キーマンインタビュー
【社長インタビュー】Wi-Fiルーターレンタルサービスでトップシェアを誇る
ベンチャー企業のマーケティング戦略とは
株式会社ビジョン代表取締役社長兼CEO 佐野健一様
株式会社ビジョンは、グローバルWiFi事業と情報通信サービス事業の2本軸を中心とした事業に取り組まれています。また、佐野社長個人の活動において、19年12月に一般社団法人インバウンドベンチャー会の設立を発表されました。今回は株式会社ビジョンの佐野社長に、業界トップシェアを誇るグローバルWiFi事業のお話からインバウンドベンチャー会立ち上げの経緯、これからのインバウンド市場についてお話をお伺いしました。
海外渡航におけるインターネット通信市場を開拓
グローバルWiFi事業を行うに至った経緯を教えてください
グローバルWiFi事業は国内外のお客様を対象に世界中で快適なモバイルインターネット接続環境を提供しているポケットWi-Fiルーターのレンタルサービスとなります。また海外渡航される方に寄り添った旅行プラットフォーム関連サービスも提供しています。
ポケットWi-Fiは日本ではメジャーですが、多くの国ではまだまだご自身のスマホのSIMを差し替えて利用されています。しかし世の中がマルチデバイス化している中で、SIMではユーザーの利便性が満たされません。そこで我々は、12年から海外用Wi-Fiルーターレンタルサービス「グローバルWiFi®」を開始し、15年には訪日外国人向けWi-Fiルーターレンタルサービス「NINJA WiFi®」を「グローバルWiFi®」と同様、空港カウンターでに受け取り・返却をメインとした、貸し出しを始めました。
ここで現在のポケットWi-Fiのレンタル市場について少しお話すると、少しずつですが利用国は増えてきています。例えば香港の空港カウンターはこれまでSIMが主流でしたが、現在では9割がポケットWi-Fiに置き換わっています。そのほか台湾や韓国といったアジアの国々ではポケットWi-Fiの利用がメインになってきています。これから、更に世界的に主流なサービスになっていくと確信しています。
ポケットWi-Fiが主流ではない中でどのように市場を開拓してこられたのですか?
利用者は知らないモノは借りないし、知っているモノの中でも良いモノを使いたいと考えます。ですからまずは認知度を上げることに努めています。具体的にはターゲットを旅前の外国人に絞り、日本を紹介している海外の旅行サイトと連携してPRを行ったり、旅行関連の展示会に積極的に出展したりしています。また国内では観光案内所やホテルと提携して、顧客である訪日外国人との接点を増やすよう工夫しています。
旅前の訪日外国人の中でもどのような層にアプローチされているのですか?
富裕層にアプローチしています。海外旅行に行く人というのはある程度富裕層に属する人ですので、アッパーレイヤーの会員組織をもっているところとつながりをつくってきました。例えば、台湾を例にとると、銀行等で富裕層向けに割引特典を配布し日本への旅行の際に利用してもらえるようアプローチしています。
ベンチャーのスピードという強みで日本のインバウンド市場を牽引
佐野社長個人の活動として、19年12月9日に一般社団法人インバウンドベンチャー会の設立を発表されましたが、設立の経緯を教えてください
実は2014年頃から設立に向けた動きをしておりました。これまで世界的に観光産業が伸びていたにもかかわらず日本は長年閉鎖的でした。ところが13年頃のビザの緩和等から日本のインバウンドの伸びを感じ、すぐに動きだしました。
当時観光産業への参入に遅れをとっていた日本において、日本を旅先に選んでもらうこと、受け入れ体制の整備、リピーターをつくること等必要な要素がたくさんありました。そこでベンチャー界隈で、それらの分野で少しずつ成功している企業同士協力し、日本のインバウンドを盛り上げていこうという意図で立ち上げました。日本のインバウンド市場を開拓していくにあたっては、政府との連携も選択肢としてありましたが、ベンチャー企業の“スピード”という強みに目をつけ、ベンチャー企業同士の横の連携の強化に踏み込みました。
世界初のスマホ型Wi-Fiルーターで新しいサービスを提供
今後の展望について教えてください
グローバルWiFi事業に関しては、19年8月にクラウド対応のスマホ型Wi-Fiルーター「GW01」の提供を開始しました。こちらはGW01につないだ端末の位置情報と組み合わせて、利用者が本当に欲しい情報を最適なタイミングで提供します。これにより高い精度で利用者に直接アプローチできる広告モデルを確立します。また、今後国地域関係無くどこに行ってもWi-Fiルーターを決済に活用できるようにしようという取り組みも行っています。
インバウンド市場でいうと、中国市場の獲得がこれからのテーマになってきます。中国のトップが今後国内の7億人は海外渡航させるという方針をうちだしていたことから確実にこれから訪日中国人市場は伸びると見込んでいます。弊社は取引先の企業様自身が自分達で運用していけるような体制をつくっていけるよう取り組んでいきたいです。
【編集後記】
市場が未開拓な中で拡大してこられたWi-Fiルーターレンタル事業をはじめ、世界初のスマホ型Wi-Fiルーターの提供等、様々なことに挑戦し市場を開拓し続けられていて、これからのインターネット通信を活用した海外渡航関連サービスのさらなる発展に期待が募るお話でした。インバウンド関連事業に携わる方には必見の内容です。