キーマンインタビュー
【ホテル×文化対応】インバウンド対応の最前線であるホテル業界
外国人観光客から、真に支持されるホテルの条件とは
株式会社近鉄・都ホテルズホテル運営本部 営業推進部課長 浜本 康夫様
ホテル運営本部 営業推進部(営業・インバウンド事業推進担当) 主査 倉光 明様
ホテル運営本部 営業推進部(営業・インバウンド事業推進担当) 西村 知哲様
平成30年度、観光庁が公表する「宿泊旅行統計調査」にて外国人延べ宿泊者数は8,859万人泊(前年比+11.2%)となり、調査開始以来の最高値を記録しました。そんな中、インバウンド対策で重要視される「ホテル」業界。旅先にて食事と住環境を提供するホテル業界は、まさに日本の顔です。そんなホテル業界の最前線で外国人観光客の顧客満足度を上げるべく、日々奮闘される近鉄・都ホテルズ様にインタビューしました。
「都ホテル」に泊まりたい、を目指す。
御社でのインバウンドに対する、現在の取り組みについてお聞かせください。
訪日観光客向けの取り組みとしては、アジアを中心に直接現地に出向いてPR活動を行っています。現地の旅行会社様に対しての営業や商談会はもとより、現地で開催される旅行博覧会に参加することで、直接個人のお客様にも「都ホテル」を知っていただく機会をつくることを一番の目的としています。都ホテルズ&リゾーツは国内中心ブランドのため、海外の方にまずは「都ホテル」を知っていただく事が重要だと考えています。知っていただくことで、現地旅行社を通してのご予約や個人のお客様から直接ご予約をいただく機会が増えることを期待しています。その他、受け入れ態勢の整備として、英語や中国語、その他の言語でサービスできるスタッフは、話せる言語が書かれた「はなせますバッチ」を着用し、お客様にお知らせしています。また、ムスリム対応の一環として、京都ハラール評議会から認証を受けた食事をほとんどのホテルで提供しています。
多言語での対応ができるスタッフは、どのように採用されていますか?
国内に在住する外国人の方が応募されるケースもありますが、最近は現地での採用にも力を入れています。韓国の就職イベント等にて採用活動を行い、昨年10月には韓国籍の社員が4名入社しました。2019年12月では、全社員約2,200名中、外国籍の社員は109名います。全体の約5%が外国人社員ということになります。外国語での対応ができる社員を増やすことで海外からのお客様の顧客満足向上に繋げたいと考えています。
現地での生活を預かるホテルだからこそ、見えるものとは
現在、インバウンド対策に関して感じている課題
ゲストの宗教による食習慣の違いへの対応は、ホテルの力の見せどころです。代表的なものはハラールですが、他にももっと厳格な食事制限をもった宗教もあります。館内の全てのレストランでお客様の情報を共有し、外部のレストランをご紹介する場合は、手配先への正確な情報伝達がポイントになります。また、口コミ対策も重要です。海外の宿泊予約サイトは独自にホテルをランク付けしており、ランクが低いホテルや評判の悪いホテルには予約が入らなくなります。逆に上位ランクのホテルや口コミの点数のいいホテルは選ばれやすくなるので、ホテルは評判をあげるために日々サービス向上に努めています。
「誰でもいつでもわかりやすく」が基本
以前からどのようにブランディングを変更されましたか?
都ホテルズ&リゾーツチェーンとして、国内外で23ホテルを展開していますが、インバウンドの急増や、お客様が求めるおもてなしのスタイルの変化に対応するために、ポジショニング、施設構成や機能、サービスコンセプトなどを明確にし「都ホテル」「都シティ」「都リゾート」の3つのカテゴリーに分けました。
「都ホテル」は、宴会場やレストランを備えた都市型フルサービスホテル、「都シティ」は、宿泊主体の都市型カジュアルサービスホテル、「都リゾート」は、伊勢志摩地域を中心に地元食材やアクティビティを活用したリゾート型フルサービスホテルです。カテゴリー毎に施設やサービスのスタンダードを定め、高いレベルで一貫したサービスを提供し、都ホテルズ&リゾーツ全体のブランド価値向上を目指していきたいと考えています。
都ホテルならでは、を目指す
今後の展望をお聞かせください。
今後はSNS等を利用した海外向けのPRにも力を入れていきたいと考えています。都ホテルファンを増やすためには、サービスの向上はもちろん、「都ホテルならでは」の体験を提供していく必要があります。ご利用いただいたお客様が満足され、ファンになり、さらに周囲の方にもお薦めいただけるようなホテルを目指していきたいと考えています。
<編集後記>
ホテルは旅先の生活において、食住を担う極めて重要なポイントです。外国という非常に負荷のかかる環境下で、言語や宗教等のストレスのない場所は心落ち着くものとなります。このような快適な環境で休息し、気持ちよく観光ができるというのはこれからのインバウンド対策で必然的に評価されるポイントになっていくと思いました。
取材・写真:大島千佳、株式会社近鉄・都ホテルズ 深田様(写真提供)
編集:長谷川拳太郎