近年、日本を訪れる外国人旅行者数は増加の一途を辿っており、観光産業は日本経済において重要な役割を担っています。その中でも、飲食関連の消費は大きな割合を占めており、地域経済への波及効果も期待されています。
本記事では、インバウンドの飲食関連消費額拡大に向けて、現状の課題と今後の展望について紹介します。
インバウンドの飲食費は増加傾向に
観光庁のインバウンド消費動向調査によりますと、費目別の訪日外国人消費額において「飲食費」は1兆7,460億円で全体の消費額のうち約21.5％となっています。消費額全体の増加とともに飲食費も増加しており、コロナ禍を除いて右肩上がりの傾向にあります。
これは、日本の食文化への関心の高まりや多様な食体験へのニーズの高まりを反映していると言えるでしょう。特に、地方の食材や郷土料理への注目が集まっており、食を通じた地域活性化への期待も高まっています。
近年では、単に食事をするだけでなく、食文化体験を重視する旅行者が増えており、例えば、寿司作り体験、日本酒の酒蔵見学、農家レストランでの食事などが人気を集めています。
政府の取り組み
政府は、農林水産物・食品の輸出拡大に向けた閣僚会議を開催し、「海外から稼ぐ力」の強化について議論を行いました。その中で、インバウンドによる飲食関連消費の拡大に向けた取り組みを強化する方針が示されました。具体的には、地域一体型ガストロノミーツーリズムの推進、農泊インバウンドの受入促進、SAVOR JAPAN（農泊 食文化海外発信地域）の展開、GI（地理的表示）の活用によるインバウンド市場の開拓・拡大、インバウンド需要と消費実態の分析などの事業が進められています。
今後の新たな取り組みとしては、インバウンド客の飲食関連消費や食品産業の海外展開を新たな政策の柱として位置付け、施策の充実と効果検証のための指標を検討していくとしています。また、林官房長官は会議にて「『海外から稼ぐ力』を強めるには輸出拡大の加速化だけでなく、食品産業の海外展開やインバウンドによる食関連消費の拡大の取り組みを強化し、双方の施策の相乗効果を高めることが重要だ」と述べています。
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中国人観光客の消費動向
インバウンド市場において大きな割合を占める中国人観光客の消費動向も注目すべき点です。2024年のデータを見ると、中国人観光客の消費単価はコロナ禍前と比べて下振れしており、特に買物代は低い水準にあります。しかし、これは消費意欲の低下というよりも消費の中心が「モノ」から「コト」へと変化している可能性を示唆しています。
中国国内の所得水準の上昇や産業の発展により、以前よりも国内で様々な商品が手に入るようになったため旅行先ではより体験型の消費、例えば飲食やサービスへの支出が増加していると考えられます。この傾向は、今後のインバウンド戦略において飲食分野の更なる可能性を示唆するものと言えるでしょう。
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今後の展望
インバウンドの飲食関連消費額は、政府の取り組みや観光客のニーズの変化などを背景に今後も拡大していくことが予想されます。特に、地方の食文化を発掘し、地域独自の魅力を打ち出すことで更なる需要の喚起が期待できます。そのためには、地域と連携したガストロノミーツーリズムの推進や食文化体験コンテンツの充実などが重要となるでしょう。
また、データ分析に基づいた戦略立案も不可欠です。インバウンド客の消費動向やニーズを詳細に分析し、効果的な施策を講じることで飲食関連消費額の最大化を図ることが求められます。
インバウンドの飲食関連消費額は増加傾向にあり、政府もその拡大に向けた取り組みを強化しています。今後は、地域との連携やデータ分析に基づく戦略立案が重要となり、更なる成長が期待されます。特に、中国人観光客をはじめとする外国人観光客の消費動向の変化を捉え、食を通じた体験型旅行へのニーズに応えることでインバウンド市場全体の活性化に貢献していくことが重要です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
