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京都発30周年の本格イタリアンレストラン。未来を見据え、地元と共に歩む店づくり

こだわりの生パスタを製造― 株式会社グラマラスフード―
地元京都で本格イタリアンの魅力を伝える

イタリアンレストラン「ダニエルズ」を代表に、京都で飲食店7店舗展開する株式会社グラマラスフード。(代表取締役 赤松 佐知子) 創業から約30年間、京都の食材をふんだんに使用したイタリア料理の魅力を発信してきました。店舗で使用する生パスタの主原料はデュラムセモリナ粉と京都産の小麦粉、卵、水、塩のみで毎日手作りしています。豊かな風味ともちもちとした歯応えある食感が特徴で、本格的なイタリアンの店として多くのお客様から人気を博しています。

どのようにして現在のビジネススタイルが確立されたのでしょうか?企業の想いや飲食店が抱える課題について、同社部長 米津様にお話をうかがいました。

創業時から生パスタを提供

―1995年に京都で創業されてから今日まで約30年間イタリアンのお店を経営されています。飲食業界で起業された経緯をどのように赤松代表から聞かれていますか?

(米津部長)京都で外国人経営者が営むイタリアンカフェ「ダニエルズ」に赤松(代表取締役)が学生時代アルバイトしていたことが飲食業界に関わる契機となります。同カフェが閉店するタイミングで赤松が店舗を引き継ぎ、1995年にイタリアンレストランとして営業をスタートしたと聞いております。

当時は食材の選定や調理法において本格イタリアンとまでは言えなかったそうですが、イタリアから輸入したパスタマシンで生パスタをお客様に提供していたそうです。現在はス-パ-でも生パスタを購入できますが、当時は生パスタを見かけることが稀でした。食感豊かな生パスタが提供されることで、多くのお客様から喜ばれたそうです。

―お客様に対して、どのような価値やサービスを提供して、満足感を高めていらっしゃいますか?

(米津部長)お客様に美味しい料理を提供することは勿論ですが、当社がスタッフに対して接客面で指導していることは、お客様のイレギュラーな要望に対しても最初からNOを返さないことです。場合によってはシェフに確認する前にYESと言いなさいと伝えています。店舗には様々なお客様が来店されますので、メニューにないご要望も多々あります。最初から「できません」と断わらず、可能な限りお客様のご要望にお応えする姿勢を心がけています。どうしてもできない場合は必ず代替案を提案し、お客様にご納得いただけるよう努めています。
そして当店は京都という歴史ある素晴らしい観光地に位置しており、店内からは京都ならではの街並みを見ることができます。このような環境が、提供する料理やサービスをより魅力的なものにしています。

―これまでの歴史の中で大変だと思われたことはありますか?

(米津部長)コロナウイルスの世界的流行の影響が大きく、当社にも大きな影響を与えました。店舗自体は閉店を免れましたが、当社を支えてくれた従業員の約半数を失うことになり苦境に立たされました。赤松(代表取締役)は従業員の雇用を守れなかったことについて非常に苦慮していました。

飲食店は、コロナ禍で営業時間や入店人数に制限が課され、感染症対策のための費用負担など多くの制限や規制に直面しました。これらの問題に残った従業員で適切に対処することがとても大変だと思いました。

当店の自慢である生パスタは市販の乾燥パスタと違い、湿気や温度の変化に敏感で、質が劣化しやすいためテイクアウトにはこだわらず、物販に注力することにいたしました。自家製麺に加え、スペアリブ、ピザ、パスタソース、スープなど物販用に商品を開発し、これらをスーパーマーケットなど多くの小売業者に卸すことができました。当社はこのタイミングで自社工場を設立しました。これにより、以前は委託先で製造していた製品を自社工場で生産することができるようになり、大幅なコスト削減や流通工程の時間短縮が実現されました。

このようなコロナ禍の対策だけでなく、赤松(代表取締役)は、些細な事でも決定事項は常に店長会で採決を行っています。誰もが自由に意見交換できる環境で、全員が納得した上で事業を進めることができる。その結果、少しずつ良い方向に向かっていることが実感できています。

何事にもチャレンジ精神を持つ人

―飲食業界全体で人手不足という課題がありますがどのようにお考えですか?また、どのような人と一緒に働きたいと思われますか?

(米津部長)近年は働き方が多様化し、長期間同じ場所で働く人が減っているように感じます。特に新型コロナウイルスの影響で、Uber Eatsなどデリバリースタッフのように時間に融通が利く働き方や、副業を持つ人が増えました。そのため長時間勤務できるフリーター層が減少し、人材確保には苦労しています。全ての店舗が協力し、人手不足が生じた店舗に別店舗のスタッフを派遣して応援することや、スタッフが知人を紹介することも度々ありました。

店舗での接客業務において、明るく挨拶ができる人や前向きな人が重要なポイントとなります。また、お客様の要望に上手に対応し、何事にもチャレンジ精神を持ち積極的に取り組める人を求めています。赤松は何事にもチャレンジする姿勢を非常に重視しています。自らが挑戦を繰り返し、それによって会社が今日まで発展してきたという経験を持つからだと思います。

ステップアップシートの活用

―入社後の教育面で工夫している取り組みはありますか?

