― 株式会社石田企画 ―
株式会社石田企画は福岡を中心に居酒屋や韓国料理、カフェ、ベーカリーなど、多様な業態で9店舗展開(2023年5月時点)。店舗では、九州で生産された素材を中心に使用し、提供する料理にこだわりを持っています。また、健康を意識した取り組みとして、無農薬や有機、減農薬野菜などの身体に優しい野菜も積極的に取り入れています。これにより、健康に配慮したメニューを提供すると同時に、地域の生産者との関わりを通じて地域の活性化にも貢献されています。
企業の想いや飲食店が抱える課題について、同社CEO 石田京大様にお話をうかがいました。
今回の取材で同社の取り組みには3つのポイントがありました。
この3つのポイントの詳細はインタビューの模様をご覧いただければと思います。
1. 商品以外にもプラスアルファの価値を提供
・生産者の想いや知識や料理の工程、季節に応じた地域の情報という付加価値を提供
2. 安心・安全の基準は「自分たちの子どもに食べさせたいもの」
・「自分たちの子どもに食べさせたいもの」を基準とし、できる限り安心・安全な食材を選定
3.人材の可能性を見出し育てることを重要視
・素直さと明るさを重視した採用。主婦の方の社会経験や家事のスキル、コミュニケーション力を価値と捉え採用を強化。
・入社後も様々な人が働きやすい環境を整備し幅広い可能性を引き出す。
「花見プロジェクト」の推進
-御社の掲げられている「花見プロジェクト」について詳しくお聞かせください。
(石田CEO)
18年前の創業当時、私たちは、桜を楽しみながらお酒やお弁当を楽しむお花見のようなシーンが、日本の食文化を象徴しているように感じました。そのような楽しい雰囲気を、当社の飲食店でも感じていただけるようにしたいと考えました。そこで、日本の料理や食文化をお花見に例え、海外の人にも伝えるための取り組みを行うことを決め、「花見プロジェクト」という名前でスタートしました。このプロジェクトは、当社の国内店舗をモデルにして、海外に広めることを目的として始めたものです。
現在、シンガポールに2店舗展開しており、その経験を活かして今後も海外展開を積極的に取り組んでいきたいと考えています。
お客様にプラスアルファの価値を提供
-競合他社が多い中、事業の発展に向けて行われていることは何ですか?
(石田CEO)
成功の定義には個人差があると思いますが、私はまだ成功しているとは思っていません。私たちの使命は、美味しさを通じて、生産者の想いや素材の素晴らしさをお客様に届けることです。飲食業はお客様に喜びや幸せを提供できる仕事です。美味しい食事を提供するだけでなく、食材についての知識や料理の工程、季節に応じた地域の情報などを提供することなどプラスアルファの価値も一緒に提供したいと思っています。
-無農薬や有機野菜、減農薬野菜を使用した料理が多いそうですね。提供する上でどのような思いがありますか?
(石田CEO)
当社では、無農薬や有機野菜、減農薬野菜を使用した料理を多く提供しています。その理由として、私たちが子育て中であることから、「自分たちの子どもに食べさせたいもの」という基準を大切にしているからです。現在、完全に無農薬の食材で調理することは難しいため、できる限り安心・安全な食材を選定しています。また、地域の生産者との関係性を築くことで、食の安全性について深く考えるようになりました。
プラントベース料理を主力とする店舗もあり健康志向の海外からのお客様にも人気があります。福岡には植物食材に特化したお店が少ないため、日常の食生活に適したお店を探して店舗に来店されることもあります。私たちは、お客様に安心・安全な食材を提供し、健康的な食生活を応援することを大切に考えています。
-コロナで働き方が変わりました。コロナをきっかけに見直されたことはありますか?
(石田CEO)
率直に言うと、新しい業態にシフトする必要があったため、時間をかけて見直す余裕もありませんでした。コロナ禍で我々は既存の業態が上手くいかず、閉店を余儀なくされることもありました。当社は創業当初から30代や40代のお客様をターゲットにした居酒屋業態に注力してきましたが、コロナ禍に京都産の抹茶を使用したメニューに重点を置いたカフェ事業を展開しました。このアイデアがお客様のニーズに合致し、現在も多くのお客様に喜んでいただいております。
抹茶は健康志向の方にもマッチする食品であり、様々な効果効能があるとも言われています。私たちは、京都府和束町の生産者からこだわりの抹茶を仕入れております。生産者の思いを受け継いで、今後も国内外の方々に抹茶の良さを広めたいと考えています。
多くの人材の可能性を見出し育てる
-御社では雇用安定に向けた取り組みはされていますか?
(石田CEO)
飲食業界では過去に労働時間短縮や職場環境改善が議論されてきましたが、現在ではより進んだ改善が求められています。私たちは社員のやる気を引き出すために、働きやすい環境づくりに注力しています。職場の雰囲気や待遇など、心身ともに健康で働きがいを感じられる環境を作りに注力しています。
-具体的に不足になりやすいポジションはありますか?
(石田CEO)
どこのポジションも人が足りないです。一つ例を挙げると調理技術を必要とする主要なスタッフやトータルマネジメントができる店長などです。即座に任せることができないポジションにおいては人材不足の問題に悩まされています。
-どのような人材が求められますか?採用基準はあるのでしょうか?
(石田CEO)
飲食業界で重視されるのは、素直で明るい性格です。技術や業務はトレーニングで身に付けられますが、人柄や人間性は簡単には変えることができません。
料理に対する気持ちやお客様に対するシンプルな感謝ができることが重要だと捉えていますのでそのような素養を持っている人を採用することを心掛けています。
私たちの展開するカフェやベーカリー事業では、主婦の方が子育てを終え、働きたいと応募してくださることがあります。主婦の方は社会経験も豊富であり、経営層と若い方の良いパイプ役にもなります。主婦の方が日々続ける家事は素晴らしい経験値だと思います。
多くの人材の可能性を見出し育てることも大切な私たちの役目です。
喜びを共有し、幸せにつなげるマインド
-「つなぐ」という観点で今後事業をどのように未来につないで行きたいと思われますか?
(石田CEO)
飲食業界の仕事には、人を思いやる気持ちや相手の喜びを自分の喜びに変えるマインドが必要だと考えます。技術力に自信がなくても、この仕事を好きになって練習を積み重ねることで上達することができます。しかし、同時に人として内面的な成長も追求することが大切です。このようなマインドで行われるフードビジネスは大袈裟かもしれませんが、世界平和を促進する文化であると私は信じています。
日本はこれまで製造業や自動車産業などの分野で世界をリードしてきましたが、外食産業においても自信を持って世界に誇れる産業だと考えています。私たちが心のこもったサービスを提供し、お客様に喜んでいただける店があるからこそ、私たちのマインドは育まれるのです。私はこのような想いを未来につなげていきたいと思っています。
皆が仲間であることを大事に考えてくれる人
-従業員には今後どういう人になってもらいたいですか?
(石田CEO)
従業員との関係性について野球チームで例えると私はキャッチャーのポジショニングだと思います。時には監督にもなるキャッチャーです。野球のチームがポジション毎に役割があるように、当社でもそれぞれに役割があります。
私も皆と一緒にプレーをするキャッチャーの立場で全体を俯瞰し、適切なアドバイスをすることでチームのプレーを改善し、組織全体を盛り上げたいと考えています。従業員には私たちと同じマインドを持ち、一緒に会社を盛り上げてくれる人になって欲しいと思っています。皆が仲間であることを大事に考えてくれる人であれば、業種業態問わず飲食業界で良い結果が出せる素晴らしいチームになると私は思っています。