キーマンインタビュー
【インバウンド対策×飲食店】
訪日外国人と飲食店をスムーズにつなぐTakeMe Payと日本美食
TakeMe株式会社(旧 日本美食株式会社)代表取締役社長 董 路様
代表取締役社長董路(ドン・ルー)様の外国人というバックグラウンドがあるからこそ感じた問題意識から生まれたTakeMe株式会社(旧 日本美食株式会社)。中国でのビジネストレンドをいち早く日本に持ち込み、主にインバウンド集客に取り組む中小規模の事業者向けにインバウンドコンサルティングを行っています。
2019年3月には世界中のスマホ決済を一つにまとめられるサービス「TakeMe Pay」をローンチしました。日本の飲食店と外国人を確実につなぐコマースプラットフォームからそこに発生する決済まで一気通貫して行う、TakeMe株式会社(旧 日本美食株式会社)の代表取締役社長董路様にお話を伺いました。
自身のバックグラウンドと周囲の声からの創業
創業のきっかけを教えて下さい
きっかけは、私の外国人としての体験です。休暇を使い日本に遊びに来る外国人に目を向けると、飲食店を探す際に「探せない」「通じない」「払えない」等多くの悩みを抱えていらっしゃいます。私は、そのような外国人が持ちうる悩みを解決したいという思いを持っていました。また、飲食店を経営している方たちを近くで見て、日本の飲食店がインバウンドに対する悩みを抱えているということも分かりました。そこで、外国人というバックグラウンドと問題意識を持つ私であれば作れるビジネスモデル、私であれば解決できる社会問題があると強く感じました。
日本で外国人が抱える問題、飲食店が抱える問題について教えて下さい
東京のレストランの数は世界一で、16万件以上あると言われています。加えてミシュランの星付きレストランの数も世界一で、300件あります。このように数も質も日本の食は担保されています。飲食店の選択肢が多い中で外国人が抱える問題は、主に「コミュニケーション」と「決済」です。日本には4年前QR決済等はなかったのですが、中国では4年前からすでにQR決済が主流でした。最近、日本でもQR決済が盛り上がってきましたが、それでも使いたいときに使えないことも多いです。
飲食店にとって、多くのお金を使ってくれる点でアジア圏のお客様は魅力的な一方、インバウンド集客のノウハウがないことが問題です。また外国人とコミュニケーションが取れず、決済インフラも整っていないことは、飲食店側にとっては損害です。日本の飲食店独自の悩みが「ノーショウ(*No-show:予約されたお客様が来店しないこと)」と「人手不足」であることですね。日本人相手に商売をするのにも人数が足りないのに、外国人が増えたら言語対応の手間も増える為、その問題がさらに顕著に現れます。
そうした双方の悩みを認識し解決できる方法を考え、生まれたのが日本美食サービスです。提供するソリューションは、両者を結びつけることです。我々はお互いがお互いを探し合う仕組みをインターネット上に作り、訪日旅行検討者が自国の旅行サイトで、行きたいお店のコース予約を事前決済するサービスを開発しました。
中国の食市場・日本の食メディアと日本美食の関係
中国の食に関わる市場からヒントを得た点はあるのでしょうか
日本にはぐるなび、食べログ等の様なメディアが存在していますが主に国内の方向けのメディアであり、上記のような外国人が抱えるニーズに応えることができませんでした。日本では予約を「販売」していない(事前決済ではない)ので、ノーショウのような問題も多発するわけです。
中国においては食に関わる市場がドラスティックに変化し、食もコマース時代に突入しています。スマホで飲食店を探し、予約の際に決済する。こういった中国の市場を知っていたので、同じようなサービスを日本で行えば、双方の抱える問題を解決できると確信していました。
「日本美食」という社名にはどういった想いがあるのでしょうか。
「日本美食」は日本でも中国でも全く伝わる意味が同じです。このサービスは日本の飲食店の方向けと中国からの観光客向け両方の性質を持っている為、日本・中国の飲食店・消費者に通じる名前にしないといけないと考えていました。サービスの本質である、「日本のお店を探し、予約し、注文してほしい」という想いが通じる名前にしました。
決済分野の汎用性。日本美食は世界に繰り出します
サービスを継続していく中で事業内容に変化はありましたか
「TakeMe Pay」という新ブランドを2019年に立ち上げました。「TakeMe Pay」は、特に決済に関する問題を解決するために立ち上げました。外国人が自国で利用していたスマホ決済をQRコード一つスキャンするだけで、そのまま日本でも利用できるようにするサービスです。元々飲食店向けに2016年からサービスを提供していましたが、認知度も高まり、飲食店以外の業界でも利用されるようになりました。「QRコードで世界中のキャッシュレス決済を一つに」というサービスは今までにありませんでした。この3年間で利用できる店舗は5万店舗で「TakeMe Pay」に対応している決済ブランドは20種になり、2020年には1,000種の決済ブランドに対応予定です。
我々は決済会社ではなく、日本の素晴らしいお店と外国人を結ぶ会社なので、お店側から見てみると、私達がお客様をお店に送客する構造になっています。このことから我々の仕事は抽象化すると、人を店に連れていく(TakeMe)仕事だと言えます。この仕組みは日本だけでなく、海外でもニーズがあると思うので、長い目で見て多くの人に伝わるように、シンプルな意味の名称として「TakeMe Pay」としました。
https://www.takemepay.com/
将来の展望についてお聞かせください。
引き続き飲食以外の領域でも、ビジネスを展開します。インバウンド関係戦略立案・旅前PR・販売促進・販売代行運営・決済データから得られるデータを元にした来店促進と、コンサルティング、マーケティングを通じて、お店の売り上げを伸ばし、顧客体験を向上させることを価値として届けます。
将来的には海外にも展開します。このサービスは日本でしか使えないわけではないので、世界中どこの国でもこのサービスによるソリューションを活かすことが出来ます。弊社サービスがグローバルに広がることによって、どこで、どこの国の、誰が、いつ、何に、どれだけのお金を使ったのかがデータとして、世界中で蓄積されていきます。この膨大なデータを用いて世界中の観光をしている外国人が抱える問題を今後も継続して解決していきます。
日本美食株式会社ホームページ→https://www.japanfoodie.jp/
【編集後記】
事業には内容だけでなく、タイミングが事業のスケールにおいてとても大切な点であることを学びました。食と決済という一見関係が薄そうな領域のつながりに関して、インタビューを通じて点と点が繋がった感覚です。今後の海外での活躍も楽しみです。