して報酬として支払われるもので、全社で賞与や基本給を上げようと賞与制度を拡充していくことに注力しています。従業員が結果を出し、会社に貢献することができる環境を整備することで従業員のモチベーションが高まり、離職率の低下につながっていると考えています。

そのほかに当社は、社員の紹介を通じて入社を勧め、紹介者に一定の報酬を支払う「リファラル」制度を導入して人材確保もしています。また、当社の正社員給与は同業他社に比べてやや高めに設定しているため、労働条件面を見て当社を希望される方もいます。
外国人の採用については、ネットワークが重要であると考えており、外国人同士がコミュニティを形成し、情報を共有することで、当社に関心を持っていただける方が増えています。

-従業員が定着するために注力しておられる点はありますか?

(JBS新美社長)
従業員のモチベーションを上げる制度が大きく分けて二つあります。まず一つは店舗で行う「サンクスカード制度」。名刺サイズのカードを使い従業員が感謝を伝えるもので、コミュニケーションを活性化し、組織を強化することを目的とした制度です。カードには感謝の言葉や具体的な影響を与えたことが書かれており、カードを受け取った従業員は、10枚カードを集めると会社から報酬が与えられます。報酬は自社グループの店舗で使えるお食事券で、10枚で500円分です。この制度を通じて、従業員同士のコミュニケーションが増え、組織の強化にもつながっていると思います。

もう一つは、稲盛和夫氏の教えを基にした「フィロソフィ大賞制度」を設けています。この制度は、人生や経営において大切なことがまとめられた「こころの手帳」内の101項目の中から、社員が実践したことを文書で報告するものです。報告内容が優れている場合、社内の評価委員会によって表彰され、毎月最高賞の「大賞」に選ばれると1万円の賞金が贈られます。年間の最高賞である「年間大賞」に選ばれると、グループ連結の経常利益水準に応じて20〜110万円が贈られます。この制度は、社員のモチベーション向上や離職防止につながる実効性があり、社員たちも積極的に行っています。

-労働環境面ではいかがでしょうか?

(JBS新美社長)
店舗では年間5日間の定休日を設け、全社員には夏休みと冬休みに5日間の連続休暇を取るようにして労働環境改善に取り組んでいますが、現場ではまだまだ休みを取りきれていない現状があります。近年は改善されていますのでしっかりと休んでもらうことを継続して進めていきます。

当社では有給休暇をしっかりと取得できる環境を整えています。上司が休まないという風潮はありません。むしろ上司自身もきちんと休みを取っていることを伝え、社員たちにも休みを取る姿勢を示すよう心がけています。

研修制度と人事評価の取り組みについて

-従業員の育成についてはいかがでしょうか?何か取り組まれている研修や教育制度はありますか?

(JBS新美社長)
当社では、各役職・職位ごとに研修制度が整備されています。入社後には、中途社員研修や新卒社員研修があり、店舗に配属されると店長研修が年間を通して毎月1回行われます。店長研修では、店長に必要なスキルや考え方、数値の解釈方法などを学びます。また、エリアマネージャーを地区長と呼び、その地区長研修も行われます。これは外部の研修を取り入れ、経営視点での財務諸表の分析や自社の分析、自地区の経営者としてのスキルを身につけることを目的としています。部長職以上は、外部の研修に適宜参加することがありますが、必ず受けるべき研修はありません。ただし、ビジネスコンサルタント研修や管理者養成学校など、必要に応じた研修は行われています。

-人事評価はどのようにされていますか?

(JBS新美社長)
人事評価には、三つの視点があります。まずは数字による評価です。前年や前々年に比べてどれだけ成績が上がっているかという上昇率が評価の基準となります。二つ目は人間力に関する評価で、社内の表彰制度を活用して表彰されたり、サンクスカード制度やフィロソフィ大賞制度を使って評価が上がったりすることがあります。最後には、組織の中での働き方に関する評価があります。これは報告連絡相談が適切に行われているかなど、社会人として当たり前のことをきちんとできているかを評価します。これら三つの視点を元に、人事評価を行っています。

多角化戦略で業績拡大を目指すビジネス展開

-「つなぐ」という観点で今後事業をどのように未来につないでいきたいと思われますか?
会社のビジョンを教えてください。

(JBS新美社長)
当社は、新鮮で高品質な料理を提供し、直営レストランビジネスを50年以上続けてきました。そして、ビジネスの変化に対応するために子会社「JBシンフォニー株式会社」を設立しました。当社は自社工場で製造した製品を卸売りしたり、無人餃子販売所の中食事業を展開しています。また、フランチャイズ事業も重要な柱であり、展開を拡大しています。中期経営計画では、JBシンフォニーによる利益が主要な要素となります。自己革新と新たな挑戦を通じて、未来を切り拓いていきます。

店舗情報:一刻魁堂 清須店(代表店舗)愛知県清須市一場御園784-2

 

写真提供: 株式会社JBイレブン  /  取材、執筆:秋山直子

INBOUND PLUS 編集部

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