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おもてなしの心で紡ぐ、感動の食体験!-KUURAKU GROUP-

日本文化を世界へ ― 株式会社 KUURAKU GROUP ―
インバウンド集客を成功へ導いたグローバルな視点と明確なビジョン

昨年10月以降、訪日個人旅行規制緩和の影響で、外国人観光客の姿をよく見かけるようになりました。コロナ禍から回復しつつある日本で、飲食店のインバウンド対策は急務と考えられています。
株式会社KUURAKU GROUPは、焼鳥居酒屋『くふ楽 』を中心とした国内チェーン店の他、2004年カナダ出店を皮切りにインド、インドネシア、スリランカ、アメリカ、国内外34店舗を展開しています。2023年1月には国内店のインバウンド来客数がコロナ前に比べ144%を達成し、インバウンド事業に力を注ぐ多くの企業から注目を集めています。
国内外のお客様に満足していただくためにどのような取り組みをされているのでしょうか?海外事業本部執行役の廣濱さんに事業推進についてお話をうかがいました。

日本の文化を世界に広めたい。海外進出への想い

―国内で展開していた事業を海外に広げようと思われたきっかけは何ですか?

(廣濱さん)会社設立当初から、日本の文化を世界に広めたいという明確なビジョンがあり、経営理念の一つにもなっています。日本は世界の中でも突出した、素晴らしい文化があります。四季の美しさ、生活しやすい気候、伝統文化、和食、おもてなしの心、どれもが日本人にとって当たり前の光景でも、外国人にとっては素晴らしい体験と捉えられ、感動につながるのです。海外初出店(カナダ)は、当社代表の友人からいただいたご縁がきっかけでした。

―現在海外5カ国でお店を経営されていますが、海外出店する際に困難に思われたことはありますか?

(廣濱さん)当社は2013年にインドに出店しておりますが、当時インドには日本食が全く浸透しておらず、日本を代表して現地で頑張る日本人駐在員も日々の食事に苦労している状態でした。将来的にマーケットが拡大していくことは予想できましたし、目の前に苦労している方々がいるのを見て進出を決意いたしました。しかしインドに初出店する際、日本食を提供するために必要な物が全くありませんでした。日本からの輸入品は非常に高額でしたし、商品を注文しても手元に届かないことが多くありました。そこで私達は前向きに気持ちを切り替え、自社で調味料などを手作りすることにしました。何もないところから創り上げていくことは非常に大変でしたが、今思えば充実し、楽しい時期でもあったと記憶しています。

インバウンド来客数がコロナ前より増加

―今年に入り、インバウンド来客数がコロナ前より多く集客されています。どのような工夫や取り組みをされたのでしょうか?

(廣濱さん)2023年1月の時点で、インバウンド来客数がコロナ前に比べて144%に達しました。海外のお客様にも喜んでいただけたことを大変嬉しく思っています。一番の要因はレビューサイトで当店が高評価をいただいた影響だと感じております。
海外のお客様は、日本へ旅行する前に訪れたい場所、訪れたい店、食したいものを入念に調べてから来日されます。レビューサイトで当店の評価を見た方々が来店し、当店で体験し喜んでいただいたことをまた投稿をしてくれるという好循環の流れができました。昨秋に、旅行規制が緩和されてからは、Google検索の評価を見たお客様の来店も増えてきました。行き先を調べた先に表示される当店の評価をみて来店されているのです。
旅まえ、そして旅なかにおいて、当店が常に検索上位に上がるようにもなりました。
各々のお客様が書いてくださるレビューが私達の大きな励みとなり、店の活性化にも繋がっています。

―海外のお客様が思わずレビューしたくなる取り組みは、どのようなものですか?

(廣濱さん)写真付きの多国語表記メニューはコロナ以前から導入していました。料理名以外にも「お通し」、「乾杯」など日本の風習や、当店の楽しみ方を一緒に記載しています。なかでも海外のお客様に喜ばれているのが、多国語メニューとは別に記載した、料理名のローマ字表記です。海外のお客様は来日に向け日本語も熱心に勉強される方も多いですが、そのようなお客様は日本語を用いて自ら注文してみたいと思われます。ローマ字通りに読むだけで言葉が通じるため、従業員もその場で理解できますし、日本語でコミュニケーションをとる喜びも含めて記憶に残る体験になっているようです。
そのほかに、お客様の目の前で魚を炙るパフォーマンスなど、当店が提供するおもてなしを、すぐにレビューしていただけるようレビューサイトへ案内するQRコードを、各テーブルに設けています。

―インバウンド対策について、従業員にどのような理解を求めていますか?

(廣濱さん)一番大切なのは海外のお客様だと身構えてしまわないことです。誰であっても最高のおもてなしで迎えようという姿勢が大事なのです。言葉が話せなくても、しっかりお客様の目を見て笑顔で挨拶するだけで、歓迎している気持ちは必ず伝わります。この意識は従業員に徹底してもらっています。当社は海外のお客様や外国語への苦手意識をなくすため、店でよく使う会話フレーズを、十数個に凝縮させて、覚えてもらえるよう外国語講座を社内外に向けて行っています。
簡単なカタカナで言えるようなワンフレーズばかりですが、おもてなしに直ぐに活かせると従業員達も熱心に取り組んでくれています。

誰もが働きやすいフラットな職場環境

―飲食業界全体で人手不足も大きな課題になっています。何か対策をされていますか?
そしてどのような人と一緒に働きたいと思われていますか?

