東京都は、全国で初めてとなる「カスハラ防止条例」の制定に向けた検討を始めると発表しました。
本記事では、条例制定に向けた取り組みの背景や、制定された場合の飲食業界への影響について紹介します。
深刻化するカスハラの実態
「カスハラ(カスタマーハラスメント)」とは、正当な理由がある「クレーム」と違い、理不尽な要求や暴力・暴言などの迷惑行為を指す言葉です。
クレームがエスカレートしてカスハラに発展するケースや、悪意を持って迷惑行為におよぶケースなどがあります。
飲食店においては、以下のようなものがカスハラに該当すると考えられます。
- 提供した料理の作り直しを強要
- 必要以上の説教
- 暴言・暴力
- 悪意のある予約キャンセル
- 長時間の居座り
- 備品の破壊・持ち帰り
日本労働組合総連合会「カスタマー・ハラスメントに関する調査2022」によると、直近3年間で暴言を受けたと回答した人が55.3%、説教は46.7%と高めの結果が出ています。
同調査では、カスハラを受けたことで「出勤が憂鬱になった」「心身に不調をきたした」などの影響も報告されており、カスハラが従業員のモチベーションを著しく低下させる深刻な影響を与えていることがわかります。
カスハラ防止条例が制定された場合の影響
まず、東京都が進める「カスハラ防止条例」の検討では、現時点では罰則を設けない方向であるとしています。
これは、「罰則を設けるとその範囲を超えた行為を許したと認識される」「罰則に該当する行為を決めるのに時間がかかる」などの専門家の意見によるものです。
したがって、飲食店側においても罰則を盾にカスハラに対抗することはできません。
一方、「カスハラは都の条例で禁止されています」などの掲示や注意は可能になるため、ある程度の抑止力にはなる可能性があります。
条例で何がカスハラに当たるのかを明確化し、それらが広く周知されれば、カスハラの発生件数自体を抑えることができるかもしれません。
都は、「条例ができれば、企業もカスハラ対策を打ち出しやすくなる」として、制定を急いでいます。
条例の制定を待たずにカスハラ対策の準備を
カスハラ防止条例の制定はカスハラの抑止力になると考えられますが、制定を待つだけでなく自店でもカスハラ対策を立てておく必要があります。
防犯カメラの設置なども有効な対策ですが、簡単かつコストをかけずにできるのが「クレーム対応の整備・従業員共有」です。
うまくクレームに対応できなかった場合にカスハラへ発展してしまったというケースもあるため、クレームの種類と発生時の対応方法については従業員間でしっかり共有しておきましょう。
また、来店客にルールを理解してもらう工夫も必要です。
席の利用時間や予約キャンセルの期限・キャンセル料などを正確に伝えましょう。
それでも発生してしまったカスハラに関しては、弁護士や日本ハラスメント協会に対応を依頼することもできます。
自店に非がないにもかかわらず謝罪して納得してもらうのではなく、必要に応じて適切な相談窓口を利用することも従業員を守るうえで大切なポイントです。
最後までお読みいただきありがとうございました。