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「高品質な牛肉をリーズナブルに」 -ペッパーフードサービスが目指す日常に取り入れられるステーキ-

贅沢な味わいを手軽に!
― 株式会社ペッパーフードサービス―
新生する企業 “美味しいステーキ”を多くの人に届けたい

国内外に200店舗以上(2023年4月末時点)展開中の「いきなり!ステーキ」を運営する株式会社ペッパーフードサービス。牛肉に特化した多様なブランド展開で1970年の創業以来、お客様に良質な牛肉商品をリーズナブルな価格で提供しています。
「いきなり!ステーキ」では、“立ち食い”という他社にない営業スタイルを取り入れ顧客回転率を上げ、多くの人が来店できる仕組みを確立しました。また、2018年には1店舗で1日に1,734食のステーキをお客様に提供し「レストランにて24時間で販売されたビーフステーキ最多食数」で世界ギネス記録に認定されています。
ランチやお一人様でも入れるステーキ店を提供することで、特別な日に食べるステーキが日常でも気軽に楽しめるようになりました。

どのようにして現在のビジネスモデルが確立したのでしょうか?
企業の想いや飲食店が抱える課題について、同社代表取締役社長CEO 一瀬 健作様にお話をうかがいました。

創業者から受け継いだお客様への想い

-昨年夏に創業者の一瀬邦夫氏に代わり代表取締役社長に就任されています。企業発展に向けてどのような決意をお持ちですか?

( 一瀬代表)
創業者である一瀬邦夫は私の父です。小さな洋食屋で働く両親の姿を幼少の頃から見てきました。父は会社が大きくなってからも変わらず「美味しい料理をリーズナブルな価格で多くの方に召し上がっていただきたい」と言い、この想いがベースとなり今日までの事業を行ってまいりました。2022年8月、父の突然の辞任で私は代表として就任いたしましたが、それまでは同社管理本部で財務部門に就いておりました。引継ぎの期間がない中、新しく体制を整えなくてはならず、経営の側面や現場の状況、従業員の想いなど現況を把握するところから始めました。

コロナ過中に世代交代したことについて、父も苦心したのではないかと思います。コロナの影響で企業が失速していく状況下で、立て直しを図るための前向きな改革だと捉えております。長年、父の背中を見て感じたことや教わったお客様への想いを今後も守り続けていきたいと思っています。

-経営理念に「お客様の笑顔 お取引先の笑顔 皆が喜ぶ私の仕事 地域社会も 豊かにします」と掲げられています。お客様にどのようにして満足感を提供していると思われますか?

( 一瀬代表)
お客様が数多くある飲食店の中から当店を選んで来店してくださることに感謝をしています。お客様にご納得いただける美味しい料理を提供することや、歓迎の気持ちでおもてなしをすることにご満足いただけていると思っています。

当社は牛肉に特化した事業展開をしています。なかでも「いきなり!ステーキ」というブランドは最盛期で500店舗(FC店含む)全国にございました。本格的なステーキをリーズナブルな価格で提供しており、現在も沢山のお客様に愛されている店舗です。高品質な牛肉をお客様の求めやすい価格帯にするためには、仕入れの厳選やコスト削減など徹底した企業努力が必要です。“ステーキは高級”というイメージで特別な日だけに召しあがるのではなく、日常にも取り入れて、皆様に笑顔でテーブルを囲んでいただきたい。その笑顔が我々の幸せにつながっていくのだと思っています。

-これまでに困難だと思われたことはありますか?

( 一瀬代表)
前社長が築き上げてきた成長の過程で当社は様々な経験をいたしました。2013年に「いきなり!ステーキ」の1号店を銀座に開業したことが起点となり、“高級ステーキを格安な料金で楽しめる店”や“立ち食いステーキ”という斬新なコンセプトでメディアにも多数取り上げていただきました。海外出店も含め驚異的なスピードで全国に拡大したものの、新規出店を急ぎ過ぎてしまい各店舗の品質やサービスに適切な管理が行き届かず、次第に売上が低落していきました。このような状況下で更にコロナウィルスが世界的に流行し、皆の生活が大きく変わりました。

時短営業などで店が開けられない時期が続き先が見通せない中、企業存続を維持するために店舗の規模を縮小したり、大幅な人員削減を行うなど厳しい決断もいたしました。昨年行った社長交代で、私はまず企業全体の現況を把握し、現場で働く従業員達の労働環境を整えることを第一に取り組みました。具体的には人材不足を解消するための採用強化です。

そして従来のトップダウンの組織から、皆の意見を広く取り入れるボトムアップな組織へと大きく組織改革をいたしました。以前は社員がどれだけ良いアイデアを持っていても発言できる環境がありませんでした。この半年間で社員と様々な意見交換や、良くなる未来を想像することで、直ぐに行動するべきことや将来的に挑戦したいことなどを判断することができました。会社の理念を軸に皆で成長し、企業を発展させていきたいと思っています。

現場主体で成長を促す

-飲食業界全体で人手不足という課題がありますがどのようにお考えですか?
また、どのような人と一緒に働きたいと思われますか?

( 一瀬代表)
人手不足については採用の強化を図る中で深刻な問題だと改めて感じました。当社はこれまで、求人を本社主体で一斉に募集をし、採用までを行っていました。しかし現在は面接を含め現場主体で採用を任せています。理由は地域に特化した求人媒体があることや、現場店長に採用を任せることで業務に必要なスキルや能力を正確に把握することができ、より適切な人材の採用が可能になるというメリットがあるからです。そして店長に採用権限を与えることで責任感や自身の自主性を高めていただきたいと考えています。進行中ではありますが現場に任せてからの採用面は順調に進んでいます。

従業員には当社の理念に共感していただける人が望ましいと思っていますが、面接時の採用基準として条件に入れるには厳しい状況です。人を気遣うことができたり主体性を持って行動できる人だといいなと思います。あとは飲食店で働くことやお客様との関わりを楽しめる人に集まって欲しいと思っています。現在は多様な働き方のニーズがありますので、企業としても柔軟な環境を整えていけるよう努めていきたいと思います。

-入社後の教育面で工夫している取り組みはありますか?

