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外国人観光客の長期滞在リゾート地としての復権を狙う「日光」
老舗ホテル「日光金谷ホテル」が担う役目とは?

 世界遺産「日光東照宮」の玄関口に位置し、1873年(明治6年)創業の、現存する日本最古のリゾートホテルとして、歴史ある観光資産としても有名な「日光金谷ホテル」。今回は、金谷ホテル株式会社 平野政樹 代表取締役社長に、金谷ホテルから見た日光のインバウンド事情について、お話を伺ってきました。

当時は宿泊客の99%が外国人観光客だった。現在も日光を訪れる観光客のメインは欧米人。

金谷ホテルの始まりについてお聞かせください。

 1873年、当時東照宮の楽師をしていた創業者の金谷善一郎が、泊まる宿がなく困っていたヘボン博士(ヘボン式ローマ字の創始者)を、自宅に招いたことを機に、自宅の一部を外国人の方の宿泊施設とした「金谷カッテージ・イン」を開業したと伝えられています。これが「金谷ホテル」の始まりです。おもてなしの精神もあったと思うんですが、当時は外国人を見るのも初めてでしょうし、外国人がどんな生活をするのか強い好奇心から、そのような行動をしたのではないかと推測しています。

1893年に、日光山内をのぞむ現在地に、2階建て洋室30室として営業を開始した「日光金谷ホテル」。
現在の「日光金谷ホテル」。地下を掘って1階部分を増築。

 当時は宿泊者の99%が外国人観光客だったといわれています。現在も日光は、全国でも珍しく、東アジアからの観光客より圧倒的に欧米からの観光客が多く、日帰り客を合わせるとスペイン人が多いという数字も出ています。ただ、多くの欧米人が日帰りで日光を訪れていて、宿泊せずに東京に戻るケースが多いので、どのように宿泊してもらうか、そして日光はエリアが広いので、どのように長期滞在してもらうか、そこが日光の大きな課題となっています。日光東照宮もありますが、長期滞在という面を考えた時に重要になってくるのが「奥日光」です。

金谷ホテル株式会社 代表取締役社長 平野政樹様

古き良き時代に戻る「原点回帰」をコンセプトに、外国人旅行客の長期滞在を狙う。

長期滞在の鍵を握るのが「奥日光」というのはどういうことでしょうか?

 日光といえば、「日光東照宮」をイメージされる方がほとんどだと思います。当時も最初は「日光東照宮」目的に訪れた外国人が、避暑地を求めて、豊かな自然、泉質の良い温泉が有名な「奥日光」に登ったといわれています。その後、中禅寺湖の周囲には、その環境の良さから、イギリス大使館別荘、フランス大使館別荘、イタリア大使館別荘などが建てられました。そして、別荘に住む外国人が、中禅寺湖でヨットを浮かべ、アクティビティを楽しむ姿があったといわれています。これから外国人観光客に長期滞在してもらうため、古き良き時代に戻る「原点回帰」をコンセプトに、中禅寺湖のヨットやSUP(サップ)などのアクティビティの充実を図ることが優先度の高い課題と捉え、現在は東武鉄道とともに強化を進めています。

 日光の魅力は、車で30分から1時間の間に、「奥日光の自然」、「日光東照宮の文化」、「鬼怒川のアミューズメント」の3つがコンパクトにまとまっていることです。ただ現状は、多くの外国人観光客が日帰りで帰ってしまっていて、非常に勿体ないです。今後は、届けたい魅力をきちんとプロモーションし、外国人観光客に2泊3泊してもらうことで、日光の本当の魅力を感じてもらうことができたらと考えています。

奥日光にある「華厳の滝」

自社や地元の宣伝だけではなく、日光、そして栃木全体をPRしていくことが、金谷のミッション

貴社、そして日光全体のこれからの展望についてお聞かせください。

 2020年夏に、中禅寺湖半に超高級ホテル「ザ・リッツ・カールトン日光」が開業することが決まりました。これから日光がリゾート地として更なる発展をしていくには、このチャンスを逃さず、官民が連携し、また地元の事業者が意識を上げ、みんなで協力して、日光を盛り上げようとするスタンスが必須だと考えています。

 弊社も、金谷ホテルだけではなく、日光、そして栃木にまで拡げてPRを行っています。例えば日光から車で1時間で行ける距離に、栃木が世界に誇る「あしかがフラワーパーク」があります。日光に泊まってもらって、それらの観光スポットに行っていただけるように、自社や地元の宣伝だけではなく、栃木全体をPRしていくことで、世界中の外国人旅行客に「栃木」「日光」「金谷ホテル」の魅力を訴求できると考えています。

 日光東照宮の奥に、こんなに素晴らしい自然があることを知らない方が多くいらっしゃいます。華厳の滝までは行ったことあるけど、その先は行ったことはないと仰る方も多いです。これまでは、その「奥日光」の情報をうまくプロモーションすることができていませんでした。中禅寺湖まで来て頂ければ、宿泊をして頂ける可能性も高くなるので、滞在期間も長くなり、日光全体を周遊していただくことに繋がると思います。

 私たちのミッションは、まずは日光に多くの観光客に来ていただき、奥日光を含め、長期滞在してもらって、日光の魅力を満喫してもらう。そして、日光金谷ホテルは観光資源の一面もあるので、見学に来ていただくだけでも嬉しいですし、最終的には宿泊して頂けるともっと嬉しいですね(笑。

 海外にプロモーションに行った際も、「金谷ホテル」という名前は、外国人の方も聞いたことがあると仰っていただけます。そんな「金谷ホテル」というブランドを持つ私たちだからこそ、自社の利益だけではなく、地域の発展のために、日光の先頭に立って、世界へ「日光」のPRを行っていきたいと考えています。

最後に -インバウンドプラス編集部より-

 欧米人のリゾート地として復権を狙う「日光」にとって、2020年の「ザ・リッツ・カールトン日光」開業と東京五輪は、世界へPRする最大のチャンスになる。2020年をスタート地点として捉え、これから日本のリゾート地の中心として日光が、東武グループや行政とどのように連携していくかが注目である。

INBOUND PLUS 編集部

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