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【帝国ホテル×インバウンド対策】訪日外国人観光客増加に向き合う考え
日本の迎賓館としての使命

 来年で創業130年になる帝国ホテル。今回は、ホテル事業統括部広報課長 池本知恵紀様に、帝国ホテルの現在・未来・過去に渡っての想いと、日本のグランドホテルとしての取り組みを伺いました。


               

日本人と外国人宿泊比率のバランスを重視

ラグビーワールドカップ期間中、外国人の宿泊者は増えましたか?

 そうですね、事前に報道で聞いていた通り、弊社に限らず日本に長期滞在で訪れていた外国人旅行者は多かったと実感しています。勿論、ご宿泊の目的がラグビーワールドカップの観戦や開催に伴うことだけかどうかはわかりませんが、ラグビーワールドカップが開催されていた9・10月は、前年同月と比べて外国人宿泊客の延べ人数は4100名程増えました(対前年同月10%増加)。ただ、ここ数年の傾向としては、年間の平均外国人宿泊比率は50%前後です。近年、訪日外国人数が伸びているものの、弊社では日本人と外国人のお客様の利用比率が半々という経営上安定した数値を保っていると考えます。外国人宿泊者ばかりに偏っていると、突然の不況景気や自然災害等が発生したときに影響が大きい可能性があります。実際に弊社でも、リーマンショックや東日本大震災の際に外国人宿泊比率が大きく落ち込みました。現在は、観光の好況化によって外国人宿泊比率が回復しましたが、長い目で見た際にいつ何が起こるかわからないですし、長く弊社を支えて下さる国内利用客の重要性も意識しておきたいです。

オンリーワンのユニークな部分を世界へ発信

減少した震災時の外国人宿泊比率は、どのように5割まで回復したのですか?

はい、1つは営業活動の努力です。弊社の弱みは、グローバルチェーンホテルでは無いため、海外での知名度が低いということです。日本人にとっては、泊まったことがなくても名前は知っているという方も含め認知度は高いのですが、外国の方にとってはグローバルチェーンホテルと比べ認知度が低いことが課題です。1970年に行われた大阪万博までの時代は、コンペティター(競合)が国内のホテルのみで少なく、その中でもハイクラスだったため、知名度に関わらず外国人宿泊者に選んでいただけました。しかし現在は、日本に沢山の有名グローバルチェーンホテルがあるので、認知度と安心感で外資系ホテルを選ぶ外国人宿泊者も多いのです。したがって、弊社のような日本の独立系ホテルは、海外への営業活動を強化していかなければなりません。そのためには、グローバルチェーンホテルには無い、オンリーワンな要素やユニークな部分を世界に発信したり、『THE LEADING HOTELS OF THE WORLD』という世界中の独立系ホテルのコンソーシアムに加盟したりしています。またホテル業界でショーケースと呼ばれる展示・商談会に参加して、海外の富裕層向けに旅行手配を行っているエージェントへの営業も行っています。

レストランやバンケットなど、グランドホテルの強みを活かして

国内での営業ではどんな取り組みをされていますか?

 旅行代理店への営業に加え、一般企業や各国の大使館にも営業します。MICEと呼ばれるグローバルミーティングや学会、研修などの会場としての受注にも注力しています。宿泊だけでなく、バンケットホールやレストランも兼ね備えたグランドホテルの強みを最大限に活かしています。

ビジュアルでの魅力発信

営業以外で間接的に行っていることはありますか?

 営業以外では、広報活動も重要です。例えば、近年ではInstagram、Facebookでの情報発信や、動画広告などを行なっております。動画や写真は言葉が無くてもビジュアルで魅力を伝えることが出来るので、海外の方にも共感してもらいやすい利点があります。その反応を見ることで、インテリアやデザイン、グルメなど地域別に刺さるコンテンツの違いがわかるので営業アプローチの改善にも繋がっています。

帝国ホテルと渋沢栄一の繋がり

帝国ホテルの初代会長は渋沢栄一ですよね

 はい、明治時代に帝国ホテルをつくるにあたり、奔走した人間の1人が渋沢栄一です。また、彼は弊社の初代会長でもあります。帝国ホテル開業式のときと、会長職を辞した後に従業員にかけた言葉の2つが弊社には残っておりまして、後者は現在も折に触れ従業員に伝えられている言葉です。

「色々の風俗習慣の、色々の国のお客を送迎することは、大変ご苦労なことである。骨の折れる仕事である。然乍ら君達が丁寧に能く尽くして呉れれば、世界中から集まり世界の隅々に帰って行く人達に日本を忘れずに帰らせ、一生日本をなつかしく思い出させることの出来る、国家の為にも非常に大切な仕事である。精進してやって下さいよ」
(帝国ホテル社史より)

 この言葉は、インバウンド増加の時代においても通用する、我々の役割・使命の本質を捉えた一言だと思います。訪れた方に、良い経験をして帰ってもらうことが宿泊業や観光業のやるべきことで、長い視点で見たときにとても重要な事だと考えております。

受け継がれてきた使命とともに、新たな挑戦をし続ける

今後の展望について教えてください

 帝国ホテルは来年で開業130周年になります。それにあたり『歴史にふさわしく 未来にふさわしく』というスローガンを掲げました。日本の迎賓館として誕生した帝国ホテルの「使命」とともに、未来への「挑戦」に対する想いを込めて決めたものです。今後も、お客様の期待に応えて、新しい価値を創造し続けていきたいと考えております。

帝国ホテル ホームページ

編集後記:
「使命」を持って「挑戦」し続ける企業の姿勢に格好良さを感じました。外資系ホテルチェーンや宿泊特化型ホテルとは違う独立系グランドホテルの武器を活かした営業活動が特徴的だと思いました。また、開業130周年おめでとうございます。(INBOUNDPLUS編集部 新國光太郎)

取材・写真:大島千佳
編集:新國光太郎

池本知恵紀様

株式会社帝国ホテル ホテル事業統括部 広報課長

INBOUND PLUS 編集部

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