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【鉄道×インバウンド】KOL活用による情報発信やチケットの電子化も
南海電鉄の最新インバウンド施策

 多くの訪日外国人が、訪日旅行の移動手段として利用する鉄道には、多言語対応や外国人にもわかりやすいシステムづくりが求められます。しかし特に都市部は路線も多く、本来旅行の便利なツールであるはずの鉄道が訪日外国人にとって利用しづらくなってしまっているのが現状です。そんな中、南海電気鉄道株式会社は18年2月中期経営計画の基本方針として、「インバウンド旅客をはじめとする交流人口の拡大」を発表し、インバウンド対応のさらなる強化に取り組まれてきました。強化されたインバウンド旅客への取り組みについて、南海電気鉄道株式会社インバウンド事業部の徐さんにお伺いしました。

現地関係者と協力した情報発信と受け入れ環境の充実

訪日外国人客が増加傾向にある中で、集客のためにどのようなことに力を入れて取り組まれていますか?

 ひとつは情報発信です。訪日外国人の集客で大切なのは、旅前から弊社鉄道を選んでもらうことです。弊社では「How to Enjoy Osaka」というサイトを運営しており、英語、簡体字、繁体字、韓国語の4カ国語で弊社鉄道や沿線情報を発信しています。欧米豪に人気の「高野山」のプロモーションとして「はじめましての高野山」という全6話のオリジナルアニメーションを制作し、同サイト内でPRしています。こちらの例のように興味を持っていただけるようわかりやすく工夫し、沿線の魅力を発信することで、弊社の利用促進につなげています。またSNSでの情報発信にも力を入れています。Facebook、Instagram、Weibo、wechatでそれぞれ公式アカウントを開設し、多言語でのコミュニケーションに取り組んでいます。自社発信以外にも、海外で影響力のあるKOL(key opinion leader)を招請し、積極的に情報発信しております。

 発地側でも積極的に営業を行っています。ひとつは現地旅行会社への訪問です。乗車券や旅行商品の宣伝はもちろん、現地旅行会社の担当者との関係構築によりニーズの把握や旅行環境の変化といった情報を収集し、迅速に対応しています。また、BtoC向けの取り組みとして海外国際旅行博覧会への出展を行っています。2009年の台湾出展を皮切りに韓国、中国、香港、タイ、シンガポール等のアジア諸国やフランス、オーストラリア等の欧米豪諸国の展覧会にも積極的に参加しています。日本には民間の鉄道会社がいくつもありますが、海外では鉄道は国が運営しているものというイメージを持たれていることも少なくないため、まずは南海電鉄の認知度を高めることが必要になります。

 旅行博覧会では、関西空港から大阪中心部である難波へ直接アクセスできる交通の利便性や、難波駅直結の商業施設等の周辺スポットのPR、また訪日外国人客用の企画乗車券のPRを行っています。またここでも、各国の習慣の違い、旅行形態の変化を敏感に感じ取ることにより、求められるニーズへの迅速な対応を図っています。この旅行博覧会への出展を続けてきて、以前ならチラシをとって終わりという方が多かったですが、最近は具体的なアクセス方法や観光スポットに関して積極的に質問をいただくようになり、興味をもっていただける機会が増えたと感じています。

 もうひとつは受け入れ体制についてです。駅構内、ラピート車内、流通施設のWi-Fi環境の整備やキャッシュレス決済への対応等受け入れ環境を充実させています。また、さきほどもお話した海外旅行会社への営業でEチケットの販売を行い、カウンターでのチケット購入方法を簡略化することで、スムーズに訪日旅行をしていただけるよう工夫しています。

顧客層の多様化と多様なニーズへの対応が大切

インバウンド向けの取り組みの中で現在の課題点は何ですか?

 
 鉄道業界全体または他業界にも言えることかもしれませんが、近年多発している自然災害による訪日パッシングがあげられます。訪日外国人客の方からの、災害後の対応やケアを心配する問い合わせは少なくありません。これに対し、現地語を話せるスタッフが限られています。
 また現在売上の多くは、東アジア諸国からのお客さまが占めています。しかし偏った集客は政治や自然災害などの外的影響を受けやすいというリスクがあるのでリスク分散のためにも市場を広げる必要があると考えています。

幅広い国・地域の方に利用してもらえるような鉄道に

今後の展望についてお聞かせください

 
 今後は課題としてもあげた市場を広げていきたいです。最近は全国的に中国からのお客さまが増加傾向にあることから、弊社も力を入れていきたいと考えています。具体的には、現在中国国内でも沿岸部からのお客さまが多いので、内陸へのアプローチに力を入れています。今後より多くの、幅広い国のお客さまにご利用いただけるような施策を行っていきたいです。

 また弊社は現段階では直接の外国人採用を大々的には行っていませんが、外国人インターン生を積極的に受け入れたり、駅への外国人スタッフの配置等を視野に入れて、訪日外国人のニーズに応えていきたいと考えています。

 
【編集後記】
 取材の中で「得策というのはなく、地道に取り組んでいくことだ大切」といった内容をお話されていた場面がありました。同社の取り組みをお聞きし、現地のインフルエンサーの方との協力や、国際旅行博覧会への出展等積極的な海外現地との交流によって市場状況をつかみ、迅速に対応されている様子に着実に訪日外国人利用者が増加している理由を感じました。今後の大阪を中心とした関西地域の盛り上がりが楽しみです。

INBOUND PLUS 編集部

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