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欧米で絶大な人気を誇る「葛飾北斎」。
その生誕の地に開館した「すみだ北斎美術館」のインバウンド状況。

  「この1000年でもっとも偉大な業績を残した世界の100人」に唯一日本人として選ばれるほど、世界的に有名な画家「葛飾北斎」。その北斎が人生のほとんどを過ごした墨田区に2016年に開館した「すみだ北斎美術館」。当館を訪れる外国人の特徴など、インバウンド状況について、広報・プロモーショングループの小川めぐみさんにお話を伺った。

美術業界以外のフランス人の中でも、「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」はとても認知度が高い。

貴館の外国人来館者の特徴は?

 欧米のお客様が多いです。特にフランス人のお客様の割合が高いです。その理由としては、19世紀中頃の万国博覧会をきっかけに、ヨーロッパで日本趣味のことを指す「ジャポニズム」という大きなムーブメントが起きました。そのムーブメントの中心地がフランスでした。そして、印象派のルノアールなどに大きな影響を与えた「ジャポニズム」の代表的な存在が葛飾北斎だったといわれています。北斎の大胆な構図、森羅万象、さまざまな対象物を描いていることが、決まった構図、静物画の対象も固定されていた当時のフランスの芸術界には新鮮だったといわれています。今でもフランスの美術大学などには、「北斎漫画」が置かれていて、現代の美術生にも人気のようです。また、美術業界以外のフランス人の中でも、「冨嶽三十六景」シリーズの「神奈川沖浪裏」はとても認知度が高く、「日本=神奈川沖浪裏」というイメージを持たれている方も多いようです。

「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」すみだ北斎美術館蔵

世界的な建築家の妹島和世氏が設計した建物を目的に訪れる外国人観光客も多い。

その他の外国人来館者の特徴は?

 当館は、世界的に有名な建築家の妹島和世さんが設計をされていて、、建物の見学を目的で訪れる外国人の方も多いです。昨年、「妹島和世 SANAA×北斎」展を開催するなど、北斎と妹島さんをコラボレーションした当館ならではの展示も企画いたしました。建築を目的に来られる方は、欧米人の方を中心に、台湾などの東アジアの学生さんも多いです。

 建築家のフランク・ロイド・ライトは浮世絵の熱心な収集家としても知られていて、一説によると、彼の代表作である「落水荘」は北斎の「諸国瀧廻り」シリーズの「木曾海道小野ノ瀑布」に影響を受けたといわれています。北斎の浮世絵は構図が綿密に計算されていたり、空間性が高いので、建築をされている方は浮世絵に興味を持たれるのかもしれません。

妹島和世氏設計の「すみだ北斎美術館」外観

言語がわからなくても視覚的に楽しめるデジタルコンテンツ。自分のペースで観ることができるUI設計。

常設展のデジタルコンテンツが充実していますが、コンセプトは?

 常設展は、「北斎の生涯を知ってもらうこと」「北斎と墨田の関わりを学んでもらうこと」をコンセプトとしています。常設展ゾーンを1周して観てまわると北斎の一生が理解できる設計になっております。デジタルコンテンツに関しては、英語、繁体字、簡体字、韓国語と多言語で対応をしています。ユーザビリティに配慮して、観る方のペースで楽しめるUIになっており、言語がわからなくても視覚的に楽しめるようにゲーム要素を取り入れたコンテンツなども揃っていますので、外国人の方やお子様からお年を召した方まで、楽しんで頂いております。

常設展示室
常設展にあるタッチパネルで楽しめるデジタルコンテンツ。

翻訳は、美術への造詣が深い在日外国人の方に依頼しているが、表現はなるべく一般的な言葉を使うように心がけている。

コンテンツなどの翻訳で配慮されていることは?

 翻訳は、美術への造詣が深い日本在住の外国人の方へ依頼することで、細かい表現などが言語が変わることで失われてしまうことを回避しています。ただ、専門的な言葉を使ってしまうと観る方にとってわかりづらいものになってしまいますので、なるべく一般的な言葉に翻訳する配慮もしております。翻訳だけではなく、全体的に、観る方にとってわかりやすいものを提供することを心がけていまして、「錦絵とは?」のような、浮世絵初心者の方が観ても理解を深めることができるような説明コンテンツなどもご用意しております。

広報・プロモーショングループの小川様

ミュージアムショップの商品の選定はどうしていますか?

 当館の目的の一つが「地域活性化」ですので、墨田区の業者様やアーティストの方の北斎関連商品を取り扱ったり、商品開発を依頼したりすることもございます。外国人観光客の方には、マグネットやTシャツ、グリーティングカード、北斎に関する英訳書籍などが人気ですね。国籍による購買の傾向は特にないように思われます。

1階エントランスに設置されたミュージアムショップ
美術館開館時館内であれば、各種鑑賞チケットをお持ちでない方も利用できる。

次期パスポートの基本デザインに北斎の「冨嶽三十六景」が採用決定!これから北斎はさらに世界的に注目を浴びる!

今後の展望についてお聞かせください

 海外の方へのPRとして、フランス中心に「Japan Expo」や「アングレーム国際漫画祭」にブースを出展してPRを行いました。「Japan Expo」は、想定していたよりフランスの若年層の方から多く興味を持って頂けたというのが発見でした。これからも、同様のイベントに出展してPRを行っていく予定です。また、海外レップさんに情報を提供して、現地で情報発信して頂く流れも強化していく予定です。

 これから北斎はさらに世界的に注目を浴びることになると思います。次期パスポートの基本デザインに北斎の「冨嶽三十六景」が採用決定されましたし、2020年には東京五輪もあります。そのような状況で、当館はまだ開館して2年余りで、まだまだ認知度が高くはないので、魅力的な企画展やイベントを実施して、海外からのお客様、また地元のお客様にも来館していただけるための努力が必要だと考えています。

インバウンドプラス編集部より

 北斎は日本人の私たちが思っている以上に、海外人気がとても高い。北斎と墨田のつながりや、「北斎漫画」など、今回の取材前まで知らなかったことが多くあった。日本人の私たちが改めて「葛飾北斎」について学ぶことが必要だと思う。常設展は、コンテンツが非常に作り込まれていて、北斎の一生を知るにはとてもわかりやすいので、ぜひ一度、ご覧いただきたい。また、現在は、「北斎の橋 すみだの橋」という企画展が行われているので、こちらも是非!

すみだ北斎美術館HP:http://hokusai-museum.jp/modules/Exhibition/

INBOUND PLUS 編集部

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