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【価値ある日本文化で世界をおもてなし】
歴史的資産を活用した他とは違う観光施策とは?

 「日本の文化を紡ぐ」というミッションの下、歴史的建造物の保存・利活用を行っているバリューマネジメント株式会社。同社の「価値ある日本文化」を活かしたインバウンドへの取り組みについてバリューマネジメント株式会社インバウンド事業部ゼネラルマネージャーの松尾さんにお伺いしました。

顧客の生涯の想い出となる空間をつくる

まずは貴社の事業について教えてください

 弊社は歴史的建造物の保存・利活用で日本の文化を後世に残していくということを理念に施設の運営を行っております。今後人口減少が進む日本で、空家・空きビル問題は深刻化していくことが予想されます。また、歴史的な街並みや建造物を残していきたいと思う人は多いものの、ボランティア活動では長期的な維持が難しいというのが現実です。そこで弊社は歴史的建造物に特化しその地域や建物固有の価値を創造し多くの方に利用していただくことで、存在価値を生み出し建物や街の維持を行っています。事業としては観光事業とアニバーサリー事業を行っています。観光事業ではホテル、アニバーサリー事業ではウエディングやイベント等を運営しています。その空間でしか体験できない特別感を提供することでお客様の生涯の想い出となることを目指しています。

 19年7月には「VMG HOTELS & UNIQUE VENUES」という新ブランドを発表しました。これまで一般では利用できなかった、自然、季節、歴史的文化的価値の高い場所が、さらにお客様にとって特別な時間を過ごせる場所になるようサービスを提供しています。例えば大阪城西の丸庭園大阪迎賓館は、もともとAPEC95で利用された建物でしたが、長年市が税金で管理運営を行っていたことから施設維持に関する課題や、消費に繋がるサービスがないといった課題がありました。そこで民営化後我々が運営させていただく中で、施設がお客様にとって特別な時間を過ごせる場所になるよう運営を徹底し、顧客満足度の高い施設へと改善、施設維持も持続的に行えるようになりました。今年でいうとG20で首相らの夕食会に利用されるなど、現在では多くの方に利用していただいています。他には平安神宮境内の平安神宮会館の運営も行っております。神宮の資産を新たにMICEでご利用いただける、ユニークベニューとして活用することでお客様に特別感を感じていただけていて、こちらも高い満足度を得ています。

歴史的建造物の保存・利活用を行う上でこだわっていらっしゃる点はありますか?

 特に保存を大切にしています。価値をどれだけそのまま後世に伝えるかを大切にしているので、建物は基本的にそのまま利活用しています。そこに特別感を感じてもらえるようサービスはもちろん内装等工夫をしております。

旅の目的となる施設・街づくり

今年からインバウンド事業を始められましたがこちらの事業としてはどのようなことに取り組まれているのですか?

 インバウンド事業としては、観光立国というところにどれだけ寄与できるかということを大切にしています。今来ている訪日客にどれだけサービスを提供できるかではなく、海外からどれだけ日本に誘致できるかということを重視し取り組みを行っています。特に地方のインバウンド需要に関して価値は高いが観光として知られていない、活性化につながっていない街や、良い物はあるが観光につながっていないということが課題としてあげられます。そこで我々はそれ自体が旅の目的になるような施設・街づくりを行い、訪日客を誘致し地域の活性化につなげようということを行っています。商材としてはホテル・MICE・ウエディングです。この一年の動きとしては、海外のラグジュアリーに特化したトラベルエージェントと深くやりとりをし、ユニークでラグジュアリーな体験を求めている方に向けてアプローチしています。



(アカガネリゾート京都東山とホテルカルティア太宰府)

インバウンド事業に関して現在抱えていらっしゃる課題はありますか?

 大きく二つあります。ひとつは投資対効果です。先ほど申し上げた通り、「海外市場からどれだけ直接集客できるか」にフォーカスしているため、現在認知度の低い海外での集客を行うにあたり初期投資が大きくなります。一方で海外のお客様はリピートが見込みにくいため、収益性は低くなります。顧客の満足度を最大化することでクチコミやSNS発信等での拡散にこだわること、また、日本全国に展開するグループブランドを回遊していただくことの二点で解決を図っています。もうひとつはスピード感です。認知度が低い中でインバウンドは日本国内だけでなく世界の中で選ばれるかが肝心です。そこから勝っていくにはスピード感が必要だと考えていますので、よりスピードをあげて取り組んでいきたいです。

 弊社の強みは対応の個別化です。規模が小さいからこそ個別化が大事だと考えています。インバウンド事業に関しても現地で採用し海外での働きかけに力を入れています。

日本のインバウンドを世界一に

今後の展望について教えてください

 日本のインバウンド需要は世界各国・地域への外国人訪問者数ランキングで見たとき、日本はトップ10にもはいっていないのが現状です。今後日本が世界一になれるよう、我々が貢献していきたいです。

【編集後記】
 ただホテルを運営するのではなく、全て持続性を考えた施策を行われているところに同社の日本の文化を紡いぐというビジョンへの強い気持ちを感じました。同社のこれからの取り組みに目が離せません。

INBOUND PLUS 編集部

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