飲食業界でも「メタバース」というワードを耳にすることが多くなってきたのではないでしょうか。
メタバースとは仮想現実(VR)や拡張現実(AR)といった技術を用いてネットワーク上に構築された、三次元の仮想空間や世界のことを指し、Facebookが2021年に「Meta」に社名変更したことやAppleが2023年6月5日の年次イベント「WWDC23」で初めてのVRゴーグル「Vision Pro」を発表したことから世界中でメタバースへの期待が高まっていることが伺えます。また、マッキンゼー・アンド・カンパニーのレポート(https://www.mckinsey.com/jp/~/media/mckinsey/locations/asia/japan/our%20insights/metaverse%20report/01-77_metaversereport.pdf)によると2030年のメタバースの市場規模(世界)が5兆ドル(約650兆円)に達する可能性を示唆しています。これは日本の国家予算110兆円の約5倍であり、とてつもない数字です。
実際に飲食店はこの最先端技術をどのように活用していけばいいのでしょうか?
一つの例として、マクドナルドは2022年2月「バーチャルアイテムなどのグッズを販売する仮想空間のレストラン」や「バーチャルなMcCafeで開催されるコンサート」などメタバースに関する商標を申請しています。これは近い将来、実際にメタバース上での店舗を出店する準備だと考えられます。また、2021年にはマックリブの40周年を記念して「McRibNFT」というN F Tを限定で配布しておりブロックチェーンなどの最先端技術も積極的に導入しています。
モスバーガーでは2022年9月14日〜16日の3日間限定でメタバースの月面空間に「モスバーガー ON THE MOON」をオープンしました。(https://www.mos.co.jp/company/pr_pdf/pr_220906_5.pdf)
月見フォッカチャなどの4商品を仮装店舗の厨房で調理する体験が味わえるそうです。メタバース上の店舗ではハンバーガーを味わうことはできませんが、プロモーションの一環として活用したと考えられます。実際に月見モスは一時休売が発表されるほどヒットを記録しました。
このように、メタバース空間上では実際に食事ができないことから、飲食店がメタバースを直接的に導入するのは難しいように思えます。しかし、メニューを商品化し店舗上で販売しているレストランは新たなチャネルとしてメタバースを用いることが考えられます。
また、テーマレストランや大手飲食チェーンのように独自のエンタメやキャラクター、ブランド力を持っている飲食店であれば仮想空間上に飲食店を出店し、サービスやエンタメを提供することで、実店舗のプロモーションに活かすことができるでしょう。
ウーバーイーツなどのデリバリーサービス上で行われている取引が、今後メタバースにプラットフォームが移るということも考えられます。実際に写真を見るよりも仮想空間上で料理を作る工程を見ながら他の商品と比べることで、料理がイメージしやすく、客側も選びやすいのではないでしょうか。
また、スタッフの人材育成という面において3Dの仮想空間上で業務内容を研修することで、より効率的に人材の育成が可能になるでしょう。
将来メタバースのウェーブに乗るために今飲食店が取り組めることとしては、ブランド力やマスコットキャラクターなどの無形資産を持つことだと考えられます。メタバース市場の成熟度が確立していないため具体的な展望を述べることは難しいですが、仮想店舗でエンタメやサービスを提供し、実店舗では食品の調理を行うといった、融合した形態の店舗が一般的になっていく可能性を秘めています。
そして、まずは一度メタバース空間にアクセスしてみることで1ユーザーとしての視点が深まることと思います。
飲食業界にはメタバースは縁遠いものではなく、アイデア次第で活用の可能性は広がります。
是非今後もメタバースの動向には注意を払っていきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。