未来につなぐ飲食店
オムライス発祥店、100年企業「北極星」 冷凍オムライス開発などでコロナ前を上回る好業績
北極星産業株式会社 / 福井 道祐様 社長室長兼業務本部長
― 北極星産業株式会社 ―
オムライス発祥店「北極星」で知られる北極星産業株式会社。「北極星」のはじまりは大正11年です。創業者が大阪市浪速区で前身となる洋食屋「パンヤの食堂」でオムライスが誕生しました。常連客のために玉ねぎ入りのケチャップライスを薄焼き卵で包んで提供。これが好評となり、オムレツとライスを組み合わせた「オムライス」という名前でメニュー化され、現在まで日本の定番メニューとして愛されています。
2022年に100周年を迎えた同社。現在は関西を中心に17店舗展開し、昔ながらの味を守り続けています。
事業への想いや従業員との関わりについて、同社社長室長兼業務本部長の福井 道祐様にお話を伺いました。
今回の取材で同社の取り組みには4つのポイントがありました。この4つのポイントの詳細はインタビューの模様をご覧いただければと思います。
1. 100年続くオムライスの専門店「北極星」。家庭でも作れる料理をプロの技術で提供
・多くの人に愛される味や伝統を守りつつ新しいアレンジを模索
・新型コロナウイルスの流行により売上が7割減少。冷凍オムライスを開発したことなどが功を奏し、現在は売上がコロナ前の水準に回復(102%達成)
2. お客様とのふれあいを重視したおもてなしを提供
接客では人対人を重視。お客様にプラスアルファの気持ちを提供
・人手不足を課題とし、業務の効率化を図るために労務管理システムを導入。社員の負担を軽減させ、接客に注力できる環境を整備
3. 健康経営優良法人の取り組みに参加。従業員の健康維持や、仕事に対する意欲向上に取り組む
・従業員の健康管理やメンタルヘルスケアを重視
・オムライス検定を導入し、従業員のスキルアップとモチベーション向上に取り組む
4. 採用面接では会社の存在意義を理解し、共感できる人を積極的に採用
・外国人を積極的に採用し、異文化への理解やコミュニケーションの促進
・「女性活躍推進」を実施し、女性の働き方や男性の育休をサポート
家庭で作れるオムライスをプロの技術で提供
――100年以上愛され続けてきた「北極星」ですが、成功の要因何でしょうか?
また、長い歴史の中で特に印象に残る出来事は何でしたか?
(福井本部長)
有難いことに大正14年に先代が考案したオムライスを昭和から平成、そして現在もオムライス専門店として営業することができています。当店では家庭でも作れるオムライスをプロの技術でご満足いただける商品として提供し続けてきました。オムライスは美味しさと優しさを包み込む料理です。100年もの歴史があるということは、それだけ多くの人に愛される味や伝統を守りながらも新しいアレンジや提供方法を模索してきたことが大きな要因だと思っています。
これまで歴史的な災害や戦争、不況などさまざまな困難な時期はありましたが、近年の新型コロナウイルスが流行した3年半は戦争時に匹敵するほど当社にとって苦境となりました。
お客様の来店がなくなり、売上は7割も減少しました。この状況に対応するために「オンライン食事会」や「オンライン料理教室」を企画し、お客様とのつながりを維持する努力をしました。しかし、オンラインでの取り組みは上手くいきませんでした。そのため家庭でも北極星のオムライスを楽しんでいただけるように冷凍オムライスの開発に取り組みました。店舗で提供しているものと同等の味を実現するために、1年半もの時間を費やしましたがその結果、百貨店などで販売され、現在ではコロナ前の水準にまで売上が回復(102%)しています。
お客様にプラスアルファの気持ちを提供
――お客様にとって「北極星」はどのような存在でありたいと考えていますか?
