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政府が滞在交流型観光を促進。農泊などを強化する方針

観光庁は、滞在交流型観光を促進するために、3つの観光圏を観光圏整備実施計画に再認定しました。

さらに同時期、農林水産省は農泊の強化を発表しています。

今後、農泊をはじめとした地方での滞在交流型観光充実に向けた動きが加速しそうな見込みです。

本記事では、滞在交流型観光とはなにか、その1つである農泊の現状や強化の方向性、課題などを紹介します。

滞在交流型観光とは?

滞在交流型観光とは、観光客が1日で多くの観光地を巡る「周遊型観光」と対の関係に当たる概念で、1つの拠点に滞在しながら周辺のレジャーや食事を楽しむ観光のことです。

近年、周遊型観光を主軸としたツアー形態の観光から、旅行者自身が旅行計画を立てる個人形態の観光にトレンドが移りつつあることから、滞在交流型観光が注目されています。

滞在交流型観光に対応できるようになれば、これまで旅行者が立ち寄るだけだった通過型観光地も、より観光客からの収益が見込めるようになるでしょう。

滞在交流型観光に選ばれる地域となるためには、日中に楽しめる観光資源だけでは足りません。

地域ならではの体験ができる商品や魅力的な食事、宿泊施設の整備が必要です。

農山漁村に宿泊する「農泊」は体験・食事・宿泊の3つの要素が詰まっており、滞在交流型観光を充実させるうえで1つの重要なピースとなっています。

観光庁は、「ニセコ観光圏(北海道)」「海の京都観光県(京都府)」「豊の国専念ロマン観光圏(大分県)」の3つを観光圏整備実施計画として再認定し、滞在交流型観光を促進するとしています。

農林水産省が農泊を強化。2025年度までに700万人泊を目指す

一方、農林水産省では2024年3月に開催された「多様な地域資源の更なる有効活用に関する農泊推進研究会」にて、農泊を強化することを発表しました。

農林水産省は農泊を「農山村滞在型旅行」と定義し、農泊を強化することで、地域での仕事と雇用の創出・持続的な収益確保・移住/定住を見据えた関係人口の増加を狙っています。

全国621の農泊地域への延べ宿泊者数は2022年度で約611万人で、コロナ禍前2019年度の約589万人から増加しています。

一方で、2022年度の農村地域の平均宿泊費は1万2127円で、農村地域以外を含む全体平均1万4069円を下回りまわっており、付加価値の創出が課題となっています。

農林水産省は、観光庁やJNTO(日本政府観光局)とも連携しながら、観光コンテンツの充実やDXなどを利用した生産性・利便性の向上を目指し、2025年度には農泊地域での延べ宿泊数700万人を目指すとしています。

日本の農泊事例

日本の農泊の事例を紹介します。

宮城県蔵王町 ワーケーション×農泊

宮城県蔵王町では、空き別荘15棟を1棟貸し宿泊施設として農泊に活用。

コロナ禍で急速に広まったリモートワークに目をつけて、無線LANなどを完備することでワーケーション×農泊のサービスを展開しました。

利用者は長期滞在しながらリモートワークをしつつ、空いた時間や休日にレジャーを楽しめます。

リモートワークや1棟貸しという非接触な環境が当時のニーズにマッチし、コロナ禍でも高い稼働率を記録しました。

 

山梨県北都留郡小菅村 NIPPONIA小菅源流の村

NIPPONIA小菅源流の村は「700人の村が1つのホテルに」をコンセプトにした、村全体で旅行客をもてなすホテルです。

古民家に宿泊し、地元の食材をもらって自分たちで料理を作る体験もできます。

大自然を目の前に感じながらゆったりと過ごせるNIPPONIA小菅源流の村は、日本人でも素敵な非日常を楽しめるとあって人気です。

滞在交流型観光の成功に向けた課題

滞在交流型観光の1つである農泊を成功させるためには、認知度を高める必要があります。

農泊推進研究会の調査によると、特に20代は「農泊に興味がある」という人の比率に対して、「農泊を知っている」という人の比率が低い傾向に。

SNSなどを活用した魅力的なプロモーションが、農泊に関心のある20代を引き込む鍵になりそうです。

訪日外国人に対しても同様に、効果的なプロモーションで農泊の認知度向上を図る必要があります。

体験型観光を好む訪日客に対し、「うちならこんな魅力的な体験ができる」というポイントを、日本に来る前の「旅マエ」に伝える必要があるでしょう。

また、高付加価値化も滞在交流型観光の成功を握る鍵です。

都会での宿泊では体験できない地方ならではのサービスを提供し、リピーターを獲得しながら収益を高め、サービスを進化させるサイクルを生み出す必要があります。

 

近年、人気観光地ではない地方においても、国内外からの観光客を獲得するチャンスが生まれてきています。

消費者トレンドや政府の動向、地域の魅力などをキャッチしながら、魅力的なサービスの開発を検討してみてください。

INBOUND PLUS 編集部

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