( 一瀬代表)
店舗については現場店長がオペレーションを行います。現場を管理する店長は、店長になるために実技と筆記試験を受けていただいています。店長候補を支援する指導者として当社ではスーパーバイザーがいます。彼らが店舗に赴き様々な教育やサポートを行います。スーパーバイザーは全員が現場経験者です。現場社員やアルバイトの気持ちを理解し的確な店舗目標の設定や進捗管理、問題解決などを担当し、店舗全体の成長を促進させる役割も担っています。

店長会や事業ごとのミーティングは定期的に行っており、このような場で進捗状況や課題点等の情報共有をしています。コロナ禍ではzoomを利用して行っていた会議ですが、現場をしっかり見て地域店舗の社員達と直接会うことも大切だと考えておりますので店舗巡回を今後も強化していきたいと思います。

従業員とのコミュニケーションについて、当社は「キャストコンテスト」というアルバイトスタッフに向けた接客コンテストを行っています。店舗スタッフの名前が書いてあるボードにお客様が接客が良いと思う人にシールを貼り、予選会で店舗代表を決めた後に本選へと進んでいきます。本選は東京都内の直営店舗で行います。コンテストに楽しんで参加してもらえるよう、優勝賞品も賞金のほか、遊園地のペアチケットなどを用意してスタッフのモチベーションアップに期待した取り組みも行っております。

インバウンドに期待

-今後コロナが落ち着き、また外国人観光客が増えると言われています。
インバウンドへのお考えや、どのような対策をされているかお聞かせください。

( 一瀬代表)
当店は牛肉をメイン商品として提供していますので、コロナ前から洋食を好む海外のお客様には多数ご来店いただいておりました。コロナが明けた後のインバウンドには非常に期待をしています。料理に関しては海外のお客様からニーズが高かった国産牛や和牛を使用したインバウンド向けのメニューを考案しています。アジア圏からのお客様も多いことからメニュー表記は英語と中国語、韓国語の3カ国語で表記しています。

当社では外国人スタッフを積極的に採用し、店舗でもスタッフが外国人観光客の接客に困ることがないよう努めています。多国語を喋れる外国人スタッフは接客面においても心強い存在です。日本人スタッフには本社から配布しているキャストハンドブック(接客応対マニュアル)を用いて海外からのお客様応対ができるように各店舗で指導をしていただいています。

美味しい牛肉をリーズナブルな価格で提供

-企業の強みは何でしょうか?

( 一瀬代表)
お客様に品質の良い美味しい牛肉をリーズナブルな価格で提供できていることです。牛肉に関しても品質の高い牛肉を仕入れるために、優れたコネクションを持つ仕入れ先を持ち、幅広い種類の牛肉を取り扱えることは他社にない強みとなります。
牛肉の原材料価格は新型コロナウイルスや生産地の様々な事情により高騰しています。我々はできる限り効率的な在庫管理や加工方法の改善などを行い商品価格を維持できるよう努めたいと思っています。

企業においては、従来のトップダウンからボトムアップへ移行させた組織形態が今後の強みになっていきます。挑戦を続ける我々には、革新的なアイデアや斬新な発想が必要です。そのために社員や現場からの意見や提案を取り入れることが重要となります。
社員達が自ら考え行動することで、自己実現やモチベーションの向上にもつながります。皆が主体的に活躍することが企業の成長や発展につながると思います。
従業員達にはこの会社にいて良かったと思っていただきたい。一緒に働いていることを人に自慢したくなる企業でありたいと思っています。

市場の拡大 アジアへ新規出店

『つなぐ』という観点で今後の事業をどのようにして未来に繋いでいきたいとお考えですか?

( 一瀬代表)
上向きつつある業績を完全に回復させ、「新生」をテーマに新たな発展を目指して邁進いたします。一番に我々の店舗がお客様に求められ、何度も足を運んでいただけるような店づくりを行っていく。お客様の満足度を向上させることで、リピート率の向上を目指したいです。そして今後の戦略としてグローバルな市場の拡大をしていきます。

「いきなり!ステーキ」事業を含めたFC展開で、アジア地域における新規出店。市場シェアを広げたいと考えています。海外出店は企業の持続的な成長と成功を実現するための重要なステップです。今後もブランド価値の向上など企業の更なる発展につなげていきたいと思います。

店舗情報:いきなりステーキ渋谷センター街店(代表店舗) 東京都渋谷区宇田川町33-13 楠原ビル1F

 

【取材後記】
一時500店舗までに拡大した事業をコロナや業績悪化を理由に事業を縮小させ、大幅な人員削減を行うことは、企業にとって非常に困難な決断であったと言えます。
今回のインタビューでは、世代交代した企業の再構築に向け、新たなビジョンや戦略の策定、人材の確保など積極的に取り組まれているお話をお聞きすることができました。
一瀬代表が創業者から受け継いだ「品質の良い美味しい牛肉をリーズナブルな価格で提供し、気軽にステーキを楽しんでもらいたい」という想い。この想いを全従業員が共有し具現化することで、事業回復が達成されるのだと思います。

写真提供:株式会社ペッパーフードサービス /  取材、執筆:秋山直子

INBOUND PLUS 編集部

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