コロナの規制緩和により、飲食店や旅行に行く人や飛躍的に増えています。インバウンドについても4月の訪日外客数は194万人と2019年対比66%にまで回復してきています。
そのような外出・外食回帰によって、飲食店やホテル・旅館では人手不足が深刻化しています。以前当メディアでも紹介した通り、帝国データバンクのデータによると、正社員の人手不足割合は旅館・ホテルが第1位で75.5%、飲食業は61.3%となっています。非正社員では1位が飲食店で85.2%、2位が旅館・ホテルで78%と、3位の小売業58%と圧倒的な差で、両業種の人手不足の深刻さを物語っています。
実際に今までも人手不足によって休業や時短を余儀なくされる店舗が多くありました。次にいくつかの例を整理したいと思います。
吉野家:都内193店舗中47店舗で時短や一時休業を実施
すし兆丸:ゴールデンウィーク中に一部の店舗で休業を実施
山梨県・鳴沢村の旅館「じらごんの富士の館」:108部屋中27部屋を稼働できない時期があった都内を中心に30店舗を展開する飲食店:アルバイト不足により運営できず8店舗を閉店、2割の店舗で休業日を増やしました。
飲食店の倒産件数も増加の傾向です。帝国データバンクのデータによると焼き鳥店を含む居酒屋の倒産件数は今年1~5月までに88件発生。前年から4割増で推移し、コロナ禍のダメージを受けた2020年の同時期と比較しても多いペースとなっています。
コロナ禍においては雇用調整助成金や時短協力金、補償金など公的支援に支えられてきた面がありましたが、それが終了し、従来の営業に戻した中で集客が振るわないと資金不足に陥ってしまうのです。ここに人手不足までが追い打ちとなり営業時間が減る、時給は上げなくては人が取れない、人手不足の中で既存スタッフに負荷が増えて人が辞めていってしまうという悪循環に苦労している飲食店は後を絶ちません。コロナ直後の2020年の倒産件数189件を上回り過去最多を更新する可能性が出てきてしまっています。
単純に時給を上げれば人手不足が解決するわけではなく、そこで働く意義や一緒に働く人とのコミュニケーション、自己成長など複合的な要素が合わさって採用と定着が円滑にいくようになります。これは大変難しいことではありますが、企業力を成長させるきっかけとプラスにも取ることができます。この苦難を契機に企業としての個性や価値を社員や求職者にどう発信するか徹底的に強化することが求められています。
店舗運営が出来なくなるほど深刻なこの問題は経営の中枢に位置するほどのものになりました。
待ったなしの人材対策、表面的な策ではなく、全社をあげて取り組むべき重要課題となっています。