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【京都×インバウンド】観光地の環境整備
京都市観光協会が取り組む四方良しの京都とは

 海外の大手旅行情報誌等で行きたい国として上位に選ばれ続けている観光都市京都。18年には「観光振興計画2020」で20年の目標値として掲げられていた1兆3000億円を2年早く達成する等観光消費が急速に拡大しています。最近では特定の時期や場所における混雑やマナー問題に注目が集まっていますが、今年度「持続可能な観光都市「京都」をビジョンに市民、観光客、事業者、そして未来の“四方よし”の持続可能な観光マネジメントを目指す取り組みをしてこられました。そんな今後の観光都市の在り方をつくる京都の取り組みについて京都市観光協会の堀江さんに伺いました。

ターゲットに応じたプロモーション

京都は観光地として世界の中でも有名な都市のひとつですが、どのようなプロモーションを行っているのですか?

 世界中の国から日本そして京都を目的地に選んでもらうために、8年前から世界各地に拠点を置いて現地との関係づくりを行っております。現地メディアに現地の視点で京都を紹介してもらうことで、効果的な情報発信を行っています。海外メディアに京都を紹介してもらう他に、各拠点を通して集まった情報の確認を行う等、常に各地の新鮮な情報をチェックするよう努めています。

情報発信に関して取り組んでいらっしゃることはありますか?

 「Kyoto City Official Travel Guide」という独自のウェブサイトの運営を行い自分達視点の情報も発信しています。19年12月19日からはAIを活用した自動会話プログラム(チャットボット)の導入も開始し、より多くの方に快適にサイトをご利用いただけるよう取り組んでいます。こちらのサイトでは“DMOでなければできないこと”を意識して発信しています。例えば、地元の詳細なイベント情報や、桜と紅葉の見頃に加えて、交通情報、Wi-Fiやキャッシュレスなどのインフラに関する情報も発信しています。またSNS等を活用し、国内からも訪日外国人との接点を強化しています。

観光地としての“質”を高める

京都市における観光の課題と、その改善策として取り組んでいらっしゃることをお聞かせください

 近年の訪日外国人の急増により一部観光地への集中やそれに伴う、マナー違反の顕在化、公共交通機関の混雑といった様々な問題が浮上しています。これに対し、今年度は市民・観光客・事業者、そして未来の四方にとって望ましい観光地経営を目標に取り組んでいます。

 まずトラブルを無くすための施策として、特定の場所や時間帯に観光客が集中することを緩和する取り組みを行っており、京都の中でも観光地としての認知が不足しているが、魅力ある地域を積極的に発信しています。また、観光客へのマナー啓発も重点的に取り組んでいます。例えば「AKIMAHEN」や「ENJOY RESPECT KYOTO」といったプロジェクトを行っています。これらの取り組みでは外国人でも理解しやすいよう観光をする際のマナー、ルールをピクトグラムでわかりやすく表現し、ステッカーやチラシにして多くの方に認知してもらえるよう工夫しています。集客するだけでなくマナーの周知もしっかりと行うことで、全ての方が快適に過ごせる環境づくりに努めています。

これらの取り組みの中で課題はありますか?

 海外富裕層の誘致です。近年京都市観光協会は、観光消費額の増加と地域経済の活性化を目指し、海外富裕層誘致に力を入れています。しかし富裕層のマーケティングは容易ではありません。そこで市内の主要ホテルから提供していただいた情報をもとに、京都観光の状況をいち早くお知らせする、「京都市観光協会データ月報」や、海外拠点からの情報等を利用・発信し会員企業のマーケティングを支援しています。また、京都コンシェルジュ研究会を立ち上げ、市内のホテル及びコンシェルジュの方々と連携し情報を共有することも、今年度から取り組んでいます。こうした取り組みを通して、京都全体で富裕層誘致によるブランドの確立を目標に活動しているところです。

 またリピーターの囲い込みも課題です。初訪日者の多くが京都を訪れる一方で、リピーターは北海道などの他方面へ行く傾向があることがデータからわかっています。我々の目指す「持続可能な観光地」を実現するためにリピーターを増やすことは欠かせません。こうした課題を解決するためにも、観光地としての“質”の向上は重要なテーマです。

世界で選ばれる都市、京都へ

最後に今後の展望をお聞かせください

 今後は四方良しを軸に持続可能な観光都市づくりの先駆けとなる、「京都モデル」を追求していきます。その結果として、「寺院・神社」「芸舞妓」「町家」といった、京都の伝統的な文化資源に支えられたブランドイメージを核としつつも、次世代の多様な価値観や新しいニーズに対応できるように、絶えず進化を続ける街としてのブランドを浸透させたいです。世界の有名観光地と比較すると、京都にはまだまだ伸びしろが残されています。この伸びしろを埋めることで、世界中から憧れが集まり、市民も観光事業者も京都にいることを誇りに思えるよう、これからもチャレンジしていきたいと思います。

【編集後記】
 観光地として世界的にも十分認知されている京都ですが、持続可能性の観点から様々な課題を抱えています。訪日外国人が増え続ける日本において観光地としての“質”の向上は今後各地で課題となるテーマとなるでしょう。そんな日本の観光市場をリードする京都の、今後の動向に目が離せません。

(取材日時:2019年12月10日)

INBOUND PLUS 編集部

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