(米津部長)当社はマニュアルが存在せず、スタッフの教育は現場に任せています。入社時に接客の心構えなどを学ぶオリエンテーションを約5時間、座学で受けることになっています。
入社後は月に1度ステップアップシートを用いて店長と面談を行っています。ステップアップシートはスタッフがキャリアアップするための評価制度です。評価基準に基づいてスタッフの達成すべき目標や役割の成長度合いを確認しています。
以前は、店長が自己の判断で従業員の時給を決定していましたが、評価の基準にばらつきが生じたため、今年からステップアップシートを導入しています。このシートを用いることで、従業員が抱える悩みや課題、そして成長度合いについて確認や共有することができるようになりました。

便利なものよりコミュニケーション

―今後コロナが落ち着き、また外国人観光客が増えると言われています。インバウンドへのお考えや、どのような対策をされているかお聞かせください。

(米津部長)今年に入ってから急激に外国人観光客が増えました。当社は全店舗が京都にあり、創業から多くの外国人観光客にご利用いただいています。特にインバウンドに対する特別な対策は行っておらず、国内外全てのお客様に心を込めたおもてなしを提供しています。
コロナ禍により数年間、外国人観光客が訪日できない状況が続きました。現在は外国人観光客が自身のスマートフォンから取り入れたアプリケーションを利用することで、店舗オーダー時にスムーズにご注文いただけるようになったことに驚きました。

当社は、スタッフに対して人との関わりを楽しんで欲しい、海外のお客様とも臆さずコミュニケーションを取ってもらいたいという赤松(代表取締役)の想いから、タッチパネル式のオーダー機は採用していません。日替わりメニューや季節限定商品に対しては、常に多言語のメニュー表記を提供することが難しい現状があります。そうしたなか、海外のお客様がカメラを使って日本語メニューを読み込み、注文をしてくださる場面も見受けられるようになりました。
当社はインバウンドのお客様を心から歓迎しています。訪日される外国人観光客が、充実した旅行を楽しむためにきちんと準備されていることを知ると、私達も大変嬉しく思います。

「自由な環境」が強み

―企業の強みは何でしょうか?

(米津部長)ひと言で言えば「自由な環境」です。当社は赤松(代表取締役)
が全てを決めるのではなく、社員たちが自ら意見を出し合い、どのような方針にするかを決定しています。やりたいことに挑戦できる会社です。赤松は、私たちに任せきりにするのではなく、一緒にやっていこうと並んで歩き取り組んでくれる人です。

料理に関しては自社で製造している生パスタがございます。どのようなソースでも合うように研究を重ねてきた自慢の麺です。生パスタを使用する条件以外は各店舗の料理長が独自のアイデアでメニューを作り上げています。赤松は料理人達を信頼しており、料理人達もその期待に応えるため日々切磋琢磨しています。

私もソムリエとして店舗業務に従事もしています。ソムリエとして店舗に多様なワインを揃えたい、ワインの輸入を活性化したいという想いがあります。しかし、コンテナ手配や温度管理の問題があり輸入は現実的ではありません。会議で皆に想いを伝え意見を交わし、レモンやハーブなどを原料にしたリキュールなどワイン以外のお酒なら輸入が比較的容易であると、企画を進めていけることになりました。今年中に直接イタリアに行き商談を行う予定です。お客様が喜ばれる姿を想像するととても嬉しい気持ちになります。私自身も、その瞬間を楽しみにしています。

50年後も京都で愛される店に

―『つなぐ』という観点で今後の事業をどのようにして未来に繋いでいきたいとお考えですか?

(米津部長)当社はもうすぐ創業30周年を迎えます。長年、本格イタリアンレストランとして京都で歴史を築いてきた当店は、今後もその伝統を守りつつ未来に向けて発展していきます。
企業規模を拡大するのではなく、一つの店舗を丁寧に創り上げ、その店舗が地元地域に根付き、多くのお客様から愛されるような存在になることが私達の目標です。京都の風土を感じさせる料理の提供やお客様とのコミュニケーションを大切にし、目標が達成できるよう次の50年へ向けて邁進いたします。

 個人的な想いではありますが、スタッフ達には飲食業界で強く生き残ってほしいと思っています。調理学校で同じ時間を学び、一緒に卒業した仲間たちの中に、20年後は飲食業に携わっている人が数人しかいないと見聞きしています。せっかくこの業界に希望を持って入り、お客様に「ありがとう」と感謝される喜びを知ったのなら、できる限り人を幸せにできる業界にいて欲しい。壁や困難にぶつかっても、今いる自分の環境で明るい未来が想像できる人になって欲しいと思っています。また、そのスタッフの成長が私自身の喜びにもつながります。
今後もスタッフの成長と共に発展する企業でありたいと思います。

店舗情報:ダニエルズソーレ 四条烏丸(代表店舗) 京都府京都市中京区貝屋町567

 

【取材後記】
京都で約30年の歴史あるイタリアンレストランを経営する企業も、コロナによって店舗スタッフの半数が失われました。会社の存続を維持するために全員で物販に力を注ぐことを決め、業績回復を試みる企業の想いをお聞かせいただきました。
スタッフ達がお客様に喜ばれることに幸せを感じ、明るい未来を創造しながら、飲食業界で長く輝いて欲しいという、米津さんの願いがスタッフの皆に届けばいいなと思いました。

写真提供:株式会社グラマラスフード /  取材、執筆:秋山直子

INBOUND PLUS 編集部

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