(廣濱さん)海外に店舗展開をしている当社には多くの留学生従業員が在籍し、様々な場面で活躍してくれています。面接時は自分の経験を話す表情や姿勢にも注目しています。履歴書には記載されてない「人間力」に重きをおいています。私達は、国籍を問わず誰であっても、同じ目線で接する意識を皆が持っています。我々は笑顔でしっかりとコミュニケーションが取れる方と一緒に働きたいと思っています。
外国従業員の中には、日本人以上に企業理念を理解してくれる方もいます。外国従業員が新しく入った日本従業員を指導することは、当社では珍しくありません。わからないことは教え合うフラットな環境作りができています。
外国従業員の方達に、店内ではできるだけ母国語を使用しないようお願いしています。それはコミュニケーションのためだけではなく、日本語をしっかり習得して欲しいと願っているからです。日本従業員も言葉を省略せず、丁寧な言葉で話し、お互いに理解しあう努力をしてくれています。

―入社後の教育面で工夫されている制度や、従業員をサポートする取り組みはありますか?

(廣濱さん)当社には、独自のルールブックがあります。規律についてだけでなく、企業理念、今期テーマ、成果を出す方法、社会人として信頼を得る方法、プロとアマの違い、1日の行動計画など、当社の目指すべき事柄を一冊に凝縮したものです。これを社員に配り指針として常に立ち返り、意識付けができるようロールプレイングなどで確認していただいています。
制度については特徴的な二つを挙げます。一つはホスピタリティマップという各店長が従業員と毎月、コミュニケーションを兼ねて面談する際に、使用するステップアップシートがあります。一つの業務ができるようになれば星一つ獲得し、星を多く獲得する度に、時給が上がっていく明確な昇給基準となります。個々に現状課題を確認して星獲得に向けてステップアップを目指しています。
もう一つは、従業員を対象にした海外研修制度です。半年以上勤めているアルバイトを含む従業員が対象です。インドやスリランカに2週間から約1ヶ月間行っていただいています。
日本とは違う文化に触れられる経験にもなりますが、インドで日本食の提供を喜んでくれる人達がいること、この地で自分達が必要とされていることを肌で感じ、ビジネスの原点を再確認できる研修です。海外研修は立候補制ですが、既に20名ほど体験していただいています。

数値化できない、築き上げたKUURAKU GROUPの文化

―企業の強みは何でしょうか?

(廣濱さん)会社全体で築き上げてきたKUURAKU GROUPの文化です。お客様へのおもてなしの心、姿勢など、数値化できない真心をとても大切にしています。その想いが国内でも海外でもしっかりと守り伝えられていることは当社にとって何よりの財産であり、文化だと思っています。
完璧な人がいないように、誰しも時に、楽な方へと流されることもあります。上手く立ちいかなくなった時に、リーダーが気づいてまた本来のあるべき姿に導く社風が確立されていることは、大きな強みになっています。

―2023年4月より、正規社員の給与を平均14.3%、最大20%賃上げをする、大きな決定をされたとお聞きしました。その背景はどのようなものですか?

(廣濱さん)当社代表は、従業員に少しでも資産形成に充てていただきたいと考え、今回の決定に至っています。従業員一人一人が投資や資産運用を知り、お金について学んでほしい。代表自身が若い頃に知らなかったことを、皆に伝え、選択肢の一つとして検討してほしいと願っています。
今回のコロナ禍で、仕入れ等を見直し経営体質改善、リスクマネジメントを徹底いたしました。それに加えコロナで来店いただけなかったお客様が規制緩和でまた戻ってきてくれたタイミングも、今回の賃上げ決定の要因になっています。

より世界の大きな市場で事業開拓

―『つなぐ』という観点で、今後の事業をどのようにして次世代に繋いでいきたいとお考えですか?

(廣濱さん)今後は価値ある日本文化をもっと大きな海外市場に広げたいと思っています。日本は世界稀に見る国の一つだと思っています。海、山、里からの豊かな食材でもてなす料理や日本文化は海外の方々に受け入れられ賞賛されています。

また海外で暮らす日本の方々にとっても、私達の店は必要だとされています。海外で暮らす日々の中に、母国料理があることは、心の安定にも繋がるからです。
当社はインド全土で、日本をテーマにした「子ども絵画コンクール」に協賛しています。日本の四季など毎年テーマを決めて、行ったことのない日本を子ども達が一生懸命に調べて、想いを馳せながら絵を描いてくれるのです。私達が現地で伝える日本食や文化に触れて、どんな日本をイメージしてくれるのか、毎年とても楽しみにしています。

店舗情報(代表店):串焼BISTRO 福みみ コリドー店
東京都中央区銀座6-2先 コリドー街 GINZAはなれB1

 

【取材後記】
今年はコロナ以前の様な外国人観光客の来店が飲食業界でも期待されています。
インバウンドの再開に向けた準備を行い、売り上げ向上に繋げたいと思われるお店も多いのではないでしょうか?今回の対話では、外国人観光客に喜んでいただく体験を提供して、インバウンド集客を成功させたお話をお聞きすることができました。
訪日する外国人観光客が体験するサービスは、日本に暮らす私達が日常で受けているものです。改めて「おもてなし」という日本文化の良さに気づかされました。

写真提供:株式会社 KUURAKU GROUP /  取材、執筆:秋山直子

 

 

INBOUND PLUS 編集部

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