キーマンインタビュー
【台湾・香港向けインバウンド対策】月間240万UUを誇る訪日メディア
『樂吃購(ラーチーゴー)!日本』次なる打ち手は
株式会社ジーリーメディアグループ 代表取締役社長 吉田皓一様
台湾・香港における訪日観光情報メディアとして 圧倒的な知名度を誇る「樂吃購(ラーチーゴー)!日本」 。同メディアを運営する株式会社ジーリーメディアグループの取組みについて、吉田皓一代表取締役に話を伺いました。
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台湾・香港だけでなく、中国大陸向けサービスもリリース
前回取材をさせていただいたのが2017年。2年前から変わったことは?
この2年間で、台湾・香港合わせて月間100万UU→240万UUまで増えました。さらに、今年8月に中国大陸向けサービスもリリースしました。今までは台湾・香港に向けて、繁体字のみの対応でした。台湾・香港を合わせて3000万人いる中で、月間訪日観光客数は、台湾45万人、香港20万人と安定はしているが、これから爆増することはありません。しかし、中国からはここ数年増えていて、すでに100万人を超えている。だから、簡体字への対応を決めました。
我々はこの7年間で2万本もの記事を既にストックとして持っており、どういった記事が人気があり、どういうニーズがあるのかを把握しています。この資産を活かさない手はありません。ただ繁体字に訳すだけではなく、サーバーを中国国内に設置して、グレートファイヤーウォール対策をしています。更に、中国と台湾では、「タクシー」や「地下鉄」といった身近な単語でも言い方が違うため、その修正は、中国人社員が一つ一つ目で見て確認して随時修正しています。繁体字版もすでに月間20万人UUとなり、中国最大の旅行サイト馬蜂窩(Mafengwo:マーファンウォー)とコラボしたり、中国版LINEと呼ばれる「Wechat(ウィーチャット / 微信)」でミニプログラムを使ったり、対応を進めています。
台湾の一等地の路面に、40坪のカフェ”MiCHi café”をフラッグシップ店舗として出店して3年になります。我々は、オンラインでユーザーとコミュニケーションは取っているが、リアルでこうした場をもっているからこそできる、ユーザーとのリアルなコミュニケーションを大切にしていきたい。他のメディアではできない、台湾を深堀するメディアだからこそできる路面店だと考えています。
外国人採用を積極的に進めているが、その背景を教えてください。
日本人が考える「日本のここが、素晴らしいでしょ」、は、押しつけに過ぎません。台湾・香港からの訪日観光客の事が分かっているのは、台湾・香港の人間だと思っているので、ユーザーを喜ばせる内容を創るのは台湾人や香港人社員に担ってもらい、その広告やマーケティング等ビジネスサイドを担うのは日本人と役割分担をしている。だからこそ、お互いの意見が対立することもあるが、それぞれのお客様を思っての健全な対立だと思っています。
2012年ラーチーゴー日本を始めた当時、まだYouTuberやインスタグラマーがいない状況でfacebookで顔出し、名前出しで、中国語で日本を紹介する日本人がいなかったからこそ、認知され、現在facebook75万人フォロワーとなりました。
facebookで、僕がどのような人間で、どんな事業をしているかというのを発信し続けていたので、求人募集しています、としたら応募が殺到しました。
日本のソフトを世界に向けて売るのに大事なことは
日本人が思う、外国人向けにしないことですね。中華系の方々が求めているのは、「侍」や「相撲」、ではない。彼らは、日本人が食べているもの、興味があることに興味があり、その国の文化や伝統に裏打ちされたもの、日本の中で脈々と受け継がれたものに価値を感じる。台湾人はリピーターが多い為、東京・京都・大阪のゴールデンルートではなく、地方に行きます。だから、地方に行くほど、台湾人観光客が多い。東北に行くと、訪日観光客の中で台湾人が50%以上。京都は外国人が多すぎて嫌だ、と言います(笑)。よりローカルな風景を求めていると思いますね。
今インバウンドにおける注目している場所はどこですか?
四国です。特に台北と高松を結ぶ直行便は、週2→3→7本とだんだん増えて、ついに毎日運航になりました。これは、県知事のトップ外交の影響が大きい。今年は瀬戸内芸術祭もあり、弊社で扱っている着地型ツアーも、浴衣体験や和服体験等が人気ですね。後は東北、特に青森でしょうか。台湾人の中での青森のイメージは、高級りんごの産地なので、りんごを求めて青森に来られます。岩手は、いわて花巻空港からタイガーエア台湾、仙台は、ピーチ、エバー航空、タイガーエア台湾が飛んでいる。他には、沖縄ですね。特にブライダルが人気で月間10~20組の利用があります。台湾には沖縄のようなビーチが少ない為、ウェディングの前撮りプラン等も人気です。
後は、酒蔵ツアーが人気です。実は、自社で日本酒を奈良で作りました。酒蔵に依頼して、樽ごと買うから、この米で、この麹と酵母で3000本作ってくれ、と。フルーティーな味わいの方が台湾の方が好きなので、作って台湾に輸出しました。今まで台湾では飲まれなかったが、最近日本酒が人気になってきた。理由は、質の良いものが輸入されなかったからと、良いものがあったとしてもワインセラーで保存される等保存状態が悪かったことが挙げられます。さらには、台湾における日本酒の関税が下がったことも大きいですね。日本酒をきっかけに奈良に来てもらう方が増えればいいなと思っています。
台湾向け日本酒「これあらた」の完成記者発表の様子
今後力を入れていきたいところはどこか。
富裕層マーケティングです。台湾人にも、LCCで来る人、ビジネスクラスで来る人、プライベートジェットで来る人等色々います。我々の得意分野は、その中で言うとLCCで来る人。割引クーポンを使い、「食べ放題」や、「賢い買い物法」等が書かれた記事のアクセスが良い。そうした客層からのニーズは取りこめているが、ビジネスクラスやプライベートジェットを使って来日する客層は嗜好が違う為、課題があります。今はMiCHi caféで、日本酒セミナーをやっています。参加費は、1万2000円と高いがそれでも参加したいという方が参加してくれていて、そこから日本へ来てくれる方もいます。今後は、対応するニーズの幅を増やしていきたいですね。