(福井本部長)
お客様が外食に訪れる際には楽しい目的があると考えています。大切な友人や家族、そして仕事仲間と過ごす貴重な時間をいただいています。当社はそのひと時を温かくおもてなしすることを長年大切にしてきました。現在はITが進化しロボットの配膳や自動レーンでの商品提供も進んでいますが、私どもは人対人を重視し、お客様にプラスアルファの気持ちを提供することに尽力しています。
しかしながら大きな課題として人手不足があります。コロナ禍によりやむを得ず店舗を離れた従業員も少なくありませんでした。人とのつながりを重視するという目標を維持する一方で、デジタル技術を活用して業務の効率化を図るため、労務管理システムを導入しました。このシステムにより、従業員の個人情報を安全に管理するとともに、目標設定や人事評価などを一元化することができるようになりました。社員の負担を少しでも減らし、より多くの時間をお客様への接客に集中できる環境づくりに取り組んでいます。
オムライス検定の始動
――従業員の定着率を高める制度や取り組みはありますか?
(福井本部長)
大阪府では健康経営※1)が推奨されています。それに伴い「健康経営優良法人」※2)の取り組みを行っています。従業員の心身の健康に配慮しながら、業務環境の改善を図っています。具体的には、定期的な健康診断の実施やメンタルヘルスケアの取り組みを強化。従業員一人ひとりが健康で快適に働くことができる環境を整えています。
※1)健康経営®とは、従業員の健康づくりを経営的な視点で考え、戦略的に実践する経営手法です。
従業員の健康維持・増進を図ることで組織の活性化や生産性の向上、人材の定着につながり、企業価値の向上が期待できます。
※2)健康経営優良法人認定制度とは、地域の健康課題に即した取組や日本健康会議が進める健康増進の取組をもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する制度です。https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeiei_yuryouhouzin.html
また、当社ならではの試みとしてオムライス検定を始めました。これは従来のスキル判定を進化させたもので、技術に基づいたランク制度を導入しています。始めたばかりで合格者への報奨についてはまだ未定ですが、ランクごとにバッジを授与する予定です。
存在意義を理解し共感してくれる方を採用
――会社の採用アップに向け、何か工夫されていることはありますか?
(福井本部長)
私が面接時に確認するのは応募者がこの会社でプロとして成長を遂げたいか、という意志を持っているかどうかです。技術のことだけではありません。心からお客様に喜んでいただきたいというプロ意識があるかどうかを確認しています。 先代が最初にオムライスを考案したのもお客様に対する気遣いからでした。当社では自分たちの存在意義を理解し、共感していただける方を積極的に採用しています。
求人に関して当社は人材紹介サービスを主に取り入れています。最近は特定技能資格※3)を持つ外国人も採用しています。
彼らがいてくれることで異文化への理解や言語に関する相互理解が進み、良好なコミュニケーションが取れるようになっています。
※3)特定技能資格とは、特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格を指します
また、当社は「女性活躍推進」にも力を入れており、出産や子育てなど女性のライフステージに合わせた働き方をサポートしています。従業員の50%が30歳以下であり、時代の変化や各世代の感性に合わせ、柔軟な働き方を提供していく考えです。もちろん男性の育児休暇も取得可能です。
求職者の方へ
――どのような人材を求められていますか?また、求職者の方に伝えたいことはありますか?
(福井本部長)
次の100年に向けて持続可能な経営を行っていくために、私どもは真心を大切にしながら、食を通じてお客様に最高の「時間」と「空間」を提供し続けたいと考えています。当社のブランド名でもある「北極星」はどの季節にも変わらず同じ場所に位置しています。同様に、私たちも変わらない価値と伝統を守りつつ、時代に合わせた柔軟なアプローチで、より多くの方々に喜ばれる企業でありたいと思います。
歴史あるこの会社でチャレンジしてみようと思われる方を歓迎いたします。
店舗情報:北極星 心斎橋本店(代表店舗)阪府大阪市中央区西心斎橋2丁